【創作企画】序章 あの頃の話【UP A Mystery】

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UP A Mystery【完結】 @C_UP_A_Mystery

小さく、時計の音が聞こえる。

2021-12-23 21:05:43
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光の届かないこの暗闇で、いくつの罵倒を聞いたのかわからない。 何度暴力を振るわれたのか覚えていない。 息苦しくて、どこもかしこも痛くて、それだけを覚えている。

2021-12-23 21:06:40
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「全部お前のせいなんだからね。 全部、お前が悪いんだからね」

2021-12-23 21:07:35
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「手を合わせても無駄だよ。 祈ったって何も変わらないよ」

2021-12-23 21:08:23
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その声は、とても明るくて 可愛らしい少女の声だった。

2021-12-23 21:09:28
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「───それじゃ、ゲームをしようか」

2021-12-23 21:10:40
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パーティも終わりに差し掛かる頃、ステルプレーナ・チエーロはハッと顔上げた。

2021-12-23 21:11:52
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眠ってしまっていたのか、と疑問に思い周りをぐるりと見渡すと、デザートを頬張る幼い友人の姿が目に映った。

2021-12-23 21:13:19
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ふと「大丈夫か?」と上から降ってきた声を聞いて、そちらに顔を向けると、心配そうにこちらを見つめてくる相棒がいる。

2021-12-23 21:14:03
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「大丈夫です」と小さく返して、ステルプレーナは目線をずらし、真っ白なパーティ会場の壁を見つめた。

2021-12-23 21:15:13
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あの館から脱出して半年。 彼のそばに居るうちに、いくつか思い出したことがある。 首謀者であるエプルのこと、自分のこと、今会場にいる者たちが閉じ込められたあの事件は、『2回目』の出来事であったこと。

2021-12-23 21:16:21
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そして、『1回目』は────。

2021-12-23 21:16:44
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ステルプレーナは小さく息を吸うと、会場の隅まで届くように、少し大きな声で呼びかけた。

2021-12-23 21:17:29
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「皆さん、ちょっとこちらへ。 大事なお話があります」

2021-12-23 21:17:56
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その声に反応した何人かが、徐々に近づいてくる。 長くなるから、と言うと律儀に人数分椅子をステルプレーナの周りに並べていく探偵もいた。 傍らにいる相棒が小さく名前を呼んできたので、「大丈夫」と頷くとステルプレーナは全員が座るのを確認してから口を開いた。

2021-12-23 21:19:03
UP A Mystery【完結】 @C_UP_A_Mystery

「…あの館で起きた事件の、真実を。 全てでは無いですが、お話します」

2021-12-23 21:19:51
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その言葉に、何人かが反応して会場がざわつく。 1番前に座っていたジルは身動ぎをすると、神妙な面持ちのままの少女に問いかける。

2021-12-23 21:20:23
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「それは、黒幕や君が言っていた『1回目』のこと?」

2021-12-23 21:21:11