飛行戦艦とその砲

飛行戦艦というのを真面目に大砲面から考察された方のまとめです
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

創作作品の「空飛ぶ軍艦」の類からの砲撃って真面目に考えると結構面白そうな問題ですわね。現実の艦砲射撃と共通する所もあるとは思いますが、幾つか大きな違いもありそうで、そのへん考えてみましょ #マシュマロを投げ合おう marshmallow-qa.com/messages/ecf65…

2023-01-06 20:13:42
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

おっと注意。前提として、わたしゃ艦砲射撃の理論をサッパリ把握しておりません。そっち方面は他のもっと詳しい所で見てもらうほうが良いと思います。ここでは大砲を空中で撃つことで生じる基本的な問題についてまず考えてみましょう

2023-01-06 20:15:28
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

簡単のために、まず高空(数千m単位)に静止した空中軍艦から別の静止した空中軍艦を撃つことを考えてみます。これを海面上と全く同じ射角で撃つと、高度によりけりですが多分当たりません。というのも高空は空気が薄いので砲弾にかかる空気抵抗が小さく、より遠くまで飛んでしまうのですね

2023-01-06 20:17:54
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

しかし大砲の射撃では気圧の差による射程の変化も考慮されるものです。例えばお題の12.7cm40口径砲に近そうなサンプルとして、122mm45口径のA-19カノンで見てみると、射距離5kmでは気圧が0.01気圧下がるごとに射程が13m伸びると分かっています。同様に 10kmでは+46m 15kmでは+87m 20kmでは+112m

2023-01-06 20:22:45
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

遠距離を撃つということはそれだけ砲弾が空気抵抗に晒されている時間も長いので、つまり気圧低下による空気抵抗の低下の影響は、遠くを撃つ場合ほど大きくなるわけですね

2023-01-06 20:28:41
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

これらを高度3000m(0.7気圧)での射撃した場合にそのまま当てはめると、射距離に応じて 5kmなら+400m 10kmなら+1400m 15kmなら+2600m 20kmなら+3400m と、ちょっとした高度に上がった飛行軍艦の射程は目に見えて大きく伸びるであろうことが分かります

2023-01-06 20:29:49
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ただしここで使った気圧による補正値は、本来なら地上とかちょっとした山とかでの射撃をするのに用いるためのものです。高度3000mあたりまでならどうやら実際に近そうなんですが、現実で陸の砲兵があまり高い山の上に大砲を据えるというのはそうそう無いことなので、あんまりデータがないのです

2023-01-06 20:34:34
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

先の補正の比率に従えば高度1万mの場合は射程は+8200mになる計算ですが、でもそこまでの高硬度にも同じ補正を適用していいのかはちょっと何とも言えません。弾道高が砲の高さから+4000m強とかになるので、弾道が対流圏を超えて成層圏に入ってくることでなんか変わってきたりするかも(よく分からない)

2023-01-06 20:45:16
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

かといって実際のデータを調べようにも、高度1万mに配置された5インチ砲での射撃というのは現実世界では概ね想定されないことなので、たぶんそんな既存のデータは無いです。航空宇宙関連のなんかをちゃんとやれば自分で計算することは出来るのでしょうが、私にゃサッパリで

2023-01-06 20:47:29
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ともあれ飛行軍艦が高度を上げると射程が伸びる、というのはまず言えることです。しかも注意したいのは、先の数字はあくまで「同高度に対して」の射程です。飛行軍艦が別の高度にいる敵軍艦や航空機を撃ったり、あるいは対地射撃をするとなると、また射程は大きく変動することになります

2023-01-06 20:49:08
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

高度が異なる目標への射撃というのは大変厄介でして。相手が低ければより遠くてもいい、高ければ近くないと届かない……というのは直感的には分かりやすいですが、では実際にどれくらいとなると、その場で計算するのは難儀なので事前に用意した数字を使います

2023-01-06 20:53:49
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

具体的には。まず「高角」はその射距離に弾を届かせるための基本的な角度です。目標との高度差がない場合はそのまま撃てますが、差がある場合は目標との間の「高低角」を加えます。でもそれだけだと実は合わないので、さらに「補助高低角」という補正値も加味する。そうして最終的な「射角」が得られる pic.twitter.com/hvT3WT3Ctk

2023-01-06 21:07:16
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

その補助高低角はどれだけになるか、というのは事前に計算されて射表に書いてあるわけですが、普通の陸の大砲だとそこまで大きな高低角は想定されなさそうです。A-19(というかD-25)だと130ミル、7.8度までしか載ってなかったりで。より大きな高度差のある射撃は「山岳射表」という別冊になってたり

