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「CRITICA」6号をめぐって

心覚えまでに。
書籍 文学 評論 ミステリ 探偵小説研究会
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千街晶之 @sengaiakiyuki
(1)探偵小説研究会の同人誌「CRITICA」6号の内容についてまとめて呟きます。かなりの長文になります、すみません(混乱を避けるために、ツイートの文頭に番号をふっておきます)。今回、私はドラマ『熱海の捜査官』『SPEC』についての文章を寄稿。
千街晶之 @sengaiakiyuki
(2)波多野健氏の「写楽探求」は長年の蓄積をもとにした力作論文で、『写楽 閉じた国の幻』を既読の方は必読。小田牧央氏の「奇想の現在」は新本格における「幻想」観の変遷と現状を追究。鷹城宏氏「モルグ街の解剖」は「モルグ街の殺人」冒頭に掲げられたサー・トマス・ブラウンの文章から遡る、
千街晶之 @sengaiakiyuki
(3)いかにも鷹城氏らしいペダンティックな論考……等々、(身内褒めになってしまうけれど)読み応えのある文章がいろいろ載っていると思うのだが、今回、一番話題を呼びそうなのは市川尚吾氏の「極私的評論論」。実質的には限界小説研究会批判と言っていい。
千街晶之 @sengaiakiyuki
(4)市川氏は限界研の渡邉大輔・藤田直哉・小森健太朗各氏を名指しで批判、その上で限界研そのもののスタンスに異を唱えているのだが、巻末の「執筆者後記」で私は「かといって、市川氏の意見のすべてを肯定出来るかというと、それはまた別の話なのだが」と記しておいた。
千街晶之 @sengaiakiyuki
(5)このあたりは説明が必要かと思うので……。まず市川氏の小森氏批判はほぼ全面的に同意見。小森氏は今年の本格ミステリ大賞の予選会で、芦辺拓氏の『綺想宮殺人事件』について、「これがその年の代表的五作に選ばれるということは、現代思想の水準からみて、あるいは対外的に、
千街晶之 @sengaiakiyuki
(6)本格ミステリのジャンルが、全く尊敬に値しないものになっていることを示している」と述べた。小森氏のスタンスからして、『綺想宮』を絶対肯定し得ないであろうことは理解できるが、大賞候補に残さない根拠に対外的な「尊敬」を持ってくるのには呆れ返った。なんという浅薄な権威主義。
千街晶之 @sengaiakiyuki
(7)「CRITICA」5号を既読の方ならご存じの通り、私は『綺想宮』に批判的である(評価する部分もあるが)。その『綺想宮』について、芦辺氏に真っ先に「お叱り」を寄せたという小森氏が、あの作品とどのように本格的に向き合って批判するか、私はかなり期待していたのだけれども、
千街晶之 @sengaiakiyuki
(8)『本格ミステリー・ワールド』に載った小森氏の原稿は全くの期待外れだった(はっきり言って、「CRITICA」5号掲載の拙稿の足元にも及ばない水準である)。更にひどいのが本格大賞予選会でのコメントだ。「対外的には異論が出る可能性が高い」くらいに抑えておけばいいものを、
千街晶之 @sengaiakiyuki
(9)何故対外的な「尊敬」が候補作の条件となるのか。こういった言い回しに、小森氏の無自覚な権威主義と俗物性が露呈している。「『綺想宮』を候補に残したら、対外的な(現代思想方面での)自分の立場はどうなってしまうのか」が本音だったと言われても仕方があるまい。
千街晶之 @sengaiakiyuki
(10)その点で私は市川氏の批判に同意する。ただし、小森氏の批判のせいで『綺想宮』の評価が逆に上がった云々のくだりは、言いたいことはわかるものの、予選委員の意見としては如何なものか。悪く取れば、予選委員の顔ぶれや、相手の出方次第で意見を変えるとも読めてしまう。
千街晶之 @sengaiakiyuki
(11)渡邉大輔氏については、正直なところ市川氏の引用からだけでは、諸岡氏の本を残すことに反対した氏の真意がいまひとつよくわからない。また渡邉氏の評論家としての「出力」能力については、(現代思想系の難解な専門用語は殆ど読みとばすせいかも知れないが)あまり気にしたことはない。
千街晶之 @sengaiakiyuki
(12)とはいえ市川氏が引用した部分は、せめて「具体的に」とか書かなければいいのに……とは思う。いかに渡邉氏が悪文もまた評論の伝統と主張しても(それはそれで正論ではある)、ここを引用されたら自己弁護は難しい……という部分をわざわざ見つけてくる市川氏の底意地の悪さに笑った。
