掌小説語り~自作つぃのべる集~93

自作のつぃのべるのまとめです。 2021年1月分。
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リュカ @ryuka511

この庭は私のためにあり、私のために鳥は歌い、私のために花は咲く。そう信じれば、それは私にとって真実になる。他人と私の真実が、同じである必要はないのだ。むしろ、同じ真実を見ていると思い込むから、すれ違い悲劇が起きる。この庭は、一人で生きると決めた私の、誰にも侵させない聖域 #twnovel

2021-01-01 01:12:40
リュカ @ryuka511

孤児だった僕は旅芸人一座に拾われ、雑用やショーの前座をこなす。拾われた頃は、ただ雑用係が欲しかったんだろうと思った。だけど、一座はみな家族で、僕もその一員だと分かって。幸せだった。誰かを失いたくないだなんて初めて思ったんだ。魔王も、門を閉ざし僕らを追い払う人も、許せない #twnovel

2021-01-01 22:42:23
リュカ @ryuka511

出会った頃は捕食者と被捕食者の関係だった。捕らえ閉じこめ血を啜るうちに、この者でなければ駄目になってしまった。逃げようとしているのを見つけ腕を掴む。怯え引きつる頬をそっと撫でる。驚き震える身体を包み抱く。初めて抱いた感覚に戸惑いと喜びが湧き上がる。慈しむとはこういう事か #twnovel

2021-01-03 00:21:44
リュカ @ryuka511

あなたの本気で虹を目指すような愚かしさを、愛しく思っているのだけれど。その本気さが怖くもあった。あなたの真剣すぎる想いは、私を圧し潰しそうになる。そんなに真っ直ぐ私を見ないで。あなたはいつか、私の為に平然と自分の生命を投げ出すかもしれない。もしかしたら他人の生命さえも。#twnovel

2021-01-04 00:14:50
リュカ @ryuka511

過去に戻って過ちを正したら、世界はあるべき姿を取り戻しもとに戻るだけって言ったのに。その結果あなたの存在が消えてしまった世界など、正しくない。あなたの存在が過ちの結果なら、過去を正す必要などない。あなたの痕跡を辿り過去へ向かう。世界のあるべき姿よりも、あなたを取り戻す。 #twnovel

2021-01-05 00:08:51
リュカ @ryuka511

キッチンにあふれる程の真紅の薔薇を飾る。むせ返るような芳香が満ちる。深い紅は血を思わせるが仕方がない。忘れてはならないから。事故として処理された貴方の死は当然の報いだが、罪は罪だ。私を罰せられるのは私。紅に秘匿した私の罪。許しも憐憫もなく、広がる紅が罪を突きつけ責め苛む #twnovel

2021-01-05 23:43:15
リュカ @ryuka511

味方に引き入れた方が得策と考えたのか。魔王は僕の意識を支配していく。抗いきれず仲間を危険にさらす事が増えた。心配する皆に大丈夫だと微笑む。だがついに仲間に剣を向けてしまった。逃げてくれと叫ぶ喉が潰れても、仲間の手で死んでもいい。僕は最期の瞬間まで救世の勇者でいる事を選ぶ #twnovel

2021-01-06 23:23:24
リュカ @ryuka511

古代文字の解読が完了した。この石版に綴られているのは神様抹殺計画。度重なる天災により危機に瀕した王国を救うため、王が神を討とうとしたらしい。この文明が滅びたとされる時期と一致する。抗おうとした人類を神は滅ぼしたのか。いや、これは偶然に違いない。でなければ、神とは何なのだ #twnovel

2021-01-07 23:27:03
リュカ @ryuka511

愛した者の亡骸を彼は自分の柩に眠らせた。柩を白い薔薇で埋め尽くし固く蓋を閉ざす。脳裏に浮かぶのは幸せだった日々。愛など知らなければ、こんなにも深い悲しみも知らずに済んだだろうか。共に過ごしたこの屋敷も今は彼を悲しみで苛むだけ。帰る柩なくした吸血鬼は、死に場所を求め彷徨う #twnovel

2021-01-08 23:22:08
リュカ @ryuka511

浜辺で二人、沈む夕日を見ながら静かに語らう。「こんな事になるなんてな」「初めて会った時には思いもしなかったね」「私は世界の終焉を願った」「僕は世界の存続を」「そして世界は存続している」「けれど世界を構成する存在はもう僕らだけ」「私の勝利だ」「まだ諦めてない僕を殺せばね」 #twnovel

2021-01-10 00:41:49
リュカ @ryuka511

ベッドからご主人は悲しげに私を見つめます。戦場で大怪我を負ったご主人はそのままこの病院に運ばれました。妹君の形見である私をどなたかが一緒に運んでくれました。「お前の仇をとって、傍に行くはずだったのにな」そんな事を言わないで下さい。ご主人の幸せを、妹君も私も願っております #twnovel

2021-01-10 23:59:24
リュカ @ryuka511

ずっと君の唯一でありたいと、願った。僕が生きている限り、君の心を占領したいと。最期の瞬間、君が見ていたのは僕だった。けれど君の心は僕の方を向いていない。どうして。誰より長く君の傍にいた。君の時間は僕と共にあったのに。君の一言が、僕を突き落とす。「やっと、解放されるのね」 #twnovel

