『虹霓のショータイム』深海特別公演・後編

2022年夏イベントオリジナルストーリー
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🎩🌈虹霓のショータイム🌈🎩 @NIJIshow_

途中でシュタインやクニヒサにドアを開けてもらいながら控え室に辿り着くと、ソファに座長を寝かせる。

2022-09-04 21:11:40
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素早く脈を確かめて胸元に耳を当てると、すぐに蘇生術を施し始めた。

2022-09-04 21:11:55
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「座長っ、座長…!起きてくれ、目を開けてくれ…っ!」 呼びかけるイダの声が悲痛になっていく。 突然の事態に舞台袖で控えていた団員たちも次々と集まり、口々に声を上げる。

2022-09-04 21:12:38
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「何があったの?一体どうしたのよ座長ちゃん…」 「ざちょさん…すぐ起きますよね?ノワール…」 「それは…、俺にも分からないよ…」

2022-09-04 21:13:07
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「イ…イダさん!座長さんの脚…!」 異変に気付いたシエラの声に、イダは瞠目する。

2022-09-04 21:13:44
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ピンクに煌めいていた座長の鱗が消失し、太腿の付け根から脚が徐々に分かれ始めていた。 人間に戻りかけている。

2022-09-04 21:14:07
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よく考えればこの2ヶ月、座長は虹を使い通しであった。 「能力の配分に慣れたから大丈夫だ」と本人が豪語していたものの、優しすぎる彼の事だ。 イダが知らない所でも虹を使っていたのだろう。

2022-09-04 21:14:43
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もっと注意しておくべきだった、自分は何年彼の隣に居るんだと奥歯を噛み締める。 しかし、自分を責めている暇など無かった。

2022-09-04 21:15:31
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「っ!…みんな!体に異常は無いか!?息が苦しかったり尾鰭の感覚がおかしい者は!?」 イダはすぐさま団員たちに声をかけた。 皆は顔を見合わせたり、互いの尾鰭や触手を確認し合う。

2022-09-04 21:15:58
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その反応からして今のところ異常は無いようだが、夏の始めにかけた虹の力が弱まっているとすれば、いつ誰が座長と同じ状態になってもおかしくない。

2022-09-04 21:16:40
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此処は海の底。取り返しのつかないことになってしまう。 イダは不安げにどよめく彼らを見回すと、未だ目を覚さない座長に視線を移す。 考えている余地なんて無い。

2022-09-04 21:17:04
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「……、…すぐに海から上がらないと…」 苦し紛れに告げられたイダの言葉に皆が絶句する。 か細い声で唇を震わせながらヴェールが尋ねる。 「そ、そんな…ショーは、どうなっちゃうんですか…?」 「中止するしかない……このままでは全員の命に関わる。」

2022-09-04 21:18:04
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その答えを聞くと、ヴェールはその場に崩れ落ち、顔を覆って啜り泣いた。 色々とショックな出来事が続いて堪え切れなくなったのだろう。

2022-09-04 21:18:30
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「お嬢様…」 そばにいたアリスが、宥める様に彼女の背中を摩る。

2022-09-04 21:19:10
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団員の誰の声でもなかった。 イダが振り返ると、漆黒の中に光る青い瞳と目が合う。 「王子殿…」

2022-09-04 21:20:02
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王子は神妙な面持ちでゆっくりと近づくと、座長を一瞥して尋ねた。 「なぁ。ソイツ、虹使いなんやろ」 「!何故それを…」

2022-09-04 21:20:55
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「俺見たんよ。 ソイツが倒れる直前、うっすら開いてた目が虹色になって…」 彼がオペラグラス越しで見たのは、七色にチカチカと煌めく座長の瞳であった。

2022-09-04 21:21:20
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イダは検査用の小さなライトを取り出すと、座長の瞼を開けさせ光を当てた。 瞳孔に反応は無いが、チカチカと七色の光が瞬いている。 呼吸が止まっても尚、無意識下で力を使い続けているというのか。

2022-09-04 21:21:57
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「一体どうして……」 こんな事は今までに無かった為、イダは困惑する。 ……不意に、膝をついていた彼の尾鰭が明るい光を放つ。 白銀の鱗が淡い虹色に煌めいていた。 「これは…!」

2022-09-04 21:23:04
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「な、なにこれぇー!?」 ライカの大きな声を筆頭に次々と団員たちの驚く声が飛び交う。

2022-09-04 21:23:22
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イダが顔を上げると、皆の尾鰭も同じように淡い七色に輝いていた。 驚くのも束の間、七色の光は徐々に薄くなっていき、彼らの体へ溶け込むように消えていく。 座長から虹の魔法を施された者には、見覚えのある現象だろう。

2022-09-04 21:24:07
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イダは元の色に戻った自分の鱗をもう一度見遣り、ハッと息を呑む。 「……まさか、この為に……」

2022-09-04 21:24:26
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座長は意識を手放す直前、自分の状態を悟り、咄嗟に虹の力をサーカスの団員たちに分散させたのだ。 自分に何かあったとしても、皆にかけた人魚化の魔法だけは解けないように。

2022-09-04 21:25:15
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「でも座長さんは?このままじゃ危ないんでしょ…?」 シエラがイダの服の袖を掴んで不安げに尋ねる。 彼の言う通り、座長の下半身は既に膝あたりにまで分かれてしまっていた。

2022-09-04 21:25:42
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