【サマータイム】福間健二 #k2fact340
夕方の小さな駅の高校生たち。女子、男子、ちがう質の幼さにちがう対応をする古い資本主義のホータイを取りかえるために立つ位置を変える詩人がいる。菜の花畑で結んだ契約の旅はもう終わる。悪い女や線路わきの雑草や死に場所について書いた。さようなら、透明人間。(サマータイム1)#k2fact340
2022-08-18 09:41:35サマータイム。カモメの声がジャニスの歌になる。ぼんやり歩いていても、そんなときは見つかるものだ。鍵が、それを落とした原因が、心を揺さぶりかえす猛獣篇の断片となって。死にたい場所は砂漠。その前にもう自分が砂漠だったか。さようなら、怯えるライオン。(サマータイム2)#k2fact340
2022-08-20 13:30:31一〇〇〇円なら安いと思った。精神、肉体、順番はどうでもどっちもギュッと引きしめて仕事する作り手を感じさせる名短篇と野菜のセット。つまりさ、地平線の牛は見るよりも触るべきなのだ。懐かしい部屋にいまはだれがいる。網走と夕張で働いたことがある人だといい。(サマータイム3)#k2fact340
2022-08-21 11:10:09何が欲しい。見ているだけで迷いが消える一本道。人でなくていいから、なにかが生まれている気配。そういう空気。そういう光。親ときょうだいの、外で会ったときの笑顔。おたがいにホッとしているとカラスが鳴いた。カモメも鳴いた。札幌五日目。金麦琥珀の秋、何缶目だ。(サマータイム4)#k2fact340
2022-08-22 18:51:24何を読んだせいか。疾走したい夜が、のろのろと歩く夜に。当たり前のこと、当たり前じゃないことの判断、茶色くて、濃い味。肉と無料案内所の南5条。西に行くと海を知らないカモメの群れがいて美容室と宝石屋がある。思い出せない少年の名前、コータローだとしよう。(サマータイム5)#k2fact340
2022-08-23 11:39:33どれだけ歩いたのか。悪い女。それよりチャキチャキ娘や海底から来た女だったころが懐かしい。歓楽の都。もちろん、そんなところで生まれたわけじゃない。生まれたのは。一九三三年、岩手。一九三九年、釜山。一九三四年、大阪。一九三七年、大連。一九三六年、東京。(サマータイム6)#k2fact340
2022-08-24 08:10:19葉子さん、通子さん、昌代さん、嘉津子さん、絹子さん、おはようございます。昨夜からオロロンラインの遠別という町に来ています。だれかの歌にあったようなノーザンライト・ホテル。朝ごはんも人も最高。すべてが振り出しに戻る北の朝。小学校のブランコに乗りました。(サマータイム7)#k2fact340
2022-08-25 08:17:03来た人、名前を書いてください。抜海の無人駅のノート。日付と名前を書き、そして。ぼくは抜海で生まれた人を知っている。一九四五年三月の東京大空襲のあと、東京の下町から来て抜海の漁師と結ばれた人の孫。いまは札幌に住み、明後日は小中学生とロックダンスの発表会。(サマータイム8)#k2fact340
2022-08-26 12:54:30遠別で生まれた人には何人も会った。小平漁港の魚は昔から食べている。北海道のひだりうえ。見えるのは利尻富士と風力発電の羽根。この夏、震度5の地震はあったが、大きな事件はない。夢のなかの行方不明者。番号13、14、15が待たれている。12のきみは忘れられている。(サマータイム9)#k2fact340
2022-08-27 11:56:45夢のなかで透明人間に翻訳されたきみ。なにか一生懸命身ぶりで伝えようとしているが、反応するのはサファリサッポロのライオンくらいだ。弱虫でいつもお腹をこわしている。おたがい、ひどい目に会ってきたね。でも、涼しい夏がありがたい。名前と番号の下の欄は空白に。(サマータイム10)#k2fact340
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