三題噺ったーまとめ

@taskun

時にはこちらの家の中にまで入ってきて、寝ている自分たちの周りをうろつくことさえある。そしてそんな夜は、マリアコス湾の船乗りにさえ、霊たちの上げる鬨の声が風に乗って聴こえてくるのだ、と。【2】

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彼らはきっと今もペルシアの兵と戦っているのだよと老人は云った。一度だけ、レオニダス王らしき霊を見たことがある。ある夜、獣のような息遣いがするのに気づいて目を開けると、ベッドの脇に炯々と目を光らせた半裸の男が立っていた。【3】

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ペルシア兵の返り血にまみれ、猛獣のような殺気を放つ王は、まるで睦言を囁くような低く穏やかな声で、お前はクセルクセス王か、と耳元で問うた。老人が違うと首を振ると、王はすうと剣を引いて部屋から出て行ってしまった。【4】

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もしそこでそうだと頷いていたらどうなっただろうかと問うと、きっとその場で首を打ち落とされていただろう、と老人は云った。この辺では今でも時折、何者かに首を切断された遺体が見つかるのだ。そして、犯人も凶器も、いつも見つからないのだよ。《了》【5】