『機動戦士Ζガンダム』感想

河樹　彬 @e_rewhon

ここ数日唐突に『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』についてつぶやいてる。これは『仮面ライダーBLACK SUN』という変な作品（褒め言葉です）を観たあおりで、『Zガンダム』というこれまた変な作品のことを思い出したからであり……とか弁解しても、全人口の0.001％の人の共感ですら得られる気がしない

河樹　彬 @e_rewhon

が、続ける。 Zは変な作品だった。小学生には全然分からない。分かりにくい作品だ、と今でも思う。ただ、「なぜ分かりにくいのか」という事だけは分かってきた。半分ぐらいは中学時代に観た逆シャアのおかげだ。あれでシャアという人が少し分かった。

河樹　彬 @e_rewhon

Zはシャアの物語だ。EDクレジットは主人公カミーユを差しおいて、シャアがトップ。シャアのアップで第1話が始まり、シャアの失踪（主人を失った百式のカット）で最終話が終わる。せめて、この点がもっと前面に出ていれば、少しは分かりやすくなるのだが。

河樹　彬 @e_rewhon

半ば余談だが、この点、小説Zはアニメより更に分かりにくい。シャアの影が薄い。カミーユ中心に物語が進む。そのせいですっかり焦点がボヤケてる。小説Zは逆説的な形で、誰が物語の中心にいたのかを示してしまった。で、本題に戻ろう。

河樹　彬 @e_rewhon

Zは分かりにくい。1stは分かりやすく、奥深かった。一つにはシャアとアムロという対照的な人間がぶつかっていたからだ。これに対してZはどうか。私には主要キャラが全員シャアっぽく見えるのだが、どうだろう。

河樹　彬 @e_rewhon

たとえば主人公カミーユは明確にシャア側の人間だ。親を殺され、親を殺した組織と敵対する。自分の名前が気に入らない。そんな彼がシャアの名を忘れたがるシャアに反発しつつ、シャアの弟分としてシャアを助ける。 人は変われる？　カミーユが隣にいればシャアも自他を許せるようになるかも知れぬ。

河樹　彬 @e_rewhon

次にZのラスボス、シロッコはどうか。世俗への超然とした態度、アコギなことも躊躇せずに行う鬼畜メンタル、女性の扱い方といい、サラをめぐる三角関係といい、まるっきり「迷いをなくしたシャア」「ルサンチマンのないシャア」だ。少なくともアムロ側の人間ではない。

河樹　彬 @e_rewhon

ならば、ハマーンは……と、言うまでもない。シャア推しが過ぎて、シャア化しちゃった犠牲者にしか見えない。シャアの論理でシャアを見て、シャアを見下しながら求めてる。こう見ていくと、Zって人を見下すのがデフォのキャラが多すぎる。この作品の暗さの大半は、シャアがもつ暗さだと思う。

河樹　彬 @e_rewhon

補足。富野御大も放映当時《ファンはカミーユをアムロの２番手だと思っているみたいだけど…本質的に違うキャラクター》《シャアを先輩とするカミーユ》と明言してる（NT創刊号）。因みに《カツがアムロの２番手》《アムロの明確なアンチテーゼになるように、カツを描いてみたい》とも。補足終わり。

河樹　彬 @e_rewhon

Zにもアムロ寄りなキャラはいる。が、尽く惨めな「事故死」を迎えてる。カツは言わずもがな。主人公のライバル（だった筈）のジェリドも、根は生真面目で努力家で素直なエゴの人だったのに、カミーユに引っ張られたばっかりに、似合わぬ復讐の道に自他を巻きこんだ挙句、あの理不尽死。

河樹　彬 @e_rewhon

「ティターンズは力だ」とか「俺はただ、この手に全てを掴みたい」とか、本来そっちの人なんだよね、ジェリド。マウアーの幻影は「生き延びる事、戦う事、貴方にとって今はそれが正しい」と彼を諭す。自分を取り戻したら、目の前で彼女を失っても、カミーユへの復讐にでなく、作戦遂行に走る。漢！

河樹　彬 @e_rewhon

ジェリドが強く優しく忍耐強い「大人」であることは、アニメの部屋氏も指摘してる。「俺を戦いに駆り立てたのは貴様（カミーユ）だろ」「俺は貴様ほど人を殺しちゃいない」「貴様は俺の」…はい、ジェリドさん、全て正論です。最期の言葉まで奪ったカミーユ、許すまじ。＞anime-room.jp/modules/anime/…

河樹　彬 @e_rewhon

ジェリドやカツは、おそらくはアムロ的なものの負の面を描くためのキャラ（アンチテーゼ）だった。が、彼ら自身の中には致命的なところ、その死を自業自得と思わせる「癌」が見当たらない。だから「事故死」させる他はない。Zが「シャアのための物語」だと思えば、この点、御大は誠実な人だと思う。