アシッド・シグナル・トランザクション #3

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆カラテの高まりを感じている◆

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【爆発四散】 ・ニンジャは戦って倒され死ぬとき爆発四散する ・爆発四散する時「サヨナラ！」と叫ぶ ・パーティクルが舞い爆発四散痕が残るが、爆発四散時に周囲に被害が及ぶ事は極めて稀 ・致命傷を受けた肉体が内的カラテを抑え込めないので爆発する ・病死、衰弱死のニンジャは爆発四散しない

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【アシッド・シグナル・トランザクション】#3 pic.twitter.com/aXiqDZf0iu

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フジキドが残した情報素子から取り出され、コトダマ空間に解き放たれたそれは、通常、記憶端末には到底収められぬであろうほどに高密度の、不穏な球体であった。言葉が幾億幾兆にも層を為し、ナンシーの眼前で、ゆっくりと回転している。　1

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インターネットとは、後世の文明がオヒガンの原理を部分的に解釈したものに過ぎない。圧縮プログラムとは古代魔術の不完全な再現である。エジプト魔術の秘奥義に通じたセトのインターネットは現代人を遥かに凌ぎ、データ圧縮技術もまた然り。ナンシーのこめかみを緊張の電子汗が流れた。 2

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球体を構成するヒエログリフ・コードは立体回転パズルじみて相互に影響を与えながらスライドする。ナンシーは己がタイピング速度ひとつで、その法則に触れ、理解し、答えを導き出さねばならぬ。このパズルの中に封じ込められているのは混沌の渦そのもの。そこから彼らの会話ログを抽出せねば……！ 3

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煮えたぎる色彩の海は、ダイブしたナンシーを自律的にとらえ、泡や結晶じみた輝きを放ち、分裂し、枝葉を伸ばして触れようとする。見え隠れする言葉の断片、それらは一つ一つを捉えれば意味不明の破損データのようだ。しかし正しき角度から力を加えることで、会話らしき情報が僅かに成立する。　4

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必要とされるのはそれら会話のログ……ダークカラテエンパイアのニンジャ達のやり取りの記録にすぎない。邪悪なるセトは閉鎖世界の開闢から現在に至るまでの歴史を電子情報に変えて封じ込めている。圧縮された危険な混沌に比すれば、そこから抽出すべきデータ量のなんと小さな事か。それゆえに危険！ 5

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歴戦のハッカーたるナンシーとて、少しでも取り組みの角度と手順を誤れば、よくて脳波フラットライン……最悪の場合はIPそのものが煮え滾る電子ヒエログリフ重油の一部となり、永劫に撹拌され続けるさだめ。そうなればセトはいずれ気づき、柘榴の種を味わうように容易く全ナンシーを咀嚼するだろう。 6

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だがナンシーは涼しく笑った。そうする事が秘訣だとでも言うように。『目覚めた後でもこんな難物が幾らでも残されている事、嬉しく思うわ』彼女は呟き、周囲に自身のタイピング指残像を無数に舞わせて、閉鎖された電子荒野の世界に混ぜ込まれた会話ログを構築し続けている……今この時も引き続き！　7

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セト。ケイムショ。ギャラルホルン。ヴァイン。シャン・ロア。オモイ・ニンジャ。アイアンコブラ。カリュドーンに参加した七人のリアルニンジャ達。彼らの剣呑な……同時に、無責任な愉悦に彩られた会話の残像は徐々に形を為し、影絵めいて繰り返される。タキの肩の上で小さなナンシーがそれを見る。 8

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小ナンシーは解析作業と並行してタキ達に解析内容を共有し、困難なミッションに協力する為に出現させたサブ自我アカウントだ。小ナンシーはタキの眼前に積みブロックじみて立体図像を出現させる……エネアド社社屋の構造図を。『いいか。エネアド社はセト野郎が所有する企業だ』タキが言った。　9

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ニンジャスレイヤーとコトブキはジグザグにバイクを走行させ、指定座標に急ぐ。『いいか。エート……カリュドーンの儀式ってのはよ。ネオサイタマ全域を使って……まあ、やってるワケだ。その原理ってのは……』タキは目を白黒させて、周囲を舞うログマキモノ断片を整理しつつ、二人に説明する。　10

