『H2』国見比呂は最後の一球にどんな思いを込めたのか
- hiyokonokokoro
- 24575
- 12
- 1
- 0
「H2」の国見比呂について考えるとき、最も重要な台詞は、高2の比呂が甲子園で敗れた翌朝に、ヒロインの雨宮ひかりと会話したときのものだと思う。
2022-09-04 02:52:27「おれの初恋は、中二の終わりだったんよ。だから、もう一度、中一に戻れたとしても、おれはまた喜んで英雄におまえを紹介するし、そして、また1年半後に気がつくんだよ。ひかりって、けっこういい女じゃないかって、な」
2022-09-04 02:54:03「おれの思春期が1年半ずれてた。それだけさ。けど、それでも時々思ったりするわけだ。あいつさえいなかったら、なんてな。大好きな親友のことを、一瞬でもそんなふうに思ってしまう自分が嫌で嫌で、確認したかったんだよ。甲子園で、大好きな野球で、戦うことで、あいつの存在を」
2022-09-04 02:55:25国見比呂の初恋の相手は雨宮ひかりだった。しかし、比呂が恋を自覚した頃には、既にひかりは橘英雄と付き合っていて、比呂は諦めるしかなかった。中一のときに橘英雄をひかりに紹介したのは他でもない比呂自身で、橘英雄も大切な親友で、だからこそ比呂は何とも言えない気持ちを抱えることになった。
2022-09-04 19:53:19「後悔してる?ひかりさんを橘くんに紹介したこと」 古賀春華が比呂に聞く。比呂は、少し悩んだ後、 「英雄以外の男を紹介したのなら、ハッキリ後悔できるんだけどな」 と答える。それを聞いた春華は 「そうかな。逆のような気もするけど」 と言い、比呂はまた少し考える。
2022-09-04 20:23:35「親友の英雄をひかりに紹介してしまったから後悔しているんじゃないか」という春華の指摘は、当たっているのだと思う。親友の橘英雄だったから、比呂は諦めるしかなかった。他の男だったら、比呂は簡単に諦めなかっただろう。
2022-09-04 23:07:04雨宮ひかりは、国見比呂のことをどう思っているのか。高校2年の比呂が、初恋の相手がひかりだったことを告白してから何日か経ち、夏休みが終わろうとしていたある日、ひかりは比呂を海に誘い出す。
2022-09-05 00:42:18雨宮ひかりは、自身の初恋が間違いなく橘英雄であったことを伝え、今の自分にとって一番大切なのも英雄であることを伝える。これは、比呂が昔に戻れたとしても、比呂が英雄を紹介しなくても、比呂の思春期が皆と同じ時に来ても、ひかりと結ばれることはなかったということを意味する。 pic.twitter.com/M4FdpoCquF
2022-09-05 11:00:34「雨宮ひかりの初恋の相手は橘英雄」 中一の頃、ひかりは比呂を恋愛対象として見てなかった。そう思うことにしたのだ。これは、そういう「確認」だったのだと思う。確認を終えた瞬間、雨が上がる。ひかりの悩みが晴れるように、空は晴れ、いつもの日常に戻っていく。そんな演出になっている。
2022-09-05 14:38:52実際、雨宮ひかりにとって幼馴染の比呂は弟のようなものだったし、英雄に惚れたのも本当だろう。ただ、比呂があまりにも近くにいたせいで、見えていなかった。これも真実だと思う。
2022-09-06 02:59:591巻4話、雨宮ひかりは弓道をしている最中に唐突に比呂のことを思い出し、的を外す。部活の顧問は矢は自然に離れていくものだと説明し、「恋も同じですよ。矢は自分の気持ち、的は相手のハート。外見に惑わされず心の眼でしっかり見定めるのよ。(中略) 射った後で後悔しても遅いのです」と付け加える。
2022-09-06 04:03:228月16日、雨宮ひかりの誕生日。いつものように、比呂はひかりに誕生日プレゼントを買う約束をする。 「よし、このウマのぬいぐるみだな。必ず買ってやるぞ。試合に負けたときには──な」 そう言って、比呂は必ず試合に勝って、ウイニングボールをひかりにプレゼントするのだった。 pic.twitter.com/vfJ9TaOPdT
2022-09-07 02:00:03最後のバッターを豪速球で三振に打ち取った比呂の小さな背中は、ひかりの目にどう映っただろう。世界でたった一つしかない誕生日プレゼントは、どれほど嬉しかっただろう。 ひかりが比呂に抱いた感情は、あの時のひかり自身気付かなかったが、「恋」と呼ぶべきものだったのではないか?
