- rouillewrite
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きゅっと身構えてそちらを睨むと… 出てきたのは私服姿のエリーゼだった。 髪も整っており、どこかに出かけるような雰囲気の彼女に、ユースティアは努めて小さく声をかける。
2022-04-14 21:51:44「エリーゼ?」 「…ティア…おはようございます」 「おはよう。どこかにお出かけ?」 「…はい。礼拝堂に、お祈りに」
2022-04-14 21:52:48そう言って、エリーゼは目を伏せた。誰かのことを思い出すように目を細める。 …ユースティアは少し考え込んだ後、躊躇いながらリオの方へと視線を向けた。
2022-04-14 21:54:18そのまま「それじゃあ、」とコットの傍に置いていた着替えを手に取る。 驚いているエリーゼを放置して厨房に向かうと、数分してから…彼女は普段通りの姿で現れた。
2022-04-14 21:55:23「リオを起こさなかったってことは、あまり人に見られたくはないんでしょう?嫌なら、ついて行くだけにするわ。だから、1人で行っちゃダメ」
2022-04-14 21:57:32「それから、すぐ戻るのよ」と付け足して、ユースティアは微笑んだ。 小声だが強い彼女らしい言葉は、とても頼もしく思えた。
2022-04-14 21:58:34左右の灯りがあるとはいえ、廊下は少し暗い。 地下室の方向から感じる冷気を無視し、2人の少女は足早に礼拝堂の方へと向かった。
2022-04-14 21:59:49……中庭回廊を通って向こう側、ちょうど正面に礼拝堂へ続く渡り廊下への入口がある。 この館で、中庭以外に直接外を感じられる場所だ。
2022-04-14 22:00:38扉を開け先へ進むと、長い渡り廊下が見えた。 ずっと先の方で分岐しているのが遠目で分かる。その分岐を左に行くとプール、右に行くと確か使われていない小屋があったはずだ。
2022-04-14 22:01:33そのふたつの分岐を通り過ぎて、2人は荘厳な扉の前に立った。 少女2人で開けるにしては少し重い扉を、力いっぱい押して潜る。
2022-04-14 22:03:21ユースティアが目を輝かせている横で、エリーゼは前へ出た。 マリアがそうしていたように、自分の胸の前で両手を組むと、目を瞑る。
2022-04-14 22:05:28風の音もない、静かな礼拝堂で。 ほんのり入ってきた朝の日が少女たちを照らしていく。 ユースティアはふと、ステンドグラスに描かれた月が目に入った。僅かな光で、輝く月。朝が近いというのに月が見えるのは、なんだか不思議な気分だった。
2022-04-14 22:07:11…少し経った頃、エリーゼが立ち上がる音を聞いてユースティアはステンドグラスから目を離した。 こちらを振り返り、泣きそうな顔で見つめてくる彼女の姿をとらえ、ユースティアは口を開く。
2022-04-14 22:08:04「……毎日こうしてるの?」 「はい。…マリアが言ってたんです。 亡くなった人たちのために祈ることが、せめて私たちに今できることだ、って」
2022-04-14 22:08:51「……」 「……みんな…私のせいで…。 もしかしたら、あなたは…皆さんは…ここから出られなかったら… もしかしたら…」
2022-04-14 22:09:52…すると、泣きそうな顔で俯く彼女の手を引いてユースティアは椅子へと座る。 「座って」と半ば強引に少女を隣に座らせると、小さくため息をついた。
2022-04-14 22:11:15