【創作企画】第8話 逆さまの18番目【UP A Mystery】

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UP A Mystery【完結】 @C_UP_A_Mystery

音のするほうを確認すれば、厨房から誰かが出てくる。

2022-04-14 21:50:28
UP A Mystery【完結】 @C_UP_A_Mystery

きゅっと身構えてそちらを睨むと… 出てきたのは私服姿のエリーゼだった。 髪も整っており、どこかに出かけるような雰囲気の彼女に、ユースティアは努めて小さく声をかける。

2022-04-14 21:51:44
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「エリーゼ?」 「…ティア…おはようございます」 「おはよう。どこかにお出かけ?」 「…はい。礼拝堂に、お祈りに」

2022-04-14 21:52:48
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そう言って、エリーゼは目を伏せた。誰かのことを思い出すように目を細める。 …ユースティアは少し考え込んだ後、躊躇いながらリオの方へと視線を向けた。

2022-04-14 21:54:18
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そのまま「それじゃあ、」とコットの傍に置いていた着替えを手に取る。 驚いているエリーゼを放置して厨房に向かうと、数分してから…彼女は普段通りの姿で現れた。

2022-04-14 21:55:23
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「……ひとりじゃ危ないでしょ、私も行くわ」 「…ティア…」

2022-04-14 21:56:24
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「リオを起こさなかったってことは、あまり人に見られたくはないんでしょう?嫌なら、ついて行くだけにするわ。だから、1人で行っちゃダメ」

2022-04-14 21:57:32
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「それから、すぐ戻るのよ」と付け足して、ユースティアは微笑んだ。 小声だが強い彼女らしい言葉は、とても頼もしく思えた。

2022-04-14 21:58:34
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エリーゼが小さく頷くと同時に、ユースティアはその小さな手を取って静かに食堂を出た。

2022-04-14 21:59:27
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左右の灯りがあるとはいえ、廊下は少し暗い。 地下室の方向から感じる冷気を無視し、2人の少女は足早に礼拝堂の方へと向かった。

2022-04-14 21:59:49
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……中庭回廊を通って向こう側、ちょうど正面に礼拝堂へ続く渡り廊下への入口がある。 この館で、中庭以外に直接外を感じられる場所だ。

2022-04-14 22:00:38
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扉を開け先へ進むと、長い渡り廊下が見えた。 ずっと先の方で分岐しているのが遠目で分かる。その分岐を左に行くとプール、右に行くと確か使われていない小屋があったはずだ。

2022-04-14 22:01:33
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そのふたつの分岐を通り過ぎて、2人は荘厳な扉の前に立った。 少女2人で開けるにしては少し重い扉を、力いっぱい押して潜る。

2022-04-14 22:03:21
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そうして、大きな銀色の十字架と、色とりどりのステンドグラスが彼女達を出迎えた。

2022-04-14 22:04:08
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ユースティアが目を輝かせている横で、エリーゼは前へ出た。 マリアがそうしていたように、自分の胸の前で両手を組むと、目を瞑る。

2022-04-14 22:05:28
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風の音もない、静かな礼拝堂で。 ほんのり入ってきた朝の日が少女たちを照らしていく。 ユースティアはふと、ステンドグラスに描かれた月が目に入った。僅かな光で、輝く月。朝が近いというのに月が見えるのは、なんだか不思議な気分だった。

2022-04-14 22:07:11
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…少し経った頃、エリーゼが立ち上がる音を聞いてユースティアはステンドグラスから目を離した。 こちらを振り返り、泣きそうな顔で見つめてくる彼女の姿をとらえ、ユースティアは口を開く。

2022-04-14 22:08:04
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「……毎日こうしてるの?」 「はい。…マリアが言ってたんです。 亡くなった人たちのために祈ることが、せめて私たちに今できることだ、って」

2022-04-14 22:08:51
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「……」 「……みんな…私のせいで…。 もしかしたら、あなたは…皆さんは…ここから出られなかったら… もしかしたら…」

2022-04-14 22:09:52
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最後の言葉は、震えていた。 彼女が想像しうる最悪の状況だろう。

2022-04-14 22:10:10
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…すると、泣きそうな顔で俯く彼女の手を引いてユースティアは椅子へと座る。 「座って」と半ば強引に少女を隣に座らせると、小さくため息をついた。

2022-04-14 22:11:15
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「ねえ、そんなこと考えて何になるの?それを考えたら、ここから出られるのかしら」

2022-04-14 22:11:57
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