デストラクティヴ・コード ＃4

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アヴァリスは右手で銃身を掴み、左手でハイウェイマンの肩を掴んだ。その身を仰け反らせた。刃を引き抜こうというのか。確かに心臓は貫き損ねた。だが、ここまでだ。ハイウェイマンはみなぎる血中カラテ粒子を銃に流し込んだ。装填された弾薬にカラテを込める。カラテミサイルの応用である！　21

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「死ね！」ハイウェイマンは引き金を引いた。刺突し、繋ぎ止めた獲物の体内に爆裂弾を撃ち込み、爆発四散させるヒサツ・ワザ！クルシファイア・ツキだ！KA-DOOOOM！カラテ粒子が青白い光の銀河めいて、アヴァリスの背後に飛び散った。バラバラに散った粒子は周囲の建物を崩壊させた。　22

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「！」ハイウェイマンは目を見開いた。アヴァリスはハイウェイマンにメンポを接触させ、囁いた。「喰らい損ねちまったぜェ」血に飢えた彼の言葉は荒くなっていた。ハイウェイマンのニューロンをニンジャアドレナリンがどよもし、時間が泥めいた。アヴァリスは抜いたのではない。より深く刺させた。23

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アヴァリスの身体を貫通し、背中側から飛び出した銃口から、炸裂カラテ弾丸が、その背後へ虚しく発射された。体内で暴発させる目論見は阻まれた。そしてアヴァリスは……「痛え……痛えだろうが……クソが……！」ハイウェイマンの肩を、頭を掴んでいた！「ヌウウーッ！」　24

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このまま絞め殺す気か！ハイウェイマンは唸った。だが爆発四散させる事は出来ずとも、優勢に変わりなし！ハイウェイマンは貫通した銃身を捻じり、刳り込み、その傷を押し拡げにかかった。破壊された傷口からアヴァリスの血が溢れ出した。「終わりだ！滅びるがいい！」「チクショウ……！」　25

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「イイイイヤアアアーッ！」「ノロイ……ガ……」「イイイイイイヤアアアーッ！」抉る！ズタズタに！「クソッ……」アヴァリスは痙攣した。異質なスペクトルの光が彼の巨体に輪郭をひときわ強く灯し、そして消えた。「オマエ……ノ……ジツ……ホシカッタ」アヴァリスの身体が、ちぎれた。　26

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黒変した肉体が分断されて、ハイウェイマンの足元に落下した。ハイウェイマンはザンシンした。滅びたのか。何百回と繰り返した機械的な動作で、彼は銃弾を込め直した。ここまでハイウェイマンを追い詰めた者は、実際、この包囲戦の指揮官であり彼の友……唯一人。シビアな戦いだった。　27

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足元にわだかまる黒い塊のひとつを、ハイウェイマンは蹴り壊した。その異様な手応えが瞬時に彼の警戒を最大まで高めた。BLAMN！彼は別の堆積物を撃った。堆積物は跳ね、銃弾を躱した。それは小さな黒い山羊だった。「……！」BLAMN！次は狙いを過たなかった。「ミイイ！」黒山羊は撃ち抜かれた。　28

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次にハイウェイマンは転がるアヴァリスの下半身に銃を向けた。そこにはもはやアヴァリスの死体はなく、数匹の黒山羊が生じつつあった。BLAM！BLAMN！ハイウェイマンは銃撃した。黒山羊は逃げ散った。「これは！クロヤギ・ニンジャ……ヴァインそのものだ！」ハイウェイマンは指揮官に質した。　29

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「チガウ」かわりに黒山羊達が答えた。「オレハ、アヴァリスだ」黒山羊達は駆け集まり、融合し、泡立ちながら、闇色の肉体を形成してゆく。「ノロイめ。これが、やっとだ。食らう余裕は、とても……」「AAAARGH！」ハイウェイマンは叫び声をあげ、発砲した。ナムサン。当たるはずもない。　30

