学校は不思議な場所だ。制服姿で金槌を持ち微笑むとそれは鈍器に代わり、痛いR-15の香りが漂う。「こら、変な遊びすんな」憧れの先生が問題視されている僕の頭を日誌でこつんと叩いた。「変な気なら起きてるよ」「そうか」照れて言った僕の顎を先生が掬い日誌で覆う。特別な気分に僕は酔いしれた。
2011-10-01 03:13:33冬の寮で僕は禁じられている携帯をそっと取り出し彼の声を再生した。電話をする勇気がない。なんだか恥ずかしいのだ。彼の声の心地よさにうとうとすると携帯が震えた。『何してた?』彼の声が耳から僕の体内にまた溶け込んだ。「ヒーリング」「何それ?」彼に説明を求められた僕は頬を真っ赤に染めた。
2011-10-02 03:06:19「うわっ!」呪文に失敗した僕は荒ぶる空飛ぶ絨毯に必死にしがみついていた。山を越え海を越え陸が見えてきた。「止まれ」叫び声がし男が僕を助けてくれた。男は本でしか見たことない憧れの魔法使いだ。「魔法は良く知らなくても私のことは知っているようだね」微笑んだ男に見蕩れた僕は言葉を失った。
2011-10-03 03:07:55「異世界って言うと中世を想像するな。魔法で戦うんだ」僕が夢一杯に語ると彼が笑った。「お前が魔物とか?」「無論一緒に冒険してくれるでしょ?鎧似合いそうだし」僕は小首をかしげ彼を見つめた。「お前のナイトは俺だからな。任せろ」彼が強く僕を抱きしめるとどこへでも行ける気がした。
2011-10-04 03:32:54洗濯機の中に奴の服が回っている。これは一体どういう事だ。昨晩の飲み会の記憶が思い出せない。なぜが奴も裸で僕と同じベッドで寝ていた。余計な事を考えると尻まで痛い気がしてくるから不思議だ。「風に当たって頭を冷やそう。さて奴をどうやって起こそうか?」最初にした妄想に僕は思わず赤面した。
2011-10-05 03:09:32急に降ってきた雨で井戸の手入れを中断し家に入った。「滑って落ちたら大変だもんな」「それ最高」「は?」「お前と二人で最後ならいいな俺」窓辺で雨の強まる景色を見ながら彼がぽつりと言った。「僕は助けを呼ぶぞ。生きて一緒がいいからな」「そうだな」ハッとし振り返った彼が僕を強く抱きしめた。
2011-10-06 03:57:48空気が美味しいと知ったのは僕が妖精から人間になってからだ。「行こうか」「はい」握る手が温かい。時の流れを感じ彼と共に老いて行く。触れるもの全てが体に影響を与えるなんて今まで知らなかった感覚だ。時を感じるとはなんて贅沢なことだろう。全てが嬉しい。僕は彼と生きている実感を噛みしめた。
2011-10-07 03:08:03「これで最後だな。さてもう一件」「何矛盾した事言ってるんだよ全部の動物診終わったろ。帰るぞ」立ち去ろうとした僕の腕を彼が引いた。「お前が残ってる」「はぁ?」「と言うか疲れたから俺を癒せ」「僕は愛玩動物じゃない。この野獣!」白衣を脱いだ彼の胸筋に筋が浮かび上がると僕に襲いかかった。
2011-10-08 03:07:30男を狙う残害事件が続いた。奴は夜必ず現れる。僕はおとり捜査で現場付近をふらついていた。急に体を奪わられるとトイレに引きずりこまれる。抵抗する間もなく口を塞がれた。えっ、キス?僕は男の顔を見て唖然とした。「仕事でも嫌だ」苦痛に満ちた顔で同僚の彼が僕を抱きしめた。
2011-10-09 03:03:36雨に無数の残骸が濡れる。凄惨を極めた戦場に俺と彼だけが生き残った。「やっと二人きりだ」「そうだな」背中を合わせ座りお互いによりかかった。西の空に日が沈む。「明日は俺らの夜明けだな」「ああ」彼と切り開いた未来はどんな世界だろう。目を閉じ彼の熱を背中で感じると久しぶりの眠りに落ちた。
2011-10-10 03:07:08彼は動物達を優先して助けた。「何で俺が最後なんだよ」「一番大事だから」「それ矛盾してる」俺の頬の煤を拭いながら彼が喋り出した。「お前を先に助けたら動物が気になって騒ぐだろ」「そうだな」「私は猛獣使いだ。お前のことはよくわかっている」彼は微笑むとしおらしくなった俺を強く抱きしめた。
2011-10-11 03:04:18文化祭で南国メイドカフェをやることになった。男子校でいくら潤い不足だからってビキニにパレオは恥ずかしい。「脇役に徹するはずだったのに」嫌がる僕の手首に彼がリボンを巻いた。「可愛いぞ。やるからには頑張れ」彼に勇気をもらった僕は精一杯の笑顔で微笑んだ。
2011-10-12 03:04:08