「こーゆー時って頼りになるオトナを呼ぶのがいちばんだからね~」 「いや…めっちゃお手柄だけど!こんな時に2人だけでウロついたら危ないだろ!お手柄だけどっ!」 「まったく…兄上は心配症だなぁ。僕たちなら大丈夫さ」 「そうそう~。それにすぐ呼んだんだから3人だよ」 「あっ、確かに…」
2023-02-25 22:10:14コンコン、コン。 少し控えめなノックの音で、パチリと目を開ける。 薄い木の扉の向こうから元気な少女の声が響いた。
2023-02-25 22:13:26「イリスさ~ん!入っていいですか??」 「鍵は開いてるよ」 いつもと変わらずぶっきらぼうな返しをすると「入っていいって!」「行きましょ!」という嬉しそうな話し声が聞こえたかと思えば、少女たちが扉を開けて入って来た。
2023-02-25 22:14:04エトワール、ライカ、ふぁらん、星凛、ミネルヴァ、エカチェリーナ。 このサーカスでは比較的幼い少女達が来たことで、辛気臭い室内が一気に賑やかになる。 「ゾロゾロと何の用だい?」
2023-02-25 22:14:38「私たちね、サーカスのみんなにお花を配ってるの!」 「そう!助けてくれたみぃ~んなへ感謝の印だよ!」 「ライカが考えたアル!」 「エトもみんなに助けてもらったからお礼がしたかったのです!」 「私も……お手伝い…」 「りーなもね ぱぱとままにね おはなあげたのよ~」
2023-02-25 22:15:11片眉を上げて聞くイリスへ、互いの言葉を引き継ぎながら口々に話し出した少女達。 朝から花束作りに精を出していたのだろうか。 彼女らの服や髪の毛には、よく見ると草や花びらが付いていた。
2023-02-25 22:15:48「みんなでがんばって作りました! 受け取ってください!」 pic.twitter.com/sWCWwbQqVe
2023-02-25 22:16:25代表してエトワールが前に進み出て、その小さな両手に余るほどの大きな花束を差し出す。 目の前に出された色とりどりの花々に、イリスは目を丸くした。…が、すぐにいつものしかめ面に戻ると花から少女たちへ視線を移す。
2023-02-25 22:17:10「…フン。まさか眠り薬でも仕込んでないだろうねぇ?」 「そんなことしないのですっ!」 「あの最低最悪なタマ無しクズと一緒にしないでほしいアル!」 「「タマ、ナ…シ…?」」
2023-02-25 22:17:44跳ねるような少女たちの声に再び視線を戻す。 腕を組んで頬を膨らませたふぁらんの言葉にライカとミネルヴァは同時に首を傾げた。 目の前では真っ先に否定したエトワールが少しむんっとした表情を浮かべている。
2023-02-25 22:18:24少女たちの訴えるような視線(エカチェリーナとミネルヴァは店の品物に意識が行っているようだが)がなんだか可笑しくてフッと口角を上げると、漸く花束を受け取った。
2023-02-25 22:19:06誰かに抱きつかれるなんて滅多にない為、イリスは体を強張らせる。 エカチェリーナは彼女に腕を回したまま、もう一度見上げると蕾が花開くような笑顔を見せた。 「ばーば。あーとぉ(ありがとう)!」
2023-02-25 22:21:34「わ、分かったから離れな。全く鬱陶しいったらありゃしない」 貰った花束が潰れないように持ち上げながら、イリスは落ち着かない様子で顔を逸らす。
2023-02-25 22:22:05そして他の少女たちへ何処か助けを求めるように声をかけた。 「それよりアンタ達、これからは気をつけるんだよ。あと頼むからこの子を退かしとくれっ!」 普段なかなか見られない彼女の焦った様子に少女達は笑いを堪えながら、エカチェリーナを自分達の元へ引き戻した。
2023-02-25 22:22:54「それとライカにエトワール。アンタ達は起きがけなんだから無理し過ぎるんじゃないよ」 「「はーい!」」 名前を呼ばれた2人は顔を見合わせて微笑むと、素直に手を上げて返事をした。
2023-02-25 22:23:31