『H2』国見比呂は最後の一球にどんな思いを込めたのか

※ネタバレだらけ注意。 あだち充の野球漫画『H2』について考えたことまとめです。 初見で比呂の涙の意味がわからず、何度も読み直しました。 解釈の分かれる作品なので、正解はないと思いますが、自分なりに精一杯解釈しました。 コメントありがとうございます。
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piyo☆ @hiyokonokokoro

29巻、雨宮さくらが亡くなる。そして、比呂とひかりの思い出の空き地もマンション建設で無くなることが決定してしまう。この2つの事件は、比呂とひかりの関係を変えるきっかけになった。

2022-09-16 02:35:31
piyo☆ @hiyokonokokoro

思い出の空き地が無くなると知って、ひかりが空き地を訪れると、そこに比呂が現れる。比呂はひかりに無言でグローブを手渡し、2人はキャッチボールする。 このシーンに一切会話はないが、母を亡くしたひかりをどうにか励まそうとする比呂の優しさがよく伝わってくる。

2022-09-16 04:09:42
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29巻7話、ひかりは比呂を映画に誘う。つまらない映画の愚痴を言って、デパートで服や雑貨を眺めて、公園で一休み。そうして別れ際、ひかりは不意に比呂にキスをする。 「比呂と幼馴染でよかった。さよなら」 ひかりは目に涙をうかべて、比呂に別れを言う。 pic.twitter.com/t8igGNWbbH

2022-09-17 00:23:39
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「比呂と幼馴染でよかった。さよなら」 これは幼馴染という関係性をも終わらせようという別れの言葉だ。恋人の英雄がいながらも、比呂への思いを断ち切れず、ひかりは罪悪感を感じていた。ひかりが比呂に別れを告げたのは、日に日に膨らむ比呂への思いを止められなくなる前に、諦めるためだと思う。

2022-09-17 01:01:54
piyo☆ @hiyokonokokoro

比呂は突然ひかりに別れを告げられて困惑する。そして「さよなら」の意味を考えるようになる。

2022-09-17 03:23:56
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「その道を行けっていってるのよ、自分が力一杯がんばれる道を──。みんな探してるのよ、そういう道を──。」 古賀春華の話を聞きながら、比呂は「さよなら」の意味を考える。このシーンの月は、暗闇を照らす道標を示しているように感じられる。 pic.twitter.com/RoX2ECo1LF

2022-09-17 18:03:16
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比呂は英雄との約束を果たすために野球を頑張ってきた。その後のことは何も考えてなかった。古賀春華が語った夢は、暗闇を照らす月のように、きっと比呂の新しい道標になるのだろう。 8巻7話と同じように29巻8話でも月をバックに飛行機が飛んでいる。意図して重ねられている。

2022-09-17 21:04:01
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30巻7話、比呂は雨宮父と話す。雨宮父は20年前さくらと大恋愛して結婚したこと、さくらがいなければ生きていけないと本気で思っていたこと、比呂には長生きする嫁をもらってほしいことを語る。そして、比呂の「後悔してるの?」との問いかけに、雨宮父は「全然」と即答する。

2022-09-18 02:00:08
piyo☆ @hiyokonokokoro

比呂は雨宮父が去った後、空を見上げる。 「そうか……」は「また、あいつの誕生日がくるのか……」に繋がる箇所だが、雨宮父の言葉を聞いて「そうか……」と何かを納得したように読めるようになっている。

2022-09-18 02:15:34
piyo☆ @hiyokonokokoro

比呂は、雨宮父が気丈に振舞っているのを見て、誰もが「後悔」を抱えながらも、日常を強く生きていることを理解したのかもしれない。あるいは、雨宮父が雨宮さくらと歩んできた人生を「後悔」したくない気持ちに、共感したのかもしれない。

2022-10-21 23:20:38
piyo☆ @hiyokonokokoro

30巻9話、比呂は春華に感謝を伝える。 「感謝してるから。おまえがいてくれたおかげで、千川に入学したことを後悔しなくてすんだんだから。古賀春華がいてくれたから──、がんばれるんだよ」 そう口にしつつも、比呂は雨宮ひかりのことを考える。

2022-09-19 01:12:20
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31巻、旅館の風呂場で比呂は柳と話す。柳は言う。 「(古賀のことは)もちろん(好きだ)。──でも、恋人にしたいとか、つきあいたいとか、そういうのとはちょっとちがうかもしれない。彼女が国見くんと仲よくしてるの見るの、嫌じゃないし、逆に彼女の楽しそうな顔見ると、うれしくなったりするからね」

