茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第2911回「硝子戸の中に人間の真実がある」

1
茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート2911回をお送りします。文章はその場で即興で書いています。本日は、感想です。

2022-09-15 07:08:45
茂木健一郎 @kenichiromogi

夏目漱石に『硝子戸の中』というエッセイがあるけれども、その最初の方で、ヨーロッパで第一次世界大戦が始まっていることに(そのような表現は使っていないけれども)触れていて、でも、そのことはあまり触れないで身の回りのことを書き綴っている。

2022-09-15 07:09:46
茂木健一郎 @kenichiromogi

世の中が騒々しかったり、いろいろ動きがあったりしても、そのことと関係なく、「硝子戸」の中の、自分のまわりのことを書くというのは一つの批評性で、そのようにして漱石が書くことは切れば血が出るようなことで、相談にくる女のひとの人生もまた重くずしんと響く。

2022-09-15 07:10:50
茂木健一郎 @kenichiromogi

どの時代も、世の中はあれやこれやと騒々しいけれども、そのようなことに関心を持つのはもちろんよいとしてそのようなことで頭がいっぱいになってしまうというのは村上春樹さんが言っていた「安酒」のようなもので、へんな方向に流されていってしまうのだと思う。

2022-09-15 07:11:54
茂木健一郎 @kenichiromogi

漱石が、もちろん、欧州の大戦に興味がなかったりその事象の本質を理解していなかったはずもなく、そのことには少しだけ触れて、あとは「硝子戸の中」の私秘的なことばかりに思いを巡らせているのは、心に残る態度だなあと思う。

2022-09-15 07:13:24
茂木健一郎 @kenichiromogi

椎名誠さんの『哀愁の町に霧が降るのだ』が大好きなのだけれども、一連の青春私小説シリーズで、当時は学生運動はなやかなりし頃だったのに、そのことに一切触れないのは鋭利な批評性だなあと初読のずっとあとで思ったことがある。硝子戸の中に人間の真実があるということは時々思い出すのが良い。

2022-09-15 07:15:01
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート2911回「硝子戸の中に人間の真実がある」をテーマに5つのツイートをお届けしました。

2022-09-15 07:15:23