- rouillewrite
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廊下の壁に仄かに明かりがついているとはいえ、早朝4時半ではまだまだ暗い。 少し冷えるな、と両手で肩を擦りながら中庭回廊を通る。
2022-03-24 21:04:12トントンと自分の歩く足音だけが響く中で、夜明けを迎えようとしているバラが光って見えた。 扉を開けて反対側に出る。 目的地はない。
2022-03-24 21:05:12……遊戯場から食堂に呼び出されたあと、メノンたちから事の顛末を聞かされた。 この館で起きていることが1年前に起きた少女連続殺人事件の見立てであり、自分となんらかの関連があること。
2022-03-24 21:05:54もしかしたら、この館の主である少女の父親を犯人に仕立て上げた探偵と共にいた少女ではないのか、という推測も。
2022-03-24 21:07:09死人が出ている状況下、彼らは焦らなくていいと諭してくれた。 自分たちも死ぬかもしれないのに、優しい人たちばかりで、余計に責任感に押し潰されそうになる。
2022-03-24 21:09:23頭を抱えて、一晩寝ずに悩んでも何も思い出せず、ベッドの上に居られなくなって飛び出してきた。 頭が痛くて、どうしようも無くなって。
2022-03-24 21:09:44それに、夜は嫌いだ。 余計なことを考えてしまう。 キラキラ光る星空も、弱い自分みたいで大嫌いだった。
2022-03-24 21:10:35…いつの間にか、荘厳な扉の前に来ていた。 長い長い直線の廊下を進んだ先にあるのは…離れにある礼拝堂だった。 少女ひとりが開けるには少し手間のかかる重さのそれを、片扉だけ少し開けエリーゼは中を覗く。
2022-03-24 21:11:22長い髪を揺らして、光る赤い瞳を向けてきたのはマリアだった。 礼拝堂の真ん中に跪き、目の前にある大きな銀色の十字架を前に両手を組んでいる。
2022-03-24 21:15:29エリーゼが少し息を吐くようにそう言うと、彼女は苦笑いをこぼして「そんなことないですよ」と返した。 隣に並んで自分を見つめてきたエリーゼを見遣り、マリアは再び祈りを捧げる。
2022-03-24 21:16:29身体が弱いらしいと聞いていたので、ほとんど館内で遭遇せず、話したのはこれが2回目である。 エリーゼも倣うように、銀色の十字架を見つめた。
2022-03-24 21:17:33向こう側にあるステンドグラスが、夜明けを知らせる光を浴びて、手前の床を照らしている。 なんの模様なのかエリーゼはいまいちよく分からないが、信仰している人々にとっては有難いものなのだろう。
2022-03-24 21:18:09「…こんなこと聞くのは、野暮かもしれませんけど」 「はい?」 「何故、毎日毎日お祈りを?…すみません。気を悪くしたのであれば、何も答えなくて構わないので」
2022-03-24 21:19:34そして、合わせていた両手を強く握ると、十字架の向こうのステンドグラスを見つめた。 …いや、夜明けの光を、見ていたのだろうか。 pic.twitter.com/jpZ264mK8a
2022-03-24 21:20:50「────ひとつ、祈りとは、呼吸です。私たちは祈りを通じて父なる神と対話をし、交流しています。 呼吸をしないわけにはいかないでしょう?それと同じこと」
2022-03-24 21:22:27