- rouillewrite
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回収された2人の遺体の行方はわからず、墓を立てたという話も聞かない。 別れを告げる間もなく連れていかれてしまった2人へのせめてもの手向けにと、礼拝堂に数人の探偵や少女たちで墓を立てたのが2日前。 庭師のジャックに手伝ってもらって、その墓前に花を添えた。
2022-03-10 21:04:40心を落ち着けるのに3日では足りなかった。 あの日の翌日には四六時中泣いたまま部屋から出てこなかった者もいた。 それでも、探偵たちはこれ以上の犠牲を出さないようにと、心を押し殺して館の主のことを探っている。
2022-03-10 21:06:49この3日間、グリムは特に放送も入れず、何もしてこなかった。 人を殺すという強行に走ったのだから、次々と人を殺して「情報提供」とやらを行うと思ったのだが。
2022-03-10 21:08:16ならば都合がいい、と情報収集をしたり少しずつ前向きになろうとしている者たちがいる中で…… たった1人───部屋から一歩も出てこなくなった少女がいた。
2022-03-10 21:09:11朝食の時間が終わってしまう、とイーライは慌てて飛び起きた。 いつもは相棒の少女が早めに起こしてくれるので渋々起きるのだが、この3日間はそうはいかなかった。 程度に身支度をして、まだベッドの上で蹲る少女を見つめる。
2022-03-10 21:12:06リネットと仲が良かった彼女。 館の主にハッキリと「依頼のための情報提供」だと言われてしまえば、自分のせいで死んだと思うのも当然だった。 仲良い友人が、自分のせいで死んでしまった。 その事実は、齢7の彼女には重すぎたのだろう。
2022-03-10 21:17:12イーライ自身もどう声をかけていいのかわからず、とりあえず起き抜けに声は掛けていく、というのを繰り返している。
2022-03-10 21:17:44昨日は出てこないエリーゼを心配して、少女たちが訪ねて来たりもした。 しかし、彼女はずっとベッドに横たわったり、部屋の椅子に腰掛けて何もしなかったりと、生気のない目をしていた。
2022-03-10 21:19:24どうしたものか…と、今日もまた朝食を部屋に持ち帰ろうと考えているイーライの耳に、コンコンコンと扉をノックする音が入る。
2022-03-10 21:20:26黒と濃いピンクの髪を少し揺らして、ウロウロと目を泳がせながら、1冊のノートを抱えてライクムが立っていた。 オドオドしたような仕草は相変わらずだが、どこか勇気を絞り出してきたような雰囲気に、イーライは首を傾げる。
2022-03-10 21:23:55「何か用か?ていうか飯の時間じゃ、」 「…あっ、こ、ここれ!これ………エリーゼ、に……あっ、あっ、迷惑だったら持って帰るから…!」 「…日記?」
2022-03-10 21:25:46視線を左見右見して、ようやくライクムは持っていたノートを差し出した。 真新しめのそれは、特別なにかが施されたわけでもない普通のノートだった。表には「交換日記」と書かれていて、半月ほど前からの日付で始まっている。
2022-03-10 21:27:37「交換日記……リネットと、ずっと、してて……も、もう返ってくること、ないんだろうなぁって…読み返してたら…」 「エリーゼ、」
2022-03-10 21:29:04リネット、という単語を聞いて毛布を被ったままのエリーゼがピクリと反応した。 この3日間、傷口に触れないようにと、誰もその名を彼女の前で口にしなかったというのに。
2022-03-10 21:30:41交換日記というのだから、リネットとライクムのお互いのことくらいしか書いていないだろう。 何故エリーゼに、と疑問を持ちつつイーライは彼女の名前を呼んだ。
2022-03-10 21:31:37…エリーゼはゆっくりと、起き上がる。 あまり眠れていないのか目の下に少しクマを作っていて、美しかった碧眼は輝きを失っている。 毛布を被ったままその先を引きずり、眉をハの字にして、おずおずと日記を差し出してくるライクムを見つめた。
2022-03-10 21:32:34彼だって、日記を交換し合うほどの仲だった少女が死んで、辛いだろうに。自分に何を見せようと言うのか。 エリーゼはそっと、その日記を開いた。彼が言うには、見せたいページは最後の方だそうだ。
2022-03-10 21:33:51