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庵野秀明と樋口真嗣のプリヴィズに対する考え方の違いから連想した、映画監督の画家タイプとフォトグラファータイプの違いについての雑感。
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woody_honpo
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庵野秀明と樋口真嗣のプリヴィズ(簡易CGによる動く絵コンテ)の捉え方の違いについての興味深い考察。 庵野秀明はプリヴィズの厳密な再現にこだわり、樋口真嗣はプリヴィズを叩き台と考えている。 それは、庵野秀明は絵の美しさを重視し、樋口真嗣は現場の盛り上がりを重視することに繋がっている。 twitter.com/hitasuraeiga/s…
2022-06-19 15:26:10![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
【ブログ更新】世間では、庵野さんと樋口さんは仲が良くて映像的な感覚も似ていると思われているかもしれませんが、「実はプリヴィズに対する考え方が大きく違う」という記事を書きました。 type-r.hatenablog.com/entry/20220618…
2022-06-18 22:04:56![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
アニメの絵コンテに置き換えると、高畑勲・宮崎駿派と富野由悠季派の違いにも似ている。 高畑勲はアニメーターは絵コンテを基に作画するから、絵コンテは完成画面と同じであるべきだと主張する。 一方で、富野由悠季は絵コンテはアニメーターのイメージを拘束しないためにラフであるべきだと主張する。
2022-06-19 15:29:56![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
実写の演出家としては、庵野秀明はコンテを重視する画家タイプであり、樋口真嗣は現場を重視するフォトグラファータイプであると言える。 例えば、黒澤明は絵画派であり、大島渚はフォトグラファータイプだ。(実は、完全主義者と言われるスタンリー・キューブリックもフォトグラファータイプだ)
2022-06-19 15:35:24![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
黒澤明が絵コンテやイメージイラストを描いたことは知られているが、脚本家の橋本忍は「黒澤明は現場で脚本を変えたりしない」と証言している。また『影武者』のリハーサルで、勝新太郎は、その都度違うパターンの演技を見せたが、黒澤明は「なぜ、いちいち変えるんだ!」と苛立ちを見せていたという。 twitter.com/woody_honpo/st…
2022-06-19 15:43:53![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
つまり、黒澤明は撮影前に、すでに頭の中に完成画面が出来上がっていて、それを再現することに全力を尽くす監督なのだ。 画面を固めて行く過程では、役者による思いつきの即興などノイズだったのではないか? 勝新太郎は即興的な演技や演出を好んだようで、2人は最初から水と油だったと言えるだろう。
2022-06-19 15:48:26![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
スタンリー・キューブリックはリハーサルを重視し、全てのリハーサルで役者に違う演技と即興を求めた。 「リハーサルはもう一つの創造だ」「全ての可能性を見てから、私は初めて撮影する」と語っていた。 キューブリックは最初から完成画面のイメージがあるのではなく、それを現場で作るタイプだった。
2022-06-19 15:56:41![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
これが大島渚になると、リハーサルを好まず、いきなり撮影し、しかも最初のテイクを使いたがった。 大島渚は「映画は俳優のドキュメンタリーだ」と語り「人生は一度しか演じられないのに、映画で何度も演じるのはリアルじゃない」「ファーストテイクこそベストテイク」というワンテイク主義者だった。
2022-06-19 16:04:01![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ワンテイク主義の大島渚と100回テイクするスタンリー・キューブリックは、演出家として真逆なようだが、どちらもコンテを重視せず、役者の即興を取り入れ、撮影現場で起こることを写し撮ろうとする点は共通している。 2人は一周回って、同じような地点に立っていたのではないか?という気がする。
2022-06-19 16:08:19![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
絵画派の巨匠はヒッチコックだ。詳細なコンテを作り「コンテが出来たら、あとは誰が撮っても同じ」と語っていた。 ヒッチコックは「演技に意味を求める」メソッド演技を嫌った。 「私は、いったい何を演じてるの?」と苛つくイングリッド・バーグマンに「落ち着けよ。たかが映画じゃないか」と囁いた。
2022-06-19 16:17:49![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ヒッチコックは演技に意味を込めるメソッド演技は、映画の演技としてはクサくなると考えていたようだ。役者には機械のように手足になって欲しい。だから「俳優は家畜だ」と言ったのだろう。 これは、現場の盛り上がりを重視する樋口真嗣映画の演技が、しばしば過剰になってしまうことを連想させる。 twitter.com/woody_honpo/st…
2022-06-19 19:16:42![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
