『赤毛のアン』のむずかしい引用について(バイロンとシーザー)

ただ、当時の子供にはどのくらいの難易度だったのか不明なのね。
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砂手紙 @sandletter1

1・Did but of Rome's best son remind her more.…ローマに彼女の最上の息子をいっそう思いおこさせずにはいない remindの意味はわかりますね。AにBを思いおこさせる。butは「~せずにいられない」。herはRome。都市はよく女性として語られるようです。

2023-02-13 01:20:41
砂手紙 @sandletter1

2・でもってこれはなにかというと、『赤毛のアン』の中の一節なのね。フィリップス先生のいじわるとかもあって、学校に行くのをやめたアン・シャーリーは、ダイアナと遊んでいてうっかりクズリ酒を飲ませてしまったため、べろんべろんになってしまったダイアナ。

2023-02-13 01:21:10
砂手紙 @sandletter1

3・そういうわけで、学校に行かないとダイアナに会えないことになったアンがしぶしぶ教室に行ったときの心境。口を聞いてくれないダイアナに対する気持ちなのね。そのあとこっそり仲直りの手紙をもらって、アンは喜びます。この引用に関してはねえ、ものすごく長い話があるからまあ聞いてくんねい。

2023-02-13 01:21:30
砂手紙 @sandletter1

4・以下、「快読『赤毛のアン』」、菱田信彦・彩流社・2014年に依拠してます。オリジナルはバイロンという詩人の「Childe Harold’s Pilgrimage」、「チャイルド・ハロルドの遍歴」という叙事詩の一節で、チャイルド・ハロルドはイタリアのフィレンツェに行きます。

2023-02-13 01:21:54
砂手紙 @sandletter1

5・そして、そのサンタ・クローチェ聖堂にダンテとボッカチオの遺骨が、ミケランジェロやガリレオの遺骨があるにもかかわらず納められていないことをより印象強く思います。どこにふたりの墓があるかは各人調べてみてください。

2023-02-13 01:22:24
砂手紙 @sandletter1

6・で、それに対する気持ちが「Rome's best son」、つまりシーザーを暗殺したブルータスなんですけど、シーザーの葬儀の列に、ブルータスの像が持ち込まれることが許されなかった故事に由来しています。

2023-02-13 01:23:40
砂手紙 @sandletter1

7・つまり「口を聞いてくれないダイアナ」≒「ダンテとボッカチオの遺骨を持たないフィレンツェ」≒「ブルータスの像を欠いたシーザーの葬列」という構造になっています。

2023-02-13 01:24:17
砂手紙 @sandletter1

8・『赤毛のアン』にはこの手の、21世紀に読むにはあまりにもたくみな引用が豊富すぎて、読みやすくて注釈も多い松本侑子訳のテキストでも、これはいったいなんのことなのか、1993年に文庫にするときやっとわかったそうです。

2023-02-13 01:24:43