山本七平botまとめ~暴力支配~攻撃性に基づく動物の、自然発生的秩序と非暴力的人間的秩序は、基本的にどこが違うか

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山本七平bot @yamamoto7hei

①前略~そして米軍が介入して暴力団が一掃される。すると途端に秩序が崩れる。 「何と日本人とは情けない民族だ。暴力でなければ御しがたいのか」。 これが、この現実を見た時の小松さん(註:「虜人日記」の著者/小松真一氏)の嘆きである。<『一下級将校の見た帝国陸軍』

2012-10-12 20:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

②そしてこの嘆きを裏返したような、私的制裁を「しごき」ないしは「秩序維持の必要悪」として肯定する者が帝国陸軍にいたことは否定できない。 そしてその人たちの密かなる主張は、もしそれを全廃すれば、軍紀すなわち秩序の維持も教育訓練もできなくなると言うのである。

2012-10-12 21:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

③それを堂々と主張する下士官もいた。 「いいか。私的制裁を受けた者は手をあげろと言われたら手をあげてかまわないぞ。オレは堂々と営倉に入ってやる。これをやらにゃ精兵に鍛え上げることはできないし軍紀も維持できない。…やましい点は全然ないからな。いいか、あげたい奴は手をあげろ」

2012-10-12 21:57:47
山本七平bot @yamamoto7hei

④そしてこの暴力支配は将校にもあり、部下の将校を平気で撲り倒し、気にくわねば自決の強要を乱発し、それをしつつ私的制裁絶滅を兵に訓旨していた隊長もいる。…収容所は、それらがただ赤裸々に出てきたにすぎない。

2012-10-12 22:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤そしてここまで行かなくとも、暴力一瞬前の状態に相手を置き、攻撃的暴言の連発で非合理的服従を強要するのは、誰一人不思議に思わぬ日常の事であった。 そして戦後にもこれがあり、多人数の集中的暴言で一人間に沈黙を強いる事を、誰も不思議に思っていない。

2012-10-12 22:57:47
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥なぜか。なぜそうなるのか。 …Yさんはこれを「動物的攻撃性に基づく」秩序だと言い、収容所とは鶏舎で、その秩序はちょうど「トマリ木の秩序」と同じだと言った。雄鶏は、最も攻撃性の強いものがトマリ木の一番上にとまり、その強さの序列が上から順々に下がりトマリ木の序列になる、と。

2012-10-12 23:28:07
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦帝国陸軍は、「攻撃精神旺盛ナル軍隊」だけを目指したから、動物的攻撃性だけが主導権をもち、野牛(バッファロー)の大群が汽車に突撃するような攻撃をし、同時にそれを行うための秩序が、暴力という動物的攻撃性だけの「トマリ木の秩序」になった、と。

2012-10-12 23:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧そう言われれば「戦後的ケロリ」は、攻撃が頓挫した野牛群が、ケロリとして草をくっているのと同じ事なのか? また軍制史の教官だったというA大佐は、日本軍創設時に原因があると言った。

2012-10-13 00:27:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨そのころは、血縁・地縁を基礎とする自然発生的な村落共同体が厳存していたころで、その中の若衆制度という、青年期の年次制「組」制度が輸入の軍隊組織と結合し、若衆三年兵組、二年兵組、初年兵組という形になり、その実質には結局手がつけられなかった。

2012-10-13 00:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩そのうえ陸軍は自然発生的な村の秩序しか知らず、組織をつくって秩序を立てるという意識がない。 これはヨーロッパのアレキサンダー大王のマケドニア方陣以来の、幾何学的な組織という考え方とそれを生み出す哲学が皆無な為、そういう組織的発想に基づく軍隊組織とは内実は全くの別ものになった。

2012-10-13 01:28:02
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪従って軍人勅諭には組織論はもとより組織という概念そのものがなく「社儀を正しくすべし」の「礼」だけが秩序の基本だった。 だから外面的な礼儀の秩序が虚礼となって宙に浮くと、暴力とそれに基づく心理的圧迫だけの秩序になってしまった。

2012-10-13 01:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫一人への公開リンチによる全員への脅迫が全収容所を統制し得たのと非常によく似た形、即ち一人の将校を自決させる事によって、全将校とその部下を統制し、同時に私的制裁が末端の秩序を維持するという形になってしまった、と。

2012-10-13 02:27:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬色々な原因があったと思う。 そして事大主義も大きな要素だったに違いない。 だが最も基本的な問題は、攻撃性に基づく動物の、自然発生的秩序と非暴力的人間的秩序は、基本的にどこが違うかが最大の問題点であろう。 一言でいえば、人間の秩序とは言葉の秩序、言葉による秩序である。

2012-10-13 02:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭陸海を問わず全日本軍の最も大きな特徴、そして人が余り指摘していない特徴は「言葉を奪った」ことである。 日本軍が同胞におかした罪悪のうちの最も大きなものはこれであり、これがあらゆる諸悪の根元であったと私は思う。

2012-10-13 03:27:54