黒澤明やヒッチコックのような絵画派の監督にとっては、自分のコンテを忠実に再現することが大事であり、しばしば「役者の自我」は蔑ろにされるのではないか。 一方で、現場を写し撮ろうとする大島渚やキューブリックのようなフォトグラファータイプの監督は、役者に自我を求めるのかもしれない。
2022-06-19 16:28:20![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
その意味では、絵画派の監督よりもフォトグラファータイプの監督の方が、役者はやり甲斐を感じやすいのかもしれない。 もっとも、スタンリー・キューブリックのように要求が厳しすぎると、役者を押し潰してしまったりする訳だが。
2022-06-19 16:30:44![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
例えば、植木等は「どんな演出をするか興味がある」と『乱』のオファーを受けるが、黒澤明に良い印象を抱いていない。性格的な問題以上に、黒澤明から「特に演技指導はなかった」のが、物足りなかったように見受けられる。 しかし、植木等も完成した作品は認めている。 これが、黒澤明なのではないか。 twitter.com/woody_honpo/st…
2022-06-19 19:02:41![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
絵画派よりフォトグラファータイプが良いとは限らない。 「現場を重視する」は諸刃の剣なのだ。日本映画には「現場は盛り上がってるのかもしらんが、画面のこっちは冷めてるんだよ」という映画がずいぶんあった。 一方でシステマチックに作られたハリウッド映画がちゃんと興奮させてくれたりするしね。
2022-06-19 17:15:37おまけ
『シン・ウルトラマン』の感想
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『シン・ウルトラマン』IMAXで観たよ。なんだかんだ言って初日に観てしまうのだ。 で、感想だけど…こんなに話を詰め込む必要があったかな?という気もする。迫力の場面もあったけれど、特に後半は、何だかキリキリ(紀里谷和明)の映画みたい。 庵野秀明とキリキリって、どこか通じるものがあるよね。
2022-05-13 14:34:06![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
『シン・ウルトラマン』、面白かったという人もいるから、それはそれで良いけれど、『シン・ゴジラ』のような一般性はない。ウルトラマンでどう一般化を実現するかに興味があったけれど、それはしないんだな…と思った。特にウルトラマンに興味のないお客さんが観て「面白いね」と言える映画ではない。
2022-05-13 20:57:29![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ハリウッドのアメコミ映画は、最初からマニアックには走らない。最初は「予備知識のない観客に、そのスーパーヒーローを紹介し、実感してもらう」作品を目指す。アメコミ映画でも世界興行を意識するからだろう。 『シン・ウルトラマン』もそうするのかと思ったら、いわゆる日本的なオタク映画だった。
2022-05-13 21:07:09![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
『シン・ウルトラマン』の「挑戦」は公安を好意的に描いていることか。庵野秀明の立ち位置が透けて見える。 公安って、ミステリ等では悪役や無能に描かれることが多い(海外のミステリもそうだよね。例えば、マルティン・ベックシリーズなんてバカ扱い)けど、何か善玉にしたい理由でも、あるのかな。
2022-05-14 15:13:52![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
実相寺昭雄はオーソドックスな演出やストーリーテイルの上手い人ではなかったから、あの人を「ベースに」考えてしまうのは、色々と良くないと思う。
2022-05-16 15:08:29![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
『シン・ウルトラマン』の斎藤工は『ヒドゥン』のカイル・マクラクランだ!という指摘があるけれど、そもそも、『ヒドゥン』がウルトラマン第一話だ!とも言える twitter.com/woody_honpo/st…
2022-05-17 09:14:16![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
カイル・マクラクランはデヴィッド・リンチ映画の主役(『砂の惑星』)で華々しくデビューしたが、リンチに「彼にはmadnessがない」と飽きられかける。 しかし『ヒドゥン』のFBI捜査官役で「面白いじゃないか」と見直され、それが『ツイン・ピークス』の当たり役「クーパー捜査官」に繋がった。 twitter.com/hjgTFGrbXA5a1C…
2021-09-15 12:50:31![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
『シン・ウルトラマン』のモーションアクターを、庵野秀明が一部自分で演じているのが話題だけれど(ウルトラマンが立ち上がるシーンが凄く庵野っぽいな…と思ったけれど)、こうした例は、これから増えそうだね。 アン・リー版の『ハルク』のモーションアクターも、アン・リー自身が演じていたね。
2022-05-18 08:16:21![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
この源流は、ラウレンティス版の『キングコング』のスーツアクターを、スーツをデザインしたリック・ベイカーが自ら演じたことかな。(クレジットは別人だが実際はリック・ベイカーが演じている)。
2022-05-18 08:22:33