掌小説語り～自作つぃのべる集～93

リュカ @ryuka511

眠る貴方の胸元、未だ癒えない傷に口づける。数年前、私を庇い負った傷は致命傷には至らなかったものの、長い間貴方を苦しめた。なぜ私なんかを。罪悪感に苛まれながら、貴方を支える為に戦った。そして貴方の真意に気付き首を振る。貴方の傷を癒す事もできない私が、後継者になんてなれない #twnovel

リュカ @ryuka511

言ってしまったら、もう今まで通りではいられない。進むか壊れるかのどちらかだ。それでもこの関係を、友人以上に進めたかった。たがあの人は首を振り「ごめん」と言った。「友達のままでいて」とも。黙って頷き並んで歩いた。夕暮れ時の、いつもの道。けどあの日の影は、悲しい色をしていた #twnovel

リュカ @ryuka511

微笑んだ彼の唇が頬に触れて、わたしをいい子だと囁いた。完全に子供扱いだ。「子供じゃない」って言えば言うほど子供じみてくる。対等に見てほしいのにどうしたって歳の差は縮まらない。大人ぶっても彼には響かない。こんなにも好きなのに、スタートラインにすら立てないなんて、酷すぎる。 #twnovel

リュカ @ryuka511

微笑む君が小さく手を振る。君の傍まで駆け寄って、抱き寄せようとして、空を切った腕に戸惑う。君の姿はまだ数歩先で、君は微笑んで手を振っている。駆け寄る。腕を伸ばす。かき消えた君に愕然として、目が覚める。もう君はいない。もう一度微睡みの中へ落ちていく。君に唯一逢える夢の中へ #twnovel

リュカ @ryuka511

力無き正義は無力だ。正義を貫き、理想を叶えるには力こそが全て。そう信じて戦った。悪を過ちをねじ伏せ、潔癖で完全な世を治める。それは全ての民の幸福に繋がるのだ。だがそうして全てを手に入れた後に残ったのはガラクタの山。民は逃げ出し、臣下は私に刃を向けた。私は何を間違えたのか? #twnovel

リュカ @ryuka511

最近はケンカしてばかりだった。二人で過ごす部屋に、怒鳴り声と食器の割れる音が響いていた。そしてついに僕らは終わりを迎える。君が出て行った部屋はがらんとしている。この部屋、こんなに広かったっけ?部屋に響くのは窓を打つ雨の音だけ。静かでいいや。そう呟いた瞬間、視界が潤んだ。 #twnovel

リュカ @ryuka511

キスの最中なら、貴方の視界を独り占めできる。貴方の心が私に向いていない事など知っている。貴方は私を利用しているだけ。そんな冷たいキスでいいから、貴方を独占できる僅かな時間が愛しかった。貴方を一方的に想う私は、貴方に逆らえない。貴方のキス一つで、私はまた貴方の道具になる #twnovel