『ミート・ザ・ビートルズ』論争についての個人的な覚書

小林信彦がビートルズ来日時の狂騒を書いた『ミート・ザ・ビートルズ』についての論争(小林信彦が気に入らない書評に反論して始まった)がありましたが、それが今また取り上げられていたので、私の考えを書き留めておきます。(セルフまとめです)
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

「松村雄策、小林信彦『ビートルズ論争』の本質とは一体なんだったのか」というコラムが少し話題になっていたので、読んでみたが、私には「他人が悪口を言われていると、それに乗じて悪口を言う人がいるよな」という以上の感想はなかった。 この論争の「本質」など最初から明らかだったと思う。

2022-04-14 06:36:24
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

コラムでも引用されていたが、山崎浩一による「小林氏の『当時33歳の業界人的視点』と松村氏の『当時15歳のファン的視点』が衝突」というのが、ほぼ全てではないか。例えば、石原裕次郎世代の小林信彦は加山雄三を「石原裕次郎のエピゴーネン」としか思っていないが15歳の少年には違う、というような。

2022-04-14 06:41:56
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

松村雄策や音楽ファンが反発を感じたのは、小林信彦は「社会現象としてのビートルズ来日の狂騒」には興味があったが、ミュージシャンとしてのビートルズには別に興味がなかったことだろう。実際、この小説でのビートルズは、全く理想化されず「ただのツアーに疲れたバンド」としてしか描かれていない。

2022-04-14 06:55:47
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

それが最も顕著なのは、本来クライマックスになるべき「ビートルズとの対面」は、主人公が意識朦朧としている間に終わってしまい、全く描かれないことだ。これは意図的な「外し」であり、小林信彦の言う、この小説の「悪意」とはここの筈だが、それ(ビートルズなんかどうでも良い)は論じられない。

2022-04-14 07:04:55
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

小林信彦の関心は「ビートルズ来日に騒ぐ日本人」でしかなく、それを、当時33歳の覚めた視点で描こうとしたのだから、当時ビートルズファンだった少年達に面白い筈がないのだ。トリビア的な批判は、この小説に対する心情的な反発「好きでも、詳しくもないことに口を出すな」を補強するものでしかない。

2022-04-14 07:12:15
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

世間で神格化されているが自分には関心のない分野を語る時「敬して遠ざける」ように扱えば、マニアの人達も許容するのだが、小林信彦は上から目線で「ビートルズ?興味ないけど」という態度だったので、反感が強くなった。これはノスタルジー小説の皮を被っているが、その心情はノスタルジーではない。

2022-04-14 07:25:13
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

ただ「ビートルズ来日の狂騒」が充分に描かれているかといえば、そうでもない。だから私もこの小説は成功していないと思う。短すぎる、或いは逆に、長すぎたのだと思う。タイムスリップ小説(エンタテインメント)の形など採らず、私的な中編にすべき題材だった。それでは発表の場がなかっただろうが。

2022-04-14 07:31:54
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

一つ指摘しておくと、「ビートルズ来日の狂騒」と言っても、小林信彦は自分の人生をベースにした小説を書く作家で「取材して」「一般的な」騒ぎを書く意思はない。この作品も小林信彦の実体験がベースになっている。 そのベースに、長編を支えるほどのボリュームがなかった、ということではないか。

2022-04-14 12:18:25
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

私は小説「ミート・ザ・ビートルズ」を巡る論争は、本質的な部分に触れず、周辺部分だけで騒いでいる、奇妙な「論争」だったと、冷めた目で見ていた。 個人的には、小林信彦の「筆誅体質」が、渋谷陽一に、話題作りに利用されたのではないか?と思っているが。 だとしたら「勝者」は渋谷陽一だろう。

2022-04-14 07:40:03
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

この小説は、この「クライマックス」を見ても分かるように、ビートルズに関しては「無」なのだ。『ミート・ザ・ビートルズ』と呼称しながら、ビートルズについては全くなにもない(それが描きたいことではないので)のだから、ビートルズ好きの人が反発するのは当然とも言える。 twitter.com/woody_honpo/st…

2022-04-14 10:06:23
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

しかし、それはこの小説の「意図」でもあるので、反発しても仕方ないとも思うが。 むしろ批判されるべきは、「描きたいこと」(ビートルズ来日を巡る日本人の姿)が効果的に描かれていないことではないかと思う。

2022-04-14 10:09:01
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

『ミート・ザ・ビートルズ』は「ビートルズについての小説」ではない。「偶像に狂騒する日本人」についての小説であり、だから狂騒の中心のビートルズは「空虚」なのだ。だからといって「ビートルズは空虚」と言っている訳でもない。そこをスルーした(理解していない)「論争」に意味などないだろう。

2022-04-14 10:37:46
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

『ミート・ザ・ビートルズ』というタイトル自体が「皮肉」なんですよ。 主人公は意識朦朧としていて「会ってない」のだから。 twitter.com/woody_honpo/st… pic.twitter.com/56N4vAZ9Vy

2022-04-14 10:39:27
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エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

まぁ、気に入らない書評なんか無視すれば良いのに、噛みついていった(しかも詳しくない分野に)小林信彦も馬鹿だな、とも思いましたけれどね。あの騒動はけっこうなダメージだっただろう。 悪癖(筆誅体質)に足をすくわれたというべきか。

2022-04-14 11:45:52
エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

私は、小林信彦の『ミート・ザ・ビートルズ』は失敗作だと思っているが、それにしても作者の意図に沿った(意図の失敗を指摘した)批判というのがあるべきで、「全く小説が読めてないんじゃないか?」みたいな「批判」の乱舞する「論争」には唖然としていた。当時も今も、くだらないとしか思えない。

2022-04-14 11:58:50