背後から来た強い衝撃にガクンと膝を落とす。 「ゔぉえッ」 そのまま鳩尾に拳を喰らわされ、王芳は腹を抱えて蹲った。
2023-02-25 21:57:49突然の奇襲を仕掛けたのは、想像していたよりもずっと小さな人影。 彼女は王芳の胸倉を思い切り掴むと、自身の左目を覆う眼帯を外した。
2023-02-25 21:58:31自分の死に際をしっかりと目に焼き付けてしまった恐怖は計り知れない。 王芳は必死で立ち上がると、途中で何度か躓きつつ、甲高い悲鳴を上げながら逃げていった。
2023-02-25 22:01:49「フン、玉無しが」 イリスは男の背中を見送りつつ吐き捨てると、自身の眼帯を拾い上げる。 程なくして座長が彼女の元へ駆け寄った。 「ありがとうイリス…!」
2023-02-25 22:02:29座長が礼を告げる為に屈んだ瞬間…… 先程王芳の鳩尾を狙った拳が、縫い目だらけの顔面に直撃する。 「ッッ…!!?」
2023-02-25 22:03:08モロにパンチを喰らった座長は声にならない声を上げる。 イリスは顔面を押さえて悶える彼へ間髪入れず怒鳴りつけた。
2023-02-25 22:03:35「アンタこの子の親なんだろ!自分のガキの管理くらい自分でしな!!」 「…ッ、ご、ごめんなさい…っ」 「アタシじゃなくて、怖い思いしたこの子に謝んな!!」 「…う、うん……」
2023-02-25 22:03:54イリスの剣幕にすっかり縮み上がってしまった座長はしおらしく頷く。 程なくして、エカチェリーナが靴音を響かせて彼に抱きついてきた。 「……まま……ままぁ!」 「リーナ…!ほんと、ほんとにごめんね…」
2023-02-25 22:04:35エカチェリーナは座長の胸に飛び込むと安心感からわんわん泣き出した。 先程まで一度も泣かずにたった1人で耐えていたのだから無理もない。
2023-02-25 22:04:58イリスは抱き合う彼らを横目に、イダにも鋭い視線を飛ばすと強く叱責する。 「アンタも同罪だよ!子供ほったらかす親が何処にいるんだい!!」 「……っ…」
2023-02-25 22:05:36イダは何も言えないまま、バツが悪そうに視線を下げる。 スタスタとその場を後にしたイリスと入れ替わるように、シャンジュが彼の背中へ声をかけた。
2023-02-25 22:05:58「ねぇ?イダさん」 その声にハッと我に帰り振り向くと、彼女は後ろ手に持っていたガラス瓶を見せる。 瓶の中で揺らめく青い液体は、まさしく王芳が持っていた解毒剤であった。
2023-02-25 22:06:21「これ、大事な物でしょ?」 「っ!ありがとうシャンジュ殿…!でも、どうやって…?」 「どさくさに紛れて頂いたのよ。あの男、思ったより隙だらけね。それよりも…早く眠り姫さん達を起こしてあげたら?」
2023-02-25 22:06:45シャンジュは肩から落ちそうなパーカーの袖を直しながら解毒剤を手渡すと、視線で背後を示して促す。 「そ…そうだな…!本当にありがとう。」 イダは改めて彼女へ頭を下げると、眠っている団員たちの元へ急いだ。
2023-02-25 22:07:32何処か芝居がかったような愛らしい少女の声に振り向くと、マチルダが腰に手を当て誇らしげに胸を張りながら立っていた。 その隣ではフェオンが彼女の肩に手を置いて、ピースサインをしている。
2023-02-25 22:08:57「ええっ!?マチルダたちが!?」 そういえば謎を解いている間も終始姿を見かけなかったが、いつの間に出歩いていたのだろう。
2023-02-25 22:09:29