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『シトカを閉じ込めたパワーやら、アケチのネザーポータルやら、ああいう完全なジツの力とは違ってる……IRCネットワーク網にタダ乗りして、ネオサイタマのトラフィックを利用し、カリュドーンのもたらす力を最大強化してやがるんだ！なんだと？マジかよ！？』咳払い、『そういう事だ。わかるか？』 11

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『大体な』ニンジャスレイヤーはカンオケトレーラーを追い抜きながら相槌を打った。タキは小ナンシーを見て顔をしかめて見せた。『だとすればハッキングできるッて事だ。これに関しちゃ、オレらには一日の長がある。ネザーキョウで古のネットワークを使ったようにな！遡ってファックしてやるんだ』　12

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『とにかく頑張りましょうね！』コトブキが励ました。タキは唸った。『で、その為に今、お前らはエネアド・ツウシン社に向かってる！エネアド社はネオサイタマに八つのヘッドオフィスを建てた。なんだあ？ネオサイタマが広いつッても、ハンバーガーショップじゃねえんだ、建てすぎだろ。理由は……』13

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タキの目の前にスライドしてきたのはネオサイタマ全域地図に八つの支社座標をポイントしたものだ。『そうだ！支社の座標を繋ぐと八角形になる！わかるか？絶対、魔術的な意味があるンだ。セトの野郎は魔術とIRCネットワークを絡めて、カリュドーンを天変地異に結びつけちまったんだ！』　14

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『当然そんなふざけた儀式は潰す』と、ニンジャスレイヤー。タキは興奮してきた。『そうだッ！調子乗った奴にクソ喰らわすぜ！じゃあどうする？それはな、エート……狩人を256人返り討ちにしたら、儀式は多分崩れる。セトの魔術がそんな大人数の狩人を想定してねえから』『…却下では？』コトブキ。 15

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『まあニンジャスレイヤー＝サンがもたねえだろうしな』タキは目の前に飛んできたマキモノの内容をあらためた。『それに、恐らくネオサイタマが……チクショウ、もたねえ筈だ。いいか。ダークカラテエンパイアの他のニンジャどもはゲームで勝つのに躍起になってるだけだが、セトの狙いは別にある！』16

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タキの肩の上、小ナンシーはコトダマの空を見上げ、邪悪なる古代リアルニンジャ達が星座めいて蠢く記録を観察した。やり取りされる言葉の影、それに対するセトの反応……おぼろげにセトが誘導する彼自身の目的達成。『狩人と獣が殺し合うたび、セトはその衝突の力を回収する。八角形の魔術で！』17

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『横取りしていたんですか？』コトブキが疑問を呈した。『セト以外のリアルニンジャはそれを知っているのですか？隠れてやっていたのだとしたら……なんだか卑劣な気が……こっそりと……？』『まあセトがクソ野郎なんだろ。それにこの企みは、実際、狩り儀式の邪魔にもなってねえからなあ……』　18

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『狩人と戦うたびに、力が。それがカリュドーン……』ニンジャスレイヤーは自身が理解するために繰り返していた。『おれが奴らと戦い……そして……生ずる……』『どうした？』タキは尋ねようとしたが、小ナンシーはノイズ混じりのうめき声をあげた。『オイ！平気かよ』『あまり0101うまくない』　19

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本体のナンシーはさらにタイピング指を増やし、情報圧縮体へのPING攻撃を加速した。影絵じみたリアルニンジャ達の演舞が不明瞭化し、01ノイズの霧がコトダマ空間に立ち込める。『オイ！？』『さすがはセト』ナンシーが言った。『どうにか0101する011』……タキの横にエジプト壁画じみた影が立った。 20

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二次元の壁画はコンマ00001電子情報秒のうちに立体物となって具現化し、進み出た。まさしくそれはセトであった。小ナンシーがタキの耳を掴み、強く引っ張った。タキは死体めいてその場で凍りついた。『……』セトは踏み出す。一歩。二歩。微かに首を傾げ、向きを変える。タキは彫像だ。　21