人魚症候群により両脚が癒着した状態で生まれた彼女は、イダによる大掛かりな手術によって今年に入ってから歩けるようになった。
2023-02-19 20:01:57目の前の存在に気を取られていた所為か、ネルは足元をよく見ていなかった。 …そう、地面にぽっかりと空いたどこへ続くか分からぬ大穴に。
2023-02-19 20:03:39───転がるように落ちた先で、彼女は目を開ける。 先程とは一風変わった、見渡す限りの不思議な光景が出迎えていた。
2023-02-19 20:05:16そこは、ピンクと紫の縞模様で彩られた木々が生い茂る奇妙な森。 辺りには大きなキノコや見た事の無い花々が咲き乱れ、うっとりするような甘い香りを漂わせている。 また、動物を象った植木が幾つか置かれており、森というよりは広い庭園に見えた。
2023-02-19 20:06:05スネアドラムの軽快なリズムが聞こえてきたかと思えば、木々の間からテンポよく日の光が…… もといスポットライトが差し込む。
2023-02-19 20:07:34「急がないとお茶会に遅れちゃうよ!はやくはやく!!」 頭上から跳ねるような明るい声が響き、顔を上げると…高い木々の間に括り付けられたロープの上を誰かが渡っていた。
2023-02-19 20:07:56そうして立ち上がったのは、白く長い耳にふわふわの尻尾。 大きな懐中時計を腰に下げた白ウサギ…… の格好をしたバンビがこちらに両手を差し伸べた。
2023-02-19 20:09:17ネルが促されるままにその手を取ると、バンビが出てきた舞台袖の反対側から凛々しい声が響く。 「モタモタしてたら終わっちまうぜ?」
2023-02-19 20:09:51そう言ってネルのもう片方の手を取ったのは、緑を基調としたタキシードに値札の付いたシルクハットを被ったリクニスだ。
2023-02-19 20:10:05いつの間にか中央には長い長いテーブルが鎮座しており、そこにはファンシーな柄のティーセットやパステルカラーのスイーツで溢れていた。
2023-02-19 20:11:08一際目立つのは人1人分くらい入りそうな程の大きなバースデーケーキ。 ピンクと白のバタークリームで飾られたそれがパカッと真っ二つに開くと、中で待機していたジェイドが姿を現した。
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