2022-09-19 03:03:27
piyo☆ @hiyokonokokoro

比呂は「それってさァ」と何か言いかけてやめる。言いかけてやめた言葉は、繰り返す形だが、サブタイトルの「好きなのか?」だろう。 柳の「好き」は比呂の思っている「好き」とは違ったものだ。このシーンで大事なのは「好き」にも色々な形があると比呂が知ったということだと思う。

2022-09-19 03:51:54
piyo☆ @hiyokonokokoro

10巻5話。古賀春華は言う。 「友達のままだったら楽しかったのに。真剣に好きになればなるほど、つらいことや傷つくことが多くなる。それでも、やっぱり人は恋愛をするのよね」 つらいことや傷つくことを乗り越えて、人は大人になっていく。「H2」はきっとそういう物語だ。 pic.twitter.com/A3Fho9733A

2022-09-19 23:57:17
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33巻。甲子園準決勝を前にして、懐かしい人達から激励電報が届く。このシーンでは、電報を送ってきたキャラクターが登場する巻数が書いてあり、読み直してもらいたい意図を感じる。坂上巡査の登場する5巻は、特に読み直すべきなのだろう。

2022-09-21 05:30:44
piyo☆ @hiyokonokokoro

5巻6話、ひかりに「比呂もプロに行きたいの?」と聞かれた高一の比呂は「どうかな」と言葉を濁す。その頃の比呂は、楽しく野球できればそれでよかったし、有名になるつもりもなかった。比較すると、比呂が変わっているのがわかる。

2022-09-22 00:41:51
piyo☆ @hiyokonokokoro

5巻7話。この回では比呂とひかりが互いにどういう存在なのか示されている。ひかりが眠れない夜を過ごしたことで、ひかりの中で比呂の存在が弟ではなくなっているとわかる。

2022-09-23 23:41:13
piyo☆ @hiyokonokokoro

33巻。準決勝前日の夜、比呂はひかりに会いにいく。 なぜ、比呂はひかりに会いにいったのか。それは「さよなら」の意味を確認するためだったと思う。中途半端な気持ちでは投げられないと思ったのだろう。今までと同じように会ってくれて、一言応援をもらって、きっとそれだけでよかった。

2022-09-26 02:38:14
piyo☆ @hiyokonokokoro

比呂は、ひかりと「さよなら」したくなかった。幼馴染のままでいいから、比呂はひかりのそばにいたかったのだと思う。比呂は今だけでもいいから「幼馴染」として応援してくれとひかりに言う。

2022-09-26 02:39:25
piyo☆ @hiyokonokokoro

「がんばれ、負けるな」 ひかりは言う。何度も言葉にするたびに、比呂への思いが溢れる。夜空に打ち上げ花火が上がり、花火と呼応するように、ひかりの感情も爆発する。比呂への恋心が、打ち上げ花火のように一瞬眩く光る。 pic.twitter.com/owuDI7Yrr4

2022-10-03 03:20:32
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piyo☆ @hiyokonokokoro

雨宮ひかりは国見比呂が好きだった。でも、比呂に対する感情が「恋」だと気付く前に、英雄を選んでしまった。英雄に恋した気持ちも本当だ。ただ、比呂を好きだったと後悔するたびに、英雄に罪悪感を感じている。誰も悪くはない。ただ、タイミングが合わなかったのだ。

2022-10-03 03:22:00
piyo☆ @hiyokonokokoro

「がんばれ。負けるな」 雨宮ひかりは、きっと一生分の「がんばれ」を比呂に伝えたのだと思う。2人が別々の道をいくとしても、戻れない過去を後悔して胸がつぶれそうになっても、乗り越えられるように。後悔してないと言える自分に変わっていけるように。願いをこめて、自分に言い聞かせるように。

2022-10-03 03:25:05
piyo☆ @hiyokonokokoro

「……ゴメン」 泣いたひかりに比呂は謝る。1年前、比呂がひかりに告白してしまったあの日から、終わりは始まっていた。比呂の「ゴメン」は今ひかりを泣かせたからだけではない。自分が思いを吐露したせいで、ずっとひかりを悩ませてしまったことへの謝罪だったと思う。

2022-10-03 03:28:15
piyo☆ @hiyokonokokoro

旅館に戻った比呂は、「明日の試合後に、ひかりに比呂か自分かをもう一度選ばせる」と英雄が言っていることを野田から聞かされる。ここで、比呂はひかりが泣いていた理由をはっきりと理解し、闘志を燃やす。そうして、明和一との準決勝が始まる。

2022-10-03 03:53:10
piyo☆ @hiyokonokokoro

「知ってるか?おれは、ひかりのことが大好きなんだぜ」 比呂は雨宮ひかりのことが大好きだ。初恋だった。互いに好き合っていた。でも報われなかった。誰も悪くはない。ただ、タイミングが合わなかったのだ。

2022-10-03 04:05:21