『虹霓のショータイム』深海特別公演・後編

🎩🌈虹霓のショータイム🌈🎩 @NIJIshow_

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いたい。

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痛い。あつい。苦しい。

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いたい。痛い。いたい痛い。 あつい。体が乾く。くるしい。こわい。

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もどらなきゃ。 しぬ。しにたくない。いそがなきゃ。 うごけ。うごかせ。とまるな。 やすむな。

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───からだ　うごかない。

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「………ねぇ、…ちゃん……」

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自分の声が酷く掠れて弱々しい。

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ポロポロ。はらり。 はら。はらり。 瞼の奥から熱いものが転がり落ちた時、人の気配がした。

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気配は一瞬、ひゅっ、と息を呑んで立ち止まると、早足でこちらへ向かって来た。 砂浜を踏み締める足音がどんどん近づいてくる。

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人間だ。人間が来る。やばい。 逃げようとしても動けない。 来ないでくれ。

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捕まったら何をされるのか。 見せ物にされる？食われる？ 人魚の肉に不老不死の力があるなんて迷信なのに。 今の自分は綺麗な尾鰭も無ければ、泳ぐことすらできないのに。

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死にたくない。こんな所で死ねない。

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やがて足音が止まると、顔を覗き込まれる。 長い髪のシルエットが眩しい日光を遮って、肌が焼ける感覚を幾分か落ち着かせる。 霞んだ視界が少しずつ安定すると、ピンク色の瞳と目が合った。

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「…誰がこんな酷いことを……」 その声は酷く悲しげに動揺していた。

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その直後、声の主に手を翳されたことで反射的に目を閉じる。 しかし予想していた衝撃や痛みは無く、代わりに不思議な感覚に包まれた。

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目を開けると、鮮やかな七色。

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珊瑚礁よりも、自分の城よりも、鮮やかで美しい光。 見た事のないその光は、彼女の手から自分へと注がれていく。

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目線だけで彼女の顔を見上げると、優しく微笑まれた。 不安や痛みが消え、子どもの頃の様な安心感に包まれる。 いつの間にか動かせるようになっていた手を彼女へと伸ばすと、包み込むように握り返してくれた。

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「もう大丈夫よ。 だいぶ色が変わってしまったけれど、尾鰭は元通りだし前よりずっと元気になったはずよ。 それに今の色も、貴方によく似合うわ。」 朗らかで優しい声だった。

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これが、初めて虹を見た日。 初めて君に触れた日。

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「繰り返しお知らせします…。 たった今、トラブルが発生した為、少々お時間を頂きます。 再開まで今暫くお待ちください。」

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アナウンスが終わると、客入り用のBGMが流れ出す。 突然ショーが中断したことで会場は騒然としていた。 しかし、この機転を効かせた放送のおかげで、観客たちは不安を残しながらも少しずつ落ち着きを取り戻していく。

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「ありがとうキュリオ殿」 座長を抱えたイダがアナウンスブースから出てきた彼に声をかけながら、急いで舞台裏を後にする。 その表情にいつもの余裕は無い。