『H2』国見比呂は最後の一球にどんな思いを込めたのか

※ネタバレだらけ注意。 あだち充の野球漫画『H2』について考えたことまとめです。 初見で比呂の涙の意味がわからず、何度も読み直しました。 解釈の分かれる作品なので、正解はないと思いますが、自分なりに精一杯解釈しました。 コメントありがとうございます。
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piyo☆ @hiyokonokokoro

恋だったから、互いに「男女」を意識してしまったから、ひかりと比呂は「さよなら」しなければいけなくなった。「家族」や「姉弟」だったら、別れる必要はなかった。比呂はひかりに未練があり、変わらない関係でいたかったが、ひかりは英雄への罪悪感から、関係を変える決意をした。

2022-10-03 04:16:17
piyo☆ @hiyokonokokoro

比呂は、ひかりのことが大好きだからこそ、ひかりの気持ちを一番に考えた。ひかりが一番大切に思っているのが橘英雄だと知っていて、英雄から奪うようなことはできなかった。ひかりをずっと傍で見てきた比呂だから、わかっていた。つらい思いをして、傷ついて、ひかりへの気持ちを諦めた。

2022-10-03 04:21:31
piyo☆ @hiyokonokokoro

それなのに、どれほど雨宮ひかりが橘英雄のことを好きなのか、英雄自身がわかっていなかったから、比呂は腹が立った。 「知ってるか?おれは、ひかりのことが大好きなんだぜ」 挑発することで英雄に対抗心を燃やさせ、英雄にとって雨宮ひかりがどんなに大切な存在か気付かせようとした。

2022-10-03 04:49:59
piyo☆ @hiyokonokokoro

準決勝の試合中、比呂は異常な疲れを感じる。今までの比呂は、雨宮ひかりの応援を力に変えて頑張ってきた。しかし、この試合は、ひかりに応援してもらえないことを知っている。だから疲れたのだと思う。

2022-10-06 12:18:18
piyo☆ @hiyokonokokoro

比呂は何度も明和一の応援席を睨みつける。今日の比呂は、雨宮ひかりのヒーローと戦う悪役だった。比呂は、雨宮ひかりが明和一の応援席にいる状態で勝たなければいけなかった。そうすることで、ひかりがいなくても大丈夫だと、ひかりを必要としているのは自分ではないと、ひかりに伝えようとした。

2022-10-07 15:22:27
piyo☆ @hiyokonokokoro

9回裏に入る前、比呂はベンチの壁に雨宮さくらの写真を貼る。 「負けを認めることでスッキリしようとしてない?」 生前、雨宮さくらが言っていた通り、比呂は負けるつもりだったのだと思う。英雄に負けを認めることで、それを言い訳にして、スッキリひかりへの未練を捨て去るつもりだった。

2022-10-08 16:17:38
piyo☆ @hiyokonokokoro

しかし、ひかりの涙を見てしまい、英雄に今更なことを言われたせいで、比呂は勝たなければいけなくなった。英雄に勝ってしまえば、英雄を言い訳に使うことはできず、ひかりへの未練を自分自身で断ち切らなければならない。それは比呂にとって、とてもつらいことだった。

2022-10-08 16:44:11
piyo☆ @hiyokonokokoro

比呂は勝たなければいけなかった。 勝った方がひかりを手に入れられるという英雄の論理を否定するため。ひかりが本当に大切に思っているのは英雄だと、英雄に伝えるため。自分はひかりがいなくても大丈夫だと、ひかりに伝えるため。そして、ひかりに恋したことを後悔で終わらせないために。

2022-10-08 18:02:13
piyo☆ @hiyokonokokoro

「その融通の利かねえバカ正直さに──雨宮ひかりはホレたんだ」 9回裏2アウト、英雄との3回目の勝負。カウント2ストライク1ボールで4球目、比呂はスライダーのサインを出していたが、実際に投げたのはド真ん中のストレートだった。ストレートを待つ英雄に対して、比呂は逃げずに真っ向勝負をした。

2022-10-10 15:02:08
piyo☆ @hiyokonokokoro

英雄を三振に奪った比呂は、マウンドで涙を流す。最後の一球は、雨宮ひかりへの未練を断ち切るために投げた一球だった。比呂はひかりと出会い、ひかりと共に育ち、ひかりに恋をした。恋は報われなかった。本当に雨宮ひかりのことが大好きだったから、つらくて、悔しかったのだと思う。

2022-10-11 01:32:08
piyo☆ @hiyokonokokoro

「あんな球……二度と投げられねえよ」 と比呂は言う。 「投げさせられたんだよ。だれかに……な」 野田が言う。

2022-10-11 11:39:20
piyo☆ @hiyokonokokoro

だれかとは、だれか。ライバルの「橘英雄」がいたから比呂は最高の球を投げることができた。だから英雄だと言う人もいるだろう。比呂を息子のように思っていた「雨宮さくら」が比呂を勝たせるために天国からパワーをくれたという見方もできると思う。

