ヒモ彼生活

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レン @rain560509

それから、何時間か経ってやっと分娩室へ。 「痛い…」 強烈な痛みに耐えきれず意識が遠のきそうになる。 『○○ちゃん!』 その時、隆平くんの声が意識を引き戻した。 「隆平くん?」 『そうやで。』 「仕事は?」 『ちゃんと終わったで。○○ちゃん頑張って。』 そう言って手を握ってくれた。

2022-07-07 02:12:10
レン @rain560509

~隆平side~ 『すみません、遅くなりました。』 走って走って、現場に着いてすぐに親方の所へ。 〖おう、早く支度しろっ。〗 『はい!』 〖で、会えたのか?〗 『あ、はい!』 〖無事だったか、良かったじゃねぇか。〗 『いや、それが…』 〖どうした?病気、悪かったのか?〗 『そうじゃなくて、』

2022-09-01 05:33:27
レン @rain560509

〖なんだよ、分かんねぇな。〗 『急に、お腹痛くなって、先生飛んできて、お腹膨らんでて、仕事いけってなって、』 〖要するに、子供が産まれるのか?〗 『あっ、はい、そうです。』 〖おい、帰れ!〗 『え?』 〖仕事にならねぇやつはいらねぇな。〗 『帰りません!僕、お父さんやから、働きます。』

2022-09-01 05:33:28
レン @rain560509

〖そうか、それならさっさとしろ。〗 『はい!』 ほんまは、すぐにでも○○ちゃんのところに戻りたいけど、僕はお父さんになりたいから、ちゃんと働かんとあかん気がしたんや。 帰れって言われても帰るわけにはいかへん。 〖ちんたらしてんじゃねぇよ、早くしろ。〗 『すみません、すぐやります!』

2022-09-01 05:33:29
レン @rain560509

でも、やっぱり気にはなるし、親方には怒られたりもしたけど、最後までしっかり働いた。 〖お疲れさん。〗 『お疲れ様でした、お先に失礼します!』 走って走って、病院に戻ってすぐに○○ちゃんのところへ。 『○○ちゃん!』 「隆平くん?」 『そうやで。』 苦しむ○○ちゃんの手を取り握った。

2022-09-01 05:33:29
レン @rain560509

あれから僕が仕事してる間ずっと、こんな激痛に耐えてくれてたんやね。 赤ちゃん産むのって、こんなに大変やなんて知らへんかった。 産まれたって連絡がきてへんくてほんまに焦ったけど、間に合って良かった。 「もうやだ、痛いよっ、」 『せやな、でも頑張って。僕ここにおるから。な?』 「うん、」

2022-09-01 05:33:30
レン @rain560509

【○○ちゃん、しっかりね。もうすぐ赤ちゃんに会えるわよ。】 「はい、」 『頑張って!』 必死で手を握りしめた。 その手から、○○ちゃんの痛みが伝わってくる。 神様お願いします、どうか○○ちゃんも赤ちゃんも無事でありますように…。 僕は、ここにおるだけしかできひんけど、ひたすら祈った。

2022-09-01 05:33:31
レン @rain560509

~女の子side~ 隆平くんの手を強く握りしめながら、本当は心細かったんだと思い知る。 今は、隆平くんがいてくれる。もう大丈夫。 でも、必死で耐えるけれど、長時間の痛みで意識が朦朧とする。 もう無理…意識を手放しそうになった時、響き渡った大きな泣き声に引き戻された。 『○○ちゃんっ、』

2022-09-15 04:00:11
レン @rain560509

私の名を呼びながら涙を浮かべている隆平くんと、元気な産声を上げている赤ちゃんがそっくりで、私まで涙が浮かんできた。 【○○ちゃん、おめでとう!よく頑張ったわね。】 「ありがとうございます。」 『ありがとうございます!』 そこで意識がプツリと途絶えた。 「ん…」 『あ、○○ちゃん!』

2022-09-15 04:00:12
レン @rain560509

気がつくと、病室にいて隆平くんが手を握ってくれていた。 「隆平くん…あれ、私何で…?」 『大丈夫、疲れてただけやって。』 「そっか…あ!赤ちゃんは?」 『赤ちゃん元気やで!母子ともに健康やって。今は新生児室にいてるよ。』 「良かった。」 『○○ちゃんごめん。僕、何も知らんと今まで。』

2022-09-15 04:00:13
レン @rain560509

「私こそ、ごめんなさい。あの時、このままだとダメだと思って言えなかった。でも、どうしても産みたくて…。こんな事なら、早く相談してれば良かった。」 『僕が全部悪いねん。あのままやったら、こうはなってなかったと思う。せやから、○○ちゃんの判断は正しかった。全部○○ちゃんのおかげや。』

2022-09-15 04:00:14
レン @rain560509

「隆平くん、」 『○○ちゃん、今の僕はどうかな?』 「え、どうって?」 『あ、せや。これ!』 「あ…」 手渡されたのは、あの時の通帳。 『ごめん、急に家賃とかスマホの請求きてもうたから使っちゃったけど。』 その言葉に通帳を捲って確かめる。 「隆平くんこれ、」 元の金額より増えていた。

2022-09-15 04:00:14
レン @rain560509

『○○ちゃん、治療費がいるって思って貯めててん。』 「すごい、こんなにっ。」 『こんなんじゃ、全然足りひんねん。○○ちゃんは仕事もバイトも掛け持ちして無理さしてたから。』 「そんな事ないよ、凄いね。」

2022-09-15 04:00:15
レン @rain560509

ほんとに凄い。 あの隆平くんがこんなに頑張ったなんて。 『○○ちゃん、僕とずっと一緒にいて下さい。』 「はいっ。」 『もう、仕事もバイトもせんでてえから。せやからもう、おらんくならんとって?一緒に部屋に帰ろう3人で。』 今度は私から手を握りしめた。 もう二度と離さないように。 END

2022-09-15 04:00:16
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