- sdokudaaki
- 4569
- 6
- 0
- 0
BBCは、韓国はアジアで最初に成功した「#MeToo運動」を生み出した国であると記事内で評しています。しかし、上手くはいきません。韓国でフェミニズムが沸き上がった2018年以降、今度は反フェミニズムの波が国中に広がりを見せたからです。
女性差別撤廃のために声を上げる女性たちに対して、とくに10代後半から20代の若い男性は反発し、これは男性差別であると不満を蓄積しています。その背景には、男子だけに課せられる兵役義務が就職にも響くなどの韓国特有の事情があるとされていますが、この反フェミニズムをこじらせた20代の男性は韓国国内では厄介な問題の種です(韓国ではこういう若い男性のことを「イデナム」と呼ぶそうです)。
女性の権利の活動家には脅迫などの嫌がらせが頻発し、女性憎悪が新たな被害を発生させる状態となっています。政府もろくに対応してくれず、結局は女性が尻拭いをさせられるオチです。
社会に蔓延る女性差別の問題も、軍国主義に依存する兵役の問題も、全ては政治家の責任なのですが、日本と同様に家父長的な韓国政府の体質が変わらないことには、女性にも男性にも良い未来が訪れそうにはありません。
韓国映画界が近年は女性を主体的に描いた良作を創出しているのも、そうした情勢に対して映画という芸術が果たすべき役割を考えてのことだと思います。その点はやっぱり韓国映画の良いところですね。
「消費される女性」とオタク批評
しかし、これを「女性のヒーロー」として安易に称賛もできない事実を本作は露呈させます。
そもそもジョンイが傭兵としてその身を削って戦場に繰り出されていたのも、全ては娘の治療費を稼ぐためであり、要するにジョンイは母親という重荷を背負いながら過酷な労働を強いられている、ひとりの労働者でした。カッコいい英雄ではなく、母性の鎖に縛られていただけです。
さらに追い打ちをかけるのが、ジョンイのアンドロイドを性的なグッズとして私的利用している男性研究員のシーン。初登場時は良いやつそうに見える台詞を言ってましたが、素性は女性を性的に消費することでいかに当事者の尊厳が傷つけられるのかを何も気にしていない。この場面は、”ヨン・サンホ”監督からの男性オタク批判な風刺なのでしょう。
よくよく振り返れば、あのサンフン(実はアンドロイド)もミソジニー的な男性像の風刺かもしれませんね。家父長的な社会で気に入られたいという承認欲求、ひたすらにお茶らけることしかできないコミュニケーション能力、自己分析できない情けなさ…。ネット上でよく観察できる反フェミニズム男性クラスターは、まあ、確かにこういう連中で成り立ってますよ。
どちらにせよアンドロイドという素体を描くことで「消費される女性」の問題を浮き彫りにさせます。『JUNG_E ジョンイ』の場合はことさらオタク批評な勢いが濃いめなので、世間で人気の女性アンドロイド系の作品とそのファン層へのチクリとした居心地悪さを与えるかのような立ち位置も感じます。
そういえば岸田首相の秘書官の「同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」発言、いまどきその程度の個人的事情で気軽に国を出られる人が出ていく先に選びそうな先進国は軒並み同性婚を法制化してるか舵を切ってるんだけど、どこに行こうというのだろう。中東?
2023-02-05 17:10:52