- C_UP_A_Mystery
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深い赤色のカーペット。 上には豪華絢爛なシャンデリア。 大の大人が数十人寝転んでも余りある広さの玄関ホールに響き渡ったのは、幼い少女の声だった。
2022-02-03 21:18:38その声に、既に探偵たちが来る前に玄関ホールに集められていた少女たちも、不安げな声を上げる。 一部の探偵たちは、閉じ込められた、と慌てて茶色の大きな扉を開けようと駆け出した。
2022-02-03 21:19:25ガチャガチャとドアノブを鳴らしているうちに、随分と後ろの方から「お静かに」と柔らかな声が飛んできた。
2022-02-03 21:20:34その声に反応して全員が階段の真ん中にある扉の前を見ると、そこには長い茶髪を緑色のリボンで結び、柔らかな笑みをたたえる40代ほどの男性がいた。 黒い背広に身を包み、緑色のストライプのネクタイを、白い手袋で少し整えながら、彼はニッコリと微笑んだ。
2022-02-03 21:22:19『君たちにはこれから、謎を解いて僕の“依頼”をこなしてもらおう。 その暁には、素敵な報酬と、この館からの脱出を約束するよ』
2022-02-03 21:23:56声の主は楽しそうに笑った。 『あとは任せたからね、デアダーム』と声が言うと、扉の前に立っていた男性が小さく返事をした。 彼は「デアダーム」と言うらしい。
2022-02-03 21:25:00彼は放送のスイッチが切られた音を確認すると、探偵たちの前で軽くお辞儀をした。 そして、事を説明しようと口を開く。
2022-02-03 21:25:26「デアダームさーーん!!ごめーーん!!遅れた!」 「……遅いですよ。 というか、静かに入りなさい、ジャック」
2022-02-03 21:27:03デアダームが説明しようとしたその時、ドタドタと階段の中央の扉から青年がでてきた。20歳前後だろうか。 デアダームより少し背の低い青年は勢いよく扉を開け、ぜえぜえと肩で息をしながら謝る。 短い茶髪に麦わら帽子、茶色いサスペンダーの下に白いシャツを着た彼は「ジャック」と呼ばれていた。
2022-02-03 21:27:53「ごめん、色々やってたら遅れて」と小さく言い訳をしているようで、デアダームが少しだけ眉を吊り上げて「お客様の前ですよ」と言うと、彼は途端に背筋を伸ばして立つ。 そうして、デアダームがひとつ咳払いをしてから、探偵や少女たちをぐるっと見渡すと「改めまして」と軽く礼をした。
2022-02-03 21:28:59「ようこそ、名探偵の皆様。使用人のデアダーム、と申します。こちらは庭師のジャック。 この館から脱出するまでの間、皆様のお手伝いをさせて頂きます。 何かございましたら、何なりと私たちにお申し付けください」
2022-02-03 21:30:03そう言うと、彼はニッコリと微笑んだ。いきなりこんな場所に閉じ込めておいて、と小さく抗議の声が上がったがデアダームはあまり気にせずに続けた。
2022-02-03 21:30:53「主人より、ご依頼については説明をせよと仰せつかっております。ご依頼の説明後、皆様がこの館で暮らす際の注意点を説明をさせて頂きますので…あぁ、暴力などはお控えくださいね」
2022-02-03 21:32:13…そこには、少女がひとり不安げな様子で立っていた。 pic.twitter.com/v2TCUK8pJv
2022-02-03 21:33:15玄関ホールには9人の少女と、10人の探偵がいる。人数が合わないことなど閉じ込められたことに比べればどうでもよかったのだが、違和感のあった探偵たちは妙に納得したような顔だった。
2022-02-03 21:33:50デアダームは自分の脚に隠れるようにしている少女の背中を軽く押す。 膝の下まであるだろう長い金髪、大きな碧眼、髪の先を水色の大きなリボンで柔く結んだ6、7歳ほどの少女だった。
2022-02-03 21:34:53「探偵の皆様にご依頼したいのは、この娘の記憶を取り戻すこと。 自分の名前も、出生も、過去も、何もかもをなくした空っぽの箱の中身を探し出すことでございます。 謎を解き明かせば、彼女のこともわかるでしょう。その先にある真実を、皆様に探し出していただきたいのです」
2022-02-03 21:36:09「期間は問いません。 謎を解き、真実を見つけ出したその時には、この館から出る権利が与えられます」
2022-02-03 21:36:35デアダームがそう言い終わると、少女は再び彼の後ろへと隠れてしまった。 続けて、ジャックがポケットに片手を突っ込んだまま、その手元を見ながら少し前に出る。
2022-02-03 21:37:44