不殺の技:ジュードーチョップの考察

ちょっとこういう馬鹿なことを考えないとやってられなかったのでやってしまいました。
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神野オキナ @OKina001

#嘘いい加減講座 第一回・ジュードーチョップの歴史と展望』 アメリカに長く伝わる極秘の必殺技「ジュードーチョップ」。その歴史は古く、50年代末から60年代にかけて「メジャーな武術の技」として使われておりました。 (続く) pic.twitter.com/8v8wggGNm9

2022-06-24 11:54:17

正確には「人を殺さないで気絶させる謎の必殺技」ですね(笑)

神野オキナ @OKina001

これは欧米において、拳を握って戦うボクシングなどが一般的だったことが大きいでしょう。日本国内においても「首筋に手刀を打ち下ろして気絶」はフィクションにおいて「みぞおちに拳を打ち込んで気絶」と並んでメジャーな技とされていました。 pic.twitter.com/a9BQkNyuOB

2022-06-24 12:04:57
神野オキナ @OKina001

これは習い事ビジネスとして日系人社会において「掴む」必要のある柔道よりも先に、殴打と蹴りを主眼とする「空手」が先に広まったという背景も大きいと思われます。そして大雑把な分類により空手と柔道は欧米フィクションではしばしば混同されたまま気絶させる技「ジュードーチョップ」が広がります pic.twitter.com/EkFPm1yM6F

2022-06-24 12:10:37
神野オキナ @OKina001

日本と違い「みぞおちに拳」が広がらなかったのは、拳は相手を倒す=殺す印象が欧米では強いのと、合気道などの細かい知識が必要だったというのもあるでしょう。また首を折ることも出来るチョップを加減すると気絶で済む描写は、拳銃のグリップで殴打気絶、の変形として受け容れやすかったと思われます pic.twitter.com/bOiCbYqGbX

2022-06-24 12:21:17

さらに言うと、ボクシング等が当たり前の欧米にとってみぞおちを打って気絶、というのはどう見ても「深刻なボディブロー」に見えるからかもしれません。

神野オキナ @OKina001

ちなみに拳銃のグリップで殴ることを「Pistol whipping」というそうで。最近は「殺さないが、憎悪はある」ことを意味して使われることがあるんで昔と違い結構殺伐としてる使われ方が多いようで。 pic.twitter.com/OITQLhaFf1

2022-06-24 12:32:18
神野オキナ @OKina001

さて、時は流れてスタッフの世代、観客の世代も変わってきます。ブルース・リーによる「カンフー」ブームの洗礼を受けた子供達はカンフーにも流派があり、空手と柔道は違うものだ、と理解した世代です。その人達が作り手に回ってくるとリアリティラインも変更されていきます。 pic.twitter.com/gMquJWNHZy

2022-06-24 12:35:55
神野オキナ @OKina001

そしてテクノロジーの進歩は人を気絶させるもっともらしくてリアルな小道具を生み出しました。 「スタンガン」です。実際には効かない人もいたり、心臓麻痺を起こして死ぬ可能性もあるわけですが、これによってどんな強い人も気絶させることができ、どんな弱い人も逆転出来るという結構なことに! pic.twitter.com/HMKy46Qvah

2022-06-24 12:41:45
神野オキナ @OKina001

ロバート・デニーロの怖いギャングのボスでもこの通り。 オマケにこのスタンガン、フィクションの中では拷問道具としても使えるという万能選手。 pic.twitter.com/frUQCOiY9i

2022-06-24 12:43:47
神野オキナ @OKina001

かくして、気絶技ジュードーチョップはリアル系のアクション映画では殆ど使われなくなっていきました。 古く、懐かしい60年代スパイアクションブームへのオマージュで出来上がったギャグ映画「オースティンパワーズ」で「ジュードチョップ!」のかけ声と共に再登場したのはそういう背景があるわけです pic.twitter.com/imocID94tt

2022-06-24 12:44:40
神野オキナ @OKina001

では、気絶技・ジュードーチョップはもう滅びてしまったのでしょうか。 いいえ。「オースティンパワーズ」によって「ギャグ映画ならではの技」として見事に復活したのです! pic.twitter.com/TPVH2LIbjW

2022-06-24 12:46:35
神野オキナ @OKina001

これからしばらくの間、ジュードーチョップはギャグとして生き延びていくことでしょう。 そして未来のクリエイターが再び「格好良く見せる」やり方を編み出したら、シリアス映画に「格好いい気絶技」として戻ってくる可能性もあります。 何しろフィクションは現実と違い、そこがいいんですから! pic.twitter.com/qiB8Sollxm

2022-06-24 12:48:47