Obinata先生 固定資産の減損会計

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Obinata @tobin1022

減損の割引前キャッシュフローの見積期間について,最長20年(20年より先は打ち切って見積もらない)と誤解している学生がいてヒヤリ。最初の1巡目では立ち入らなくてもよい論点だと思うが,思い違いのまま進んでしまわないように祈りたい。

2023-02-21 15:30:20
Obinata @tobin1022

減損適用指針にいう「経済的残存使用年数」は,ASBJによる造語だろうが(指針に定義あり),それを定めた趣旨が少し怪しいまま,普及定着してしまったのではないかという,(漠然としているが)懸念を抱いている。

2023-02-21 15:32:22
Obinata @tobin1022

償却性資産の残存簿価の回収期間は, (A)残っている経済的寿命 (B)残っている財務会計上の耐用年数 (C)残っている税務計算上の耐用年数 のいずれであろうか? 適用指針では,(A)と(C)に言及されているが,(B)はなぜ無視されているのであろうか? そこに,どのような理屈があるのだろうか?

2023-02-21 15:56:39
Obinata @tobin1022

減損の適用指針の公表は2009年であるから,すでに相当使われている。その間,トラブルになったとか,論叢が生じたとかは聞かないから,なにも問題はないのかもしれない。減損処理には外側からは想像できない不透明な部分が多いといわれるが,この問題もそうなのかもしれない。モヤモヤしたまま。。。

2023-02-21 16:02:23
Obinata @tobin1022

論叢 → 論争 お詫びして,訂正します。

2023-02-21 16:07:39
Obinata @tobin1022

減損を機に,耐用年数を延長して,より長い回収期間を見込んで回収可能額を大きくし,減損損失を小さく抑えるという芸当は,厳格に禁じられているのであろうか。そういう芸当を容認するために,あえてグレーな書き方をしているという可能性も否定できないが,そう理解してしまってよいものか。。。

2023-02-21 16:06:46
Obinata @tobin1022

ひょっとすると,もう少し細かなルールが存在し,それがGAAPとして機能しているのかもしれない。かりに,それで秩序が保たれているのはよしとして,そのことを投資家はどのように受け止めているのであろうか? 信じているのか,それとも,疑っているのか?

2023-02-21 16:09:27
Obinata @tobin1022

日本の減損会計基準が手本とした,アメリカのSFAS 121 (1995) にも,公正価値測定を取り込んだ SFAS 144 (2001) でも,残存耐用年数(remaining useful life)という用語はなんども登場するが,経済的寿命(economic life)という用語は登場しない。 日本の会計基準を作るとき・・・記憶がない。

2023-02-21 16:19:52
Obinata @tobin1022

減損処理における将来キャッシュフローの見積期間は,償却性資産の場合には,それが費用化によって回収される期間ですから,残されている財務会計上の耐用年数が正解です。ただし,受験生は適用指針を覚えましょう。

2023-02-21 19:32:21
Obinata @tobin1022

ここにいう将来キャッシュフローは,「利子,税金および(減価)償却費」を控除する前の利益であり,日本の区分式損益計算で言えば,償却費控除前の(償却費を戻し入れた)営業利益を指します。企業にとっての事業価値という観点で,使用価値を計算します。

2023-02-21 19:34:55
Obinata @tobin1022

このキャッシュフローに見合う割引率は,企業固有の要素を勘案しているので,加重平均資本コストになります。株式だけの資本コストだと,分子から支払利息を控除しないと,平仄が合わず,その場合には,株主にとっての価値になってしまいます。

2023-02-21 19:36:34
Obinata @tobin1022

なぜ税金を考慮しないのかというと,「将来の適正な減価償却のための適切な残存簿価」を決めようとしているため,減価償却費のもつ節税効果を考慮にいれられないからです。ぐるぐると話が回ってしまうからですね。これは,便宜的なものです。