2022-10-15 10:11:12
piyo☆ @hiyokonokokoro

ひかりへの思いを断ち切るために、比呂は英雄と戦っていた。ひかりへのまっすぐな思いが形になってストレートになった。だから投げさせてくれた誰かは「雨宮ひかり」というのも正しいと思う。

2022-10-15 10:21:37
piyo☆ @hiyokonokokoro

だれかとは、だれか。逃げのスライダーではなく真っ向勝負のストレートを投げる勇気をくれたのは、だれか。ひかりとの未練を断ち切り、前に進むため、比呂の背中を押してくれたのは、だれか。比呂に勝ってほしいと心から願ったのは、だれか。私はそれは、「古賀春華」だったと思いたい。

2022-10-15 10:24:47
piyo☆ @hiyokonokokoro

だって「H2」はラブコメなのだ。ヒロインがヒーローに力を与えてくれる青春ラブコメなのだ。最後の一球を投げる瞬間、比呂は雨宮ひかりのヒーローと戦う悪役ではなく、古賀春華のヒーローだったのだと思う。

2022-10-11 11:59:01
piyo☆ @hiyokonokokoro

雨宮ひかりは、比呂が英雄を三振に奪るのを見て涙を流す。ひかりは比呂との別れを実感すると同時に、比呂が新しい夢に向かって歩き出したことを感じ取ったのだと思う。ずっと持っていた罪悪感から救われたような気がしたのだと思う。ひかりの涙は、そんな「安堵」の涙だったのではないだろうか。

2022-10-14 19:08:32
piyo☆ @hiyokonokokoro

「その涙が……決して勝利の涙ではないことを、おれは知っていた。そしてたぶん、もう一人……」 このモノローグは比呂ではなく、野田だと思う。野田は、比呂の涙が勝利の涙ではないことを察することができた。そして、比呂の涙が勝利の涙ではないことを雨宮ひかりも知っていると思った。

2022-10-14 19:21:42
piyo☆ @hiyokonokokoro

試合後、ひかりは英雄に言う。 「最初からないのよ。選ぶ権利なんか……」 比呂はひかりを奪うために英雄と戦っていたわけではなかった。ひかりは比呂の涙を見て、比呂が未練を断ち切って前に進もうとしているのがわかったのだと思う。ひかりが比呂を選ぶなんて最初からできなかった。

2022-10-14 11:19:59
piyo☆ @hiyokonokokoro

「だれより雨宮ひかりが必要なのは、このおれだ」 英雄も比呂との勝負で大切なことに気づいた。英雄はひかりに、自分の気持ちをごまかさず、正直に伝えられたのだと思う。

2022-10-14 14:29:37
piyo☆ @hiyokonokokoro

比呂は、旅館でゆずの「夏色」を歌っていた。「夏色」は明るい曲調だが、悲しんでいる誰かを励ます曲だ。比呂はひかりとの別れが悲しくて、自分を励ますためにこの曲を選んだ。元気なように見えるが、実際はかなり落ち込んでいたのだと思う。

2022-10-14 15:01:38
piyo☆ @hiyokonokokoro

「大きな五時半の夕やけ、子供の頃と同じように海も空も雲も僕等でさえも染めてゆくから」 漫画ではこの歌詞は書かれていないが、比呂はひかりと日が暮れるまでキャッチボールしたあの頃を思い出しながら、この曲を歌ったのだと思う。

2022-10-15 11:35:54
piyo☆ @hiyokonokokoro

比呂にとって「夏」といえば「雨宮ひかり」だ。ひかりと別れたが、もう少しだけ、ひかりのことを思っていたかったのかもしれない。ひかりと過ごした日々を思い出しながら、あるいは、ひかりとありえたかもしれない未来を想像しながら、比呂は「夏色」を歌ったのだと思う。

2022-10-15 11:44:02
piyo☆ @hiyokonokokoro

ラストシーン。比呂の投げた紙ヒコーキが大空へと飛んでいく。ひかりへの未練にけじめをつけた比呂が、古賀春華と共に夢に向かって進みだしたことを示す美しいラストだったと思う。

2022-10-14 20:28:13
piyo☆ @hiyokonokokoro

「最初からないのよ、選ぶ権利なんか」 雨宮ひかりは言っていたが、本当になかったのか?と思うと、切ない気持ちになる。比呂はひかりのことが本当に好きだったし、ひかりも比呂のことが好きだった。2人がもう少し素直になれていたら、付き合えたんじゃないかと思ってしまう。

2022-10-17 12:30:45
piyo☆ @hiyokonokokoro

両想いだったのに付き合えなかったのは、タイミングが悪かったからだ。橘英雄との関係を壊せば、古賀春華との関係を壊せば、もしかしたら2人は付き合えたかもしれない。でも、2人は戻れない「過去」ではなく、見えている「今」を大切にしようとした。だから、この結末になったのだと思う。

2022-10-17 12:51:05