オレはベイブの胸に包まれた。オレの残高には2022オムロが即座にチャージされていた。2022オムロ!?即座にパーティーできるうえに、ふわふわローンを一発返済してもお釣りが来るぜ!「夢みたいだ!」「そうよ!一緒に洗車しましょ」「する、する!」オレはいつの間にか薄暗いガレージに居た。 23
2022-12-31 23:51:26光の差さない、怪しいネオンライトで間接照明されるガレージ……一台の洗車しがいのありそうなヴィンテージカー。「あ……あれを二人で洗車?泡で?」「そうよ。待ってね」ベイブがオレから一旦離れた。オレはベイブについていこうとした。だが、動けない。オレの身体は椅子に縛られていた。 24
2022-12-31 23:53:55「アレ?何故?」オレのこめかみを汗が流れ落ちた。そもそも、おかしいぞ。「というか、どうしてオレはガレージに?地下四階の仕事場にオレは居て……」「そんなのどうでもいいじゃない」ベイブは振り返り、断続的に放電する鞭を見せた。「楽しみましょうよ!」「エ!?」2022にマイナス表示が出た。25
2022-12-31 23:56:17「オレの残高がマイナス2022オムロ……?」「そうよ」「融資してくれるって」「そうよ。融資よ。だからマイナスなの」「ちょっとまって!?」「電気鞭のひと打ちごとに1オムロ返済できるわ!楽しいでしょ!」「それって」「私が貴方を打って楽しむの!」「何故!?」「お前がバカだからだ!」26
2022-12-31 23:58:11次の瞬間、ベイブの身体が真っ二つに裂け、中から名状しがたい奇怪な鞭触手塊モンスターが這い出したのだ!「2022回!貴様を鞭打って情報のゴミクズにし、その残滓を啜る!それが我々の深甚なる使命也!」「アイエエエエエ!助けて!」「助けなど来ぬ!ビルルルルーッ!」「助け……!」 27
2022-12-31 23:59:43「エッ!?」オレはガレージの壁を破って飛んできた2・0・2・3の数字に仰天した。こんな現実ってあるか!?数字が飛んできたんだぜ。これもヤバい触手鞭モンスターの拷問バリエーションか?ヤられちまうのか?「一体何だ!これは!」モンスターもビビってる。じゃあ、誰が?「私だ!」29
2023-01-01 00:02:39壁に開いた穴には、逆光になった黒い影が立っていた。「ニンジャ……違う」オレは眩しく瞬きした。影はツカツカと歩み寄り、姿をあきらかにした。「この世には物理法則や電子計算では解決できない謎が沢山ある」それは両目にダイヤモンド義眼を嵌め込んだ怪人だった。「年越し探偵ザザ、参上!」 30
2023-01-01 00:05:432・0・2・3の数字は縛られたオレの周囲を激しく旋回した。「AAAARGH!」触手鞭モンスターは怯んで後退し、クルマに背中をぶつけた。「アイエエエエ!」悲鳴をあげるオレの口の中に、2・0・2・3は吸い込まれる!そして……ナムサン!マイナス2022オムロと相殺!オレの残高は1になった! 31
2023-01-01 00:08:03「勝手に私の債権を相殺するな!許さんぞ!」触手鞭モンスターがザザを威嚇した。だがザザは怯むことがない。「違法な貸付は無効だ!」「そのう……プラス2022オムロにはならないのか?残高たったの1ってのは、ちょっと」オレは確認した。ザザはオレを睨んだ。オレは黙る事にした。 32
2023-01-01 00:12:36「丹念に構築した我が洗車空間に貴様のようなストレンジャーが侵入する事自体あり得ぬ!許さんぞ!ビルルーッ!」触手鞭モンスターはザザをめがけ全ての邪悪触手鞭を展開!襲いかかった!だがザザは両手をクロスしたのち、力強く開いて、義眼を激しく光らせた!「義眼光線!」「ウッギャアアアア!」33
2023-01-01 00:15:32忌まわしいモンスターは苦しみながら蒸発し、01ノイズとなって消えた。01ノイズ……オレはその時ようやく気づき始めていた。さっきの2・0・2・3の数字とか……この不条理なガレージ空間とか……「ここって……コトダマ空間なのか?まさかオレはいつの間にかニューロンをハックされて……」 34