2021-01-12 01:05:51
リュカ @ryuka511

「俺は誰の代わり?」不意に向けられた言葉を、否定できなかった。私は彼に、亡くした恋人を重ねていた。答えられない私に、彼は出て行ってしまった。傷つけたのは私なのに悲しいのはなぜ?彼の傷ついた顔が胸を刺す。心を占めていたあの人の微笑みが、彼の泣きそうな顔に変わる。「待って!」 #twnovel

2021-01-13 00:09:32
リュカ @ryuka511

どんな時代にも花は咲くと君は言う。どうしてそんなに強くいられるんだろう。世界の底辺で、僕も君も絶望的な状況で生きてるのに。君のその強さが眩しくて、妬ましかった。同じ絶望の中で君には何が見えてるの?ずるいよ。「じゃあ、君が花になってよ」 摘み取って枯れないように飾ってあげる #twnovel

2021-01-13 23:50:47
リュカ @ryuka511

薄闇の中、左胸の弾痕を癒すように撫でると、この傷はもう消えないぞと笑う。消えなくてもいい、この胸が今も上下していれば。危険な任務に就く度に、これが最後の夜になるかもしれないと恐怖する。裏社会で生きる、祝福から見放された生命。それでも祈らせてくれ。次の夜が巡ってくるように #twnovel

2021-01-14 23:39:01
リュカ @ryuka511

敵の手に落ち潜脳された君の攻撃をかろうじて交わす。君を取り戻す手は無いのか。倒れた僕に君が咆哮を上げのしかかる。これまでか。だが僕の喉へ噛み付く君に牙は無い。そうか!#twnovel 同士討ちを笑いながら見物していた敵が近づいてくる。「よくやった…」その言葉が終わらぬ内に、2人で斬りかかる

2021-01-16 00:00:12
リュカ @ryuka511

姫様は自ら城を茨で覆い、姫様の魔法で城中の人間が眠っています。私を除いて。姫様は「これは私の呪い、貴方は逃げて」と仰いました。王宮を呪う程の苦しみに気付けなかった。私だけ逃げるわけには参りません #twnovel 傷だらけの眠り姫の傍に、茨に守られながら寄り添う女性が1人息絶えていたという

2021-01-17 00:57:10
リュカ @ryuka511

光の届かぬ沈没船で魔女は自分を責め続ける。恋慕を寄せた王が、人としての一線を越えようとしている事に気付けなかった。人の手には余る力だと分かっていたのに。魔女の力で王は怪物と化し、大陸を滅ぼした。王を手にかけ弔い魔女は海へ沈む。死ねない身を呪いながら、深海にその身を封じた #twnovel

2021-01-17 23:35:50
リュカ @ryuka511

君の言葉は僕にとって神託だった。君の言う通りにすれば全てが上手くいく。君の指が指し示すのは明るい未来、君が僕をそこへ導くのだ。君は僕を「便利な駒だ」と笑ったという。それは真実なのに何を笑うの?僕が君の忠実な駒である限り、全ては上手くいく。駒が歯向かったら、困るのは君だよ? #twnovel

2021-01-18 23:58:03
リュカ @ryuka511

王宮内には王族のみが使う教会があり、その司祭になる事は多くの聖職者の憧れであった。だが司祭が知るのは王族の不和や醜聞、決して民衆には聞かせられないものばかりだ。機密保持の為に軟禁同様の暮らしを強いられる内に、「自分が民衆を騙している」と罪の意識に心を病む司祭も多いという #twnovel

2021-01-19 23:28:54
リュカ @ryuka511

勇者に敗北し逃げ帰った私へ、再度チャンスを与えて下さったあの方の為なら、私は喜んで捨て駒にだってなりましょう。えぇ、知っていますとも。私の身体に仕込まれた最終兵器の事を。私にまだ利用価値があるのなら、こんなに喜ばしい事はありません。さぁ、私の最期の戦いを、始めましょうか #twnovel

2021-01-21 00:57:25
リュカ @ryuka511

「早まらないで!」死ぬつもりで屋上に来たら、お節介な奴が追いかけて来た。身を乗り出し溜息を吐く。「話を聞く」とか「皆が悲しむ」とか言うのを聞いて、気が変わった。「じゃ、傍に来て話を聞いて」と手招きする。近づいてきたそいつの背中を押して突き落とす。死にたい気持ちは消えていた #twnovel

2021-01-21 23:59:33
リュカ @ryuka511

私ならあんたを幸せにしてあげられる。そう嘯いてあいつの心を閉じ込めた。あんたには私だけがいればいいんだと言い聞かせ、近付く者を密かに消していった。愛して、尽くして、閉じ込めた。間違った愛し方だったと今なら解る。あいつは一度も自分から私に触れようとはしなかったのだから。 #twnovel

2021-01-23 00:33:02
リュカ @ryuka511

「僕は君のこと、なんとも思ってないよ」弟子に愛を告白されそう答えた。「君は恋愛にうつつを抜かしている場合じゃないはずだ」俯いた君に背を向ける。君はいずれ僕を超える力を身につけ救世の英雄となる存在だ。僕が君の成長を妨げてはならない。君を導き送り出す、僕の役目はただそれだけ #twnovel

2021-01-23 23:51:09
リュカ @ryuka511

彼を探す声が遠ざかる。よろめいた私を彼が支えた。「大丈夫か?」「えぇ」人間でありながら強い魔力を持つ私は、裏切り者として追われる彼と共に逃げている。私の魔力が彼の糧になり、私は魔力を彼に吸わせ自我を保つ。共にいるのは利害の一致、それだけ。彼の心配げな眼差しに、胸がざわめく #twnovel

2021-01-24 23:35:41