2022-09-07 02:03:1012巻7話。ロードワーク休憩で比呂と春華が喫茶店に入ると、偶然、そこに英雄とひかりもいて、ダブルデートのような状況になる。そこで、ひかりは懐かしい曲を耳にする。レベッカの「フレンズ」だ。
2022-09-07 14:48:12「どこでこわれたの Oh フレンズ」 レベッカのフレンズは、関係が壊れて別れてしまった元カレへの思いを歌った曲だ。二度と戻れない初恋の日々、彼との思い出を追憶する歌詞が、切なく胸に響く。
2022-09-07 17:24:39比呂とひかりの間にはたくさんの思い出がある。 たとえば、大雪が降った年に、雨宮家の裏庭で大きなかまくらを作ったこと。かまくらはフレンズの「二人の隠れ家」の歌詞とシンクロする。
2022-09-07 19:26:44ひかりは、比呂と春華のキスを目撃してしまい、比呂に英雄との初キスを今さら祝われ、比呂が遠くにいってしまったように感じたのかもしれない。「二度と戻れない」ことを痛感したのかもしれない。ひかりの比呂を思う気持ちが、フレンズの歌詞とシンクロしている。
2022-09-07 23:20:44雨宮ひかりにとって国見比呂は弟のようなものだった。あまりにも近すぎて、中学2年で比呂に身長を追い抜かれるまで気付かなかった。どれほど比呂のことが好きか、自分で気づいていなかった。
2022-09-09 10:25:08ひかりが比呂の試合を観に来ると泣きそうになるのは、比呂を好きだった気持ちを思い出すからだろう。そして、無邪気だったあの頃には二度と戻れないとわかっているから、胸が苦しくなるのだ。 pic.twitter.com/2lq1UDfhyC
2022-09-09 10:52:54「時間は、元には戻らない」 22巻4話。千川高校の甲子園敗退が決まって、後悔を口にしている比呂に春華は呟く。 「わかってるよ」 と、比呂が呟くコマには道行く子供が2人。あの頃には戻れないと繰り返し伝える描写になっている。 pic.twitter.com/cEiQmiKWuO
2022-09-10 05:34:1429巻、比呂は病院で雨宮さくら(ひかりの母)と話す。さくらは「本当に勝ちたいと思ってる?ヒデちゃんに」「負けを認めることでスッキリしようとしてない?」と問いかけ、その言葉に比呂は驚く。
2022-10-18 21:40:1328巻までの比呂なら、英雄に打たれて終わりだったんだと思う。比呂が今まで野球を頑張ってこれたのは、ひかりがいたからだ。ひかりが応援してくれないなら、笑ってくれないなら、比呂は頑張る意味がない。それほど、「ひかり」と「野球」は比呂にとって切り離せないものなのだと思う。
2022-09-13 01:38:44春のセンバツで千川高校が優勝した瞬間、国見比呂は応援席にいる雨宮ひかりをただ一心に見つめる。比呂は古賀春華に「I love you」を告げているが、野球で戦っているとき、国見比呂にとってのヒロインは、やはり雨宮ひかりなのだ。
2022-09-13 04:30:03「負けを認めることでスッキリしようとしてない?」 雨宮さくらは、比呂を幼い頃からずっと見てきて、もう1人の子供のように思っていた。だから何でもお見通しだった。その上で、きっと比呂に後悔を重ねないでほしかったのだと思う。
2022-09-13 04:32:27