2023-02-21 19:38:12
Obinata @tobin1022

かくして, 現在の簿価  >割引前キャッシュフロー=償却前利益 となっていると,将来は,赤字になることがわかります。

2023-02-21 19:39:36
Obinata @tobin1022

割引前キャッシュフロー>割引後キャッシュフロー なので,左辺まで簿価を切り下げると,将来,割引率に見合う分だけ,償却後利益が得られる見込みとなります。その状態にして,残存簿価および財務諸表の信頼性を回復するのが,減損処理の目的です。

2023-02-21 19:41:44
Obinata @tobin1022

「なお,売却価値と比べていずれか高いほう」となっているのは,IASにあわせたためですが,これだと2番目のステップの存在価値が消えてしまいます。 それでも,売却価値で評価すると,将来は市場で平均的な利益率にみあう償却後利益が獲得できると見込めるようになります。

2023-02-21 19:43:43
Obinata @tobin1022

使用価値を計算するための割引率は,多様なものが制度上で認められています。これは,少しでも使用価値を大きくして減損損失を小さくしたいという経済界の要望を取り入れたものですが,建前では,「割引率の算定が難しので,わかりやすく,できるだけ客観的なもの」と説明して,お茶を濁しています。

2023-02-21 19:48:07
Obinata @tobin1022

さて,肝心の耐用年数ですが,そもそも,これをどのように見積もるかの会計基準はあってないようなものです。連続意見書第三と日本公認会計士協会の指針がありましたが,経済的耐用年数を個別に見積もるのが理想とされていたものの,税法上の耐用年数も認めてきたために,よくわからなくなっています。

2023-02-21 19:51:15
Obinata @tobin1022

耐用年数の見直しと,減損処理の関係ですが,この話はややこしいです。 ASBJは一定の解決をしていますが,多くの人には理解してもらってないようです。ASBJの説明が上手ではないからかもしれません。現在,「問題は生じ得ない状況」になっています。意識しなくても大丈夫。ラッキーですね。

2023-02-21 19:55:15
Obinata @tobin1022

誤謬は別にして,耐用年数の見直しによる変更は,すべてプロスペクティブ方式で処理されます。そのとき,スタートとなる簿価に誤りがなければ,それを残された耐用年数に割り振るだけです。

2023-02-21 19:56:44
Obinata @tobin1022

ということなので,その簿価は,減損処理後の簿価ということになります。つまり,減損処理が先になり,耐用年数変更の処理はそのあとということになります。臨時償却をやっていた頃は,減損とどちらを先にするかが争点でしたが,もはや争点ではなくなりました。昔の人が苦労して,解決してくれました。

2023-02-21 19:59:14
Obinata @tobin1022

のこされた問題は,減損を機に耐用年数を変更する場合,正当な理由になるか否かです。これは,当然に,ケース・バイ・ケースです。じつは,この問題は日本基準に固有の問題です。IFRSでは,毎期見直すことになっているので,見積りの変更といえさえすればOK。楽ですね。ただし,残すべき文書は多い!

2023-02-21 20:03:33
Obinata @tobin1022

減損処理も,原理原則はすっきりしているのですが,基準や適用指針を作る過程で,いろいろなノイズが入り,結果から基本原理を推測しようとするとできないような状況になってしまっています。だから,覚えづらい。教えるのは簡単ですが,覚えづらいので,受験生が気の毒になる領域です。

2023-02-21 20:08:01
Obinata @tobin1022

まったくの余談ですが,(A)会計ルールの数が多いとか,細かいところまで決まっているということと,(B)そのルールが(選択の余地が小さく,企業にとって自由度がないために)厳しいということは,別の次元です。

2023-02-21 20:15:01
Obinata @tobin1022

簡単な例。校則で,「本校指定の制服を着用すること」というのと,細かな制約はあるものの私服が認められているのと,比較してみてください。アメリカGAAPは膨大な量ですが,必ずしも,不自由さを強制するルールではありません。市場規律と自己責任,さらにプロの判断。これが神髄です。誤解なきよう。

2023-02-21 20:17:55
Obinata @tobin1022

キャッシュフローの見積もり期間。 20年を超える場合、21年度目以降は一定の状態が持続すると仮定して、21年度末の末の端点価値(ターミナル・バリュー)を計算する。(つづく)

2023-02-22 09:19:38