2023-01-06 21:11:54
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

なのでA-19の山岳射表があれば高度差のある射撃についてももう少し確からしい事が言えるのですが、手元にありません。多少なりとも近い大砲で探してみると152mm D-20榴弾砲がありましたがこんな感じ。高度差+6000mまではギリギリ届くけど射程は半減、高度差-1500mなら射程+800mといった具合 pic.twitter.com/BflCtoJ00z

2023-01-06 21:15:06
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

とまあ陸の大砲の考えだと、高度差のある射撃でも目標が砲からずっと低いところにある場合というのはあまり想定されていなくて、実際のデータというのはどうも無さそうなのです。高度数千mの飛行軍艦が対地射撃支援をする場合の射程を考える参考になるデータというのはちょっと厳しい

2023-01-06 21:18:54
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ただ間違いなく言えるのは、高空にある飛行軍艦が対地射撃する場合の射程距離は、同規模の陸の大砲から見れば何割といったレベルで長くなりそうだということです。同じ5インチ砲装備の飛行軍艦と高射砲と相対したとしても、飛行軍艦のほうが一方的にアウトレンジしてしまうことは容易いでしょう

2023-01-06 21:21:57
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そして飛行軍艦の対地射撃では弾着観測もたいへん容易です。何しろ自分が観測機を兼ねられるわけですし、上から見るので弾着の遠近もよく見える。あるいは自分の高度がハッキリ分かっていて、さらに目標の標高が無視できる場合なら、測距を省略することさえ出来てしまいそう

2023-01-06 21:28:32
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ちょっと面倒臭いのは自艦の流れる速度分によって着弾がズレること、なのでその動きを知っておく事ですかね。これは海上の軍艦からの対地射撃でも問題になるやつですが。ただ飛行軍艦が陸上を飛んでいる場合は、地上の目標物を見て測るのもやりやすそうな気はする

2023-01-06 21:32:19
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

とまあ飛行軍艦の対地射撃は割とおいしそうなのですが、同様な軍艦との空中砲戦となると話がだいぶ面倒くさくなりそうです。基本的には海上での艦砲射撃の考えが当てはめられそうですが、自他の高度差を考える必要がある分だけより複雑になります。といっても高角砲が既にやっている事でもありますが

2023-01-06 21:34:45
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ただし飛行軍艦の対飛行軍艦射撃では弾着の水柱を見るということは出来ないので、弾着観測については少し工夫が必要になりそうです。クソデカ曳光弾にするとか、あるいは対空砲弾めいた時限信管を対艦射撃でも使って観測の助けにするとか。対空砲めいた要素を対艦でも用いることになるでしょう

2023-01-06 21:37:34
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

弾種の選定も問題です。飛行軍艦の装甲防御がどの程度になるかは作品の設定次第でしょうが、仮に水上の軍艦並とした場合は、「対空射撃ではあるけど硬目標」という厄介な相手になります。装甲を抜くために徹甲弾が要るけど、観測の都合で時限信管も備えているみたいな事になったりするかも

2023-01-06 21:40:38
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そして飛行軍艦は(設定次第でしょうが)たぶん水上の軍艦より速いはず。高度差と高低の運動という要素も相まって、飛行軍艦の空中砲戦は水上艦同士のそれよりかなり照準が難しい事になるでしょう。この事はあるいは、実用的な砲戦距離がかなり近くなるという事に繋がるかも知れません

2023-01-06 21:45:47
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

しかし飛行軍艦って創作作品で割と軽率に出てきますけど、ちょっと真面目に考えてみるととんでもないですよね。水上艦と沿岸砲では沿岸砲が有利といいますが、飛行軍艦と高射砲だと恐らく逆転する。まあ片方にだけSF技術を注ぎ込んでいるのだから片方が有利になるのは当然ではあるのですが

2023-01-06 21:49:28
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

現実の高射砲が飛行機を撃つときは、直撃弾は期待しづらいので破片榴弾が主流だった。でも飛行軍艦は(たぶん)飛行機よりずっと頑丈なので恐らく徹甲弾かコモン弾(肉厚榴弾)を使わざるを得ない。そもそも同クラス砲では射程で不利だし、観測も向こうのほうがやりやすい。これは厳しい

2023-01-06 21:54:13
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

飛行軍艦のある世界って海軍(空軍か?)の力がもの凄そうですよね。海軍による港湾封鎖みたいなことを内陸でも出来てしまう。「重爆撃機編隊」の代わりに、ちょっとした駆逐隊で数百トンの戦略爆撃ができる。海兵隊が重装備とともに内陸部にも「上陸」してくる。「制空権」の意味が全く異なりそうです

2023-01-06 22:02:52