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Apple_Mystery11
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また次の日。 やはりアイリーンは熱を出してしまったようで、医務室で彼女を見ていたエトガルが、朝食の時間の少し前に集まっていた皆にそう報告してきた。
2021-05-30 21:02:59![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
朝食は食べられそうにないから、ヨーグルトかなにか病人の腹に入りそうなものを、と彼がデアダームに申し入れる。
2021-05-30 21:03:51![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
デアダームはにっこりと笑って、 「では、リンゴでもお持ちしましょうか」 とひとつの赤い林檎を差し出してきた。
2021-05-30 21:04:51![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
片手でギリギリ持てるくらいの大きさのそれは、厨房の窓から差し込む明かりで微かに光る。 エトガルは頷いて、林檎をまるまるひとつ受け取ると、果物ナイフを持ってそのまま医務室へと戻って行った。
2021-05-30 21:05:10![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
せっかちですねぇ、と笑うデアダームを眺めながらチェイスが料理を乗せたワゴンを数台食堂へ運び込んでくる。厨房側に縦向きにそれを全て並べ終わると、デアダームは集まって来ていた探偵や少女たちに向かって手を叩いた。
2021-05-30 21:06:13![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「さ、朝食にいたしましょう。お好きなものをお好きなだけお召し上がりください」 初日となんら変わりのない彼の様子に、不気味に思った者もいたことだろう。
2021-05-30 21:06:45![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
朝食後は自由に…とはいかなかった。 一昨日や昨日のこともあって、1人にならなければ良い、から少女たちは必ず探偵と行動すること、と義務付けられた。
2021-05-30 21:08:28![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
昨日1人で逃げ回っていたレティシアやそこらへんを探索したいグレース、遊びたい盛りで落ち着かないフランチェスカなど、まぁまぁ不満に思う少女はいたが、それでも起こったことを思えば当然だろうとペアの探偵に叱られていた。
2021-05-30 21:08:43![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
朝食の後、そんな話し合いをしている中でいつも通り集まる口実としてお茶会が始まった。 途中、探偵たちの話し合いにレティシアが呼び出されて、昨日起きたことについての事情聴取が始まる。
2021-05-30 21:10:29![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「だから、昨日は逃げ回ってる途中で突然鏡から出られなくなっただけなんだってば」 「それ以外は?なにか見たとか、なにか音を聞いたとか、不思議なことはあったか?」 「ないよ。ていうか、ルーカスが散々追いかけ回してくるから、ボク何処にも行けなかったんだけど」
2021-05-30 21:11:19![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
不貞腐れたように呟くレティシアの顔を見ながら、ふむ…と考え込む一同。 退屈そうに足を少しぶらつかせて、ふとレティシアは「あ」と何かを思い出したようにルーカスへと顔を向けた。
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「そういえば、追いかけ回されてる途中で影を見たな」 「影?」 「そう、多分ここにいる奴らの誰かの影。ちょうどボクと同じような髪型をしてた」 「そりゃー、嬢ちゃんたちも途中で席を立ったりしてたから当たり前だろ」 「違う、地下の方に向かってったのを見たんだ」
2021-05-30 21:13:03![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
小さく首を振ってそう告げるレティシアに、探偵たちは眉を寄せた。誰の影だろうか。それとも何か別のものをそう見たのか。
2021-05-30 21:14:02![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
これだけでは何も分からない。アイリーンにも話を聞きたいところだが、体調を崩している彼女に長話は酷だろうとディルクが気を遣うように言ったのもあって、なかなか話は進展せず。
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結局、することもなくなった探偵たちはお茶会に混ざることにした。 最初から自然と少女たちに混ざっていたルドヴィオや相棒に連れられて座らされているジルやクラウス、ハリー、エリアスは置いといて。
2021-05-30 21:15:07![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「今日のお菓子はスコーンよ」 エリザベスは微笑んで席に座るように探偵たちに促した。 朝食の時は一定間隔で配置されている椅子が、話しやすいようにかかなりギッチリ置かれていてテーブルの半分ほどの面積しか使っていない。
2021-05-30 21:15:56![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
テーブルに面していない椅子もある中で、強制的にカップやらフォークやらを持たされ探偵たちは苦笑いを零す。 あんなことがあった後だというのに、元気なものだ。いや、あんなことがあったからこそ、明るく振舞おうという彼女らの気遣いなのかもしれないが。
2021-05-30 21:17:03![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「紅茶は何がいいかしら。アッサム?スコーンだからミルクティーだけれど、ディンブラもいいわね。クロテッドクリームとイチゴジャムももらったから、みんなで食べましょう?」
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嬉しそうに笑いながら、エリザベスはそばに居るルドヴィオにスコーンを差し出して食べさせていた。 どちらが子供なのかもはやわからないとため息をつくルーカス。
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ペトラとキーラが各々テーブルに並べられたスコーンの中で好きな物を取りつつ、ペアの探偵に手渡しをする。 お菓子の好きなローズはそれをニコニコと眺めながら、時折厨房で片付けをしつつお菓子作りをしている相棒の元へ行くなど忙しそうだ。
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またNo.5とは逆に、探偵の方が少女にスコーンを与えているペアもいるが… マシューはミクニリィに与えているというか、手ごとくわえられているというか。
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賑やかな雰囲気になりつつある中で、エリザベスはふと思いついたように、朝食の片付けを終えて食堂にでてきたデアダームに人差し指を振った。
2021-05-30 21:23:26