ベスト・ショットを見せてみろ。~第2回ついのべ大賞(たぶん)応募作まとめ~

応募当時のメモが非常にアバウトで、記憶を辿りながらまとめてみました。 来年はもっと真摯に向き合います。
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あまたす @amatasu

当社は、ベッド下のモンスターの駆除専門業者です。モンスターが棲みつきますと、人を不眠症にしたり、カップルに「魔」をさして倦怠期にしたりなどの害があります。あ、お心当たりが?でしたら早めの駆除がお奨めです。ただ今半額キャンペーン実施中ですので、ぜひご利用ください。 #twnovel

2010-11-16 04:48:50
あまたす @amatasu

ベッドの下のモンスターを退治すると、不眠が治るらしい。友達に教えてもらった業者に家を調べてもらうと、ベッドの下から大きさ2mほどの、毛むくじゃらの怪物が出てきた。驚く私をよそに、業者は慣れた様子でそれを投網で捕らえ、連れていった。少なくとも、今夜は眠れそうだ。 #twnovel

2010-11-16 05:14:28
あまたす @amatasu

久々に彼女に会いに行った。窓から覗くだけで帰ろうと思っていたが、窓が霜に覆われていた。そっと、窓に手を触れてみる。霜が溶けたところから、彼女の顔が見えた。「やあ、久しぶり」彼女が病気治療のためコールドスリープに入って40年。彼女が望む未来は、まだ彼女の夢の中だ。 #twnovel

2010-11-15 00:43:36
あまたす @amatasu

私がいなくなったら、彼はどうするんだろう。そう思って、真夜中に部屋を出た。ファミレスで時間を潰して、朝になって帰ると、彼は何も言わずにコーヒーを淹れてくれた。置いていった携帯を後で見ると、留守電が入っていた。そこで私は初めて彼の「愛してる」という言葉を聞いた。 #twnovel

2010-04-12 05:07:32
あまたす @amatasu

僕は悩んでいた。右手にはハサミ、左手の小指には糸。もちろん、色は赤だ。彼女と距離をおいて1ヶ月。彼女とつながったこの糸を、切る時が来たのだろうか。悩んだ末、僕は糸をたぐり寄せてみた。長い長い糸の反対側に彼女の姿はなく、すっぱりと切られた糸の端が風に揺れていた。 #twnovel

2010-04-09 04:26:43
あまたす @amatasu

父は育苗家だった。母が他界した後は、鍵付きの温室を作り、1日中入り浸っていた。そんな父も体調を崩し、入院した。ある日、父は私に鍵を渡し「ここの花だけは枯らすな」と強く言った。数年後、父は他界した。私は引き継いだ温室の花で葬儀を飾った。母と同じ名の、薔薇だった。 #twnovel

2010-03-28 03:03:54
あまたす @amatasu

「あなたには飽きたわ。さよなら」そう言って、彼女は行ってしまった。仕方無く、本を読み、映画と芝居を観て、美術館へ行った。彼女は、インスピレーションという名の女神。彼女が気紛れで戻ってくるまで、辛抱強く待つしかない。―彼女が気紛れで愛した者達の痕跡を辿りながら。 #twnovel

2010-03-19 04:09:13
あまたす @amatasu

引っ越してすぐ、近所のポストに手紙を出そうとしたら、通りすがりの男にそれは普通のポストとは違う、と言われた。聞けば、過去へ手紙を出すポストだと言う。届くか否かじゃない、言えなかったことを手紙にするのは悪くないだろ?男はニヤリと笑った。以来、便箋は必需品になった。 #twnovel

2010-03-13 04:43:20
あまたす @amatasu

道に、何かを懸命に拾う男がいた。だが、拾っている物がわからない。姿形がないのだ。好奇心に駆られ尋ねると、誰かが捨てた夢を拾っているのだという。それは、夢をなくした者に売れるのだという。気づけば、男から夢をひとつ買っていた。姿形のない夢は、しっとりと重かった。 #twnovel

2010-03-02 02:41:06
あまたす @amatasu

たった一言がどうしても言えなくて、その言葉をキャンディのように舌の上で転がしていた。そうしているうちに、言葉は消えてしまった。いや、消したのは自分だ。小さくなった最後のカケラを、我慢できずに噛み砕いてしまったのだから。そう、キャンディのように。 #twnovel #140bngk

2010-03-01 04:30:21