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アヴァリスの沸騰するシルエットは、ハイウェイマンの苦し紛れの銃撃を躱し、銃を掴み、逸らしていた。「これはクロヤギ・ブンシンのジツだ」アヴァリスは言った。「このジツはいい。暖かくてな。そして、そうだ。これはヴァインからもらったジツだ。そう考えれば、俺とヴァインの絆なんだよ」　31

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異色の光の波がアヴァリスの輪郭を浮かび上がらせ、苛んだ。彼の肉体はすでにアヴァリスの姿を取り戻していたが、身体のあちこちに、接合部めいた、閉じかかった亀裂が蠢き、惨憺たるありさまの血潮を滴らせていた。「お前はよくやった」アヴァリスはハイウェイマンを押さえつけ、組み伏せた。　32

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「欲しかった。お前のカラテミサイルのジツは素晴らしかった。もう少しだった……」もがくハイウェイマンにのしかかり、そのまま、首を締めた。ボギン。骨が砕けた。「サヨナラ！」ハイウェイマンは爆発四散した。アヴァリスは咳き込み、よろめきながら立ち上がった。ノイズめいてノロイの光が走る。33

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アヴァリスは「不如帰」のミンチョ文字を明滅させる看板に手をつき、呼吸を整えようとしながら、空を見上げた。黄金立方体は、異常な色彩を狂わせる空に浮かび、冷たく自転していた。アヴァリスは目を細めて笑った。　34

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◆◆◆ 35

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ユメリンゴ交差点を見下ろすビルの屋上、アグラ姿勢のブラックティアーズは俯いていた顔を上げ、宙に浮かぶ水晶珠の光の揺らぎを見た。視認できる距離にはアブストラクト・オリガミの一つがある。既にオリガミの確認は終えていた。正体は不明なれど、カリュドーンに生じたエラーの原因ではない。36

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「どうした」ブラックティアーズは呟いた。彼の視線の先には、屋上に上がってきたアヴァリスの姿があった。長躯を揺すり、彼のもとに近づいてくる。「見ての通り……イクサをした帰りだ」アヴァリスは荒い息を吐きながら答えた。ブラックティアーズは短く頷いた。「そうか。程々にしておくがいい」　37

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「デスロール……グリーンウィスプ……とか何とか」アヴァリスはニンジャの名を挙げた。「……それから、ハイウェイマン。儀式どうこうの話をしていた奴もいる。明確に襲われた」「異な事だ」ブラックティアーズは水晶から眼前に投射された超自然ホロキーボードをタイピングする。セトへの報告だ。38

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「カリュドーンを妨害する者の存在を、我が主は懸念されている。その者の放った暗殺者やも知れんな」ブラックティアーズはタイピングしながら答えた。「狩人が獣以外の者に落とされたとなれば、補う手続きが煩雑化し、この私の骨折りとなる。ホッと胸を撫で下ろす思いだ」「そうか。良かったな」　39

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「あるいは、ネオサイタマのニンジャ集団の恨みを買う事はなかったか。お前が相当数のニンジャに挑んでいた事はわかっている。老婆心じみて忠告しておくが、狩人のつとめを果たす事に支障が出れば、それは、ひいてはお前の主の不利益ともなる」「奴は俺の主ではない」アヴァリスは瞑想的に言った。　40

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「だが……まあいい」息を吐いた。ブラックティアーズはアヴァリスと目を合わせず、座ったまま神秘的タイピングを継続する。アヴァリスは呟いた。「……狩人同士が争うなど、もってのほかだろうな」「その通りだ。わきまえるがよい」「……出直すとする」アヴァリスは背を向けた。　41

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彼は、一歩離れる……と見せて振り返り、チョップを振り下ろした！ブラックティアーズをめがけ！「イイイヤアアアーッ！」「！」ブラックティアーズは目を見開く！水晶が光り、ハニカム構造の障壁が生じた。アヴァリスのチョップは障壁を突き破った。そのままブラックティアーズの肩を、割った！　42

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【続く】