2023-01-01 00:18:34「それはお前の問題だ。正気が守れる理解をお前のほうで考えて採用せよ」ザザは俺に近づいた。その時だ!「Wasshoi!」ザザが穴を開けた壁とは逆側の壁が破砕し、赤黒の影がトビゲリでエントリーしてきたのだ!こ……今度こそ、「ニンジャスレイヤー=サン!」オレは叫んだ。 35
2023-01-01 00:21:42赤黒の影は前転ののち立ち上がり、ザザにオジギした。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」「我が名は年越し締め切り探偵ザザ」「とにかく助けてくれ!」オレはもがいた。ニンジャスレイヤーは舌打ちし、ザザのワン・インチ距離に踏み込んだ!「イヤーッ!」繰り出されるチョップ! 36
2023-01-01 00:26:08「待ってくれ!」オレは叫んだ。ザザはニンジャスレイヤーのチョップをガードし、タタミ2枚距離をノックバックした。そして両手をクロスするさっきの構えを取った。オレは慌てて説明した。「オレの残高が1オムロしかねえんだ!そいつが2023でオレのマイナス2022を帳消しにして、1が……」 37
2023-01-01 00:29:15「2023だと?」ニンジャスレイヤーは眉根を寄せた。「そう、2023。2022はもう昔の事だ。未来を見ていかなきゃいけない。2023をな。だけどオレには1オムロしかなくて……あ、待てよ!」オレはザザに叫んだ。ザザの野郎、踵を返し、帰っていこうとしやがる!「ふわふわローンの借金がまだあるんだ!」38
2023-01-01 00:32:06「……」ザザは立ち止まった。そして神秘的に言った。「普段なら、これから私がお前を折檻し、その借金も完済させるところだ。だが、その役割はその者に任せる事とする……ニンジャスレイヤー=サンにな」「エッ……」ザザは壁の穴をくぐり……消えた。 39
2023-01-01 00:34:25オレはニンジャスレイヤーを見た。「その……なんだ。まず確認なんだがよ、ここってコトダマ空間だよな?」「……」ニンジャスレイヤーは腕組みして直立し、オレを睨んでいた。「つまり、オレって、胡乱なウイルスか何かに攻撃されて、フラットラインか何かしちまって、お前が助けに来た……?」 40
2023-01-01 00:38:16ニンジャスレイヤーはオレをじっと見ている。「その……オレの事、解放してくれるよな。見ての通り、椅子に縛られちまっててよ。まったく散々な目に合っちまったぜ。調子狂うよな。ホントによ。仕事とか大変だぜ」「……」オレは瞬きした。オレは地下四階の見慣れた仕事場に自分を見出した。 41
2023-01-01 00:39:50やったぜ。現実だ。そしてニンジャスレイヤーは現実でもオレの横に立っていた。オレは手を動かした。「やった。拘束されてねえや。ハハハ。よかった。アホらしいぜ。まあなんだ、よく働いてくれたな。コトブキが段取りを取ってくれたのか。……ア、なに?」「貴様の借金の件は、だいたいわかった」 42
2023-01-01 00:41:47「借金?ふわふわローンの?いや、単なるキャッシュフローの問題なんだよな。残高管理のアレコレでよ。パーティーに繰り出そうとしたのが、急にこう発注の……アイエッ!」ニンジャスレイヤーはオレの肩を掴み、強制的に机に向かわせた。手を離さない!「グワーッ!」「わかっているのか、貴様は」 43
2023-01-01 00:45:59「グワーッ!」肩へのプレッシャーがかかる!逃げられない!「これ以上の面倒をかけるな。今すぐ追加のタスクをこなして完済するまで、逃さんぞ」「グワーッ!」「わかっているのか!」「グワーッ!」「わかっているのか!」「グワーッ!」「わかっているのか!」「アアアアーッ!」 ~FIN~ 44
2023-01-01 00:49:05