千街晶之 @sengaiakiyuki
(13)藤田直哉氏の震災直後のツイートへの批判については、その後の氏の活動を押さえた上で行うべきと思うので、市川氏の批判は残念ながら揚げ足取りの水準でしかないと判断する。藤田氏の言説の問題点は別にあるので、むしろ市川氏がそこを指摘しなかったのが不思議。
千街晶之 @sengaiakiyuki
(14)藤田氏は『サブカルチャー戦争』巻末の「小説リスト」で、平山夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』が東野圭吾『容疑者Xの献身』に続いて『このミス』一位になったことについて、「『容疑者X』と本作を連続で高く評価したミステリファンは、ホームレスは好きに殺してよいもの、
千街晶之 @sengaiakiyuki
(15)という意思表示をなしたに等しい」と記している。失礼を承知で言うが、仮にもプロの批評家の文章を読んで、これほど「愚鈍」という印象を受けたのは初めてのことだ。氏が言っているのは『独白する』の巻頭の「C10H14N2(ニコチン)と少年―乞食と老婆」のことだと思うが、
千街晶之 @sengaiakiyuki
(16)藤田氏はこの小説を読んで、作者が「ホームレスは好きに殺していい」というメッセージを発し、読む側も皆そのように受け取ったと本気で感じたのだろうか。しかも、『このミス』投票者が『独白する』を評価した理由はひとそれぞれだろうに、一括りに差別主義者扱いしたその姿勢は、
千街晶之 @sengaiakiyuki
(17)SFプロパーの自分を安全圏に置き、他ジャンルをひとまとめに差別することで精神的優位を味わう振る舞い以外のなにものでもない。藤田氏の文章はそんなに沢山読んではいないけれど、たぶんSF評論家としては実力があるのだろう。しかしその筆がひとたびSF以外に向けられた時、
千街晶之 @sengaiakiyuki
(18)こんなにも悲惨な結果になってしまう。そもそも『独白する』は『SFが読みたい!2007年版』では国内11位である。藤田氏の論法でいけばSFファンにも「ホームレスを好きに殺していい」と考える人間が少なからずいることになるけれど、氏はその点はスルーしている。
千街晶之 @sengaiakiyuki
(19)万が一、藤田氏が「ほらほら、ミステリの連中がまたホームレスの迫害を正当化してますぜ、やっぱり笠井先生の言うことは間違ってないですよ、笠井先生万歳!ワンワン」と媚を売るべくこの文章を書いたのなら、逆説的な言い方になるがまだ救いはある。それは単なる党派的振る舞いにすぎない。
千街晶之 @sengaiakiyuki
(20)しかし、藤田氏が本気で『独白する』から「ホームレスは好きに殺していい」というメッセージしか読み取れなかったのだとすれば絶望的である。「小説をちゃんと読める」という批評家として最低限の資質さえ藤田氏は持ち合わせていないということになるからだ。
千街晶之 @sengaiakiyuki
(21)笠井氏の『容疑者X』批判の論法は、ある程度ミステリを読み込んでいる人間にとっては違和感だらけであり、同世代の共感を集めている以外に賛同者が殆どいないので、その影響力の大きさについて私は小さく見積もっているところがあった(実際、笠井・小森両氏を除く限界研会員の中では
千街晶之 @sengaiakiyuki
(22)最もミステリ通である蔓葉信博氏は、笠井氏の意見に賛同していない)。しかし、ミステリに免疫がなく、深く考えずに笠井氏の意見を真に受けてしまうナイーヴな「劣化コピー」的批評家が出現している現状を見ると、やはり笠井氏の『容疑者X』批判は罪深いとつくづく思う。
千街晶之 @sengaiakiyuki
(23)あまりに長文になったので、続き(市川氏の意見で最も肯定し難い部分への批判)は日を改めて。
渡邉大輔 @diesuke_w
某氏に対する反論第一弾を書きました。ご興味があれば。 http://t.co/P8WQ9zlf
渡邉大輔 @diesuke_w
昨夜の拙ブログでの市川尚吾氏への反論とも絡めて、「極私的評論論」の件で千街晶之氏が応答してくださっています。とても生産的な指摘だと思いました。反論の後半、間もなくブログにあげます。
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