NaIのスペクトルからCs134,137のγ線強度をpeak fitで求める

大型のNaIシンチレーションカウンタを使って汚染検査が行われるようになったが、出来合のソフトは単核種を定量していたものの延長のようで、バックグランドの引き方や複数核種のBq数の導出に難がある物が多い。一方、測定の需要は高まる一方で、高感度ウエル型シンチと自動試料交換器を備えた機種等は使いこなせば極めて有効な測定装置になる。その生かし方の案内になればとまとめてみました。
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Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaIのスペクトルからγ線強度をピークフィットによって求める方法1) 普通の方法はスペクトル自身からバックグランドとピークの計数(面積)を選り分けて求めてその統計誤差とともに、効率、分岐比、補正を勘定してBq値を求める。

2011-11-07 18:25:53
Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI 2) 簡単には一次曲線のバックを引いて山の合計を勘定するが, 複数の核種のγ線が重なっている場合、それらの量の比や効率の比をあらかじめ決める必要がある。これはスペクトルをとれないタイプでやる補正と同様である。http://t.co/3CXnaJAU

2011-11-07 18:28:51
Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI 3) 複数のγ線が重なっている場合でも最小自乗法でピーク関数をフィットすることで独立に求めることができる。これは核物理の黎明期からの古典的方法である。森永・山崎の時代のインビームγ線測定はよくもこれを分けたと感心する。

2011-11-07 18:32:40
Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI 4) 今回のCs134,137の混合物のスペクトルからピークフィットでそれぞれの強度を求める手順を添付にまとめた。 http://t.co/p7HUip7A

2011-11-07 18:35:59
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Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI 5) この方法で比較的濃いCs134,137がそれぞれ3.4 Bq, 2.8Bqある場合の結果を添付に示す。上の図で濃い白線が3つのガウス関数と直線の和関数である。下図はスペクトル全体。 http://t.co/65zO1Q0B

2011-11-07 18:38:33
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Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI 6) クリーンな試料の場合の例。BGに若干偶発的な山が見えている。Cs134,137それぞれ0±0.05, 0.04±0.05Bqで有意には無いといえる。この場合の3σはそれぞれ0.15 Bqになるのでそれが検出限界に相当 http://t.co/iw5CTipg

2011-11-07 18:42:15
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Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI 6) 今度は強いK40の混ざったクリーン試料。Cs付近のBGがあがったのでCs134,137はそれぞれ0±0.12, 0±0.10 Bqと出た。この環境では検出限界はそれぞれ0.36, 0.30 Bqくらいになる。 http://t.co/Jdl5mEz5

2011-11-07 18:46:07
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Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI 7) これらの測定はパーキンエルマの古いオートγカウンタ1480の3”凹型NaIで20ccの試料を1時間測定したもの。効率の精密な校正と系統誤差の評価をすすめているところ。これで牛の尿や血液、乳などを測定してきた。

2011-11-07 18:48:51
Michiharu Wada @mw_mw_mw

単純に先程の例を観ると低バック試料で15Bq/kg, K40が413Bq/20g位ある時で20Bq/kg(15分測定)になりますが、実際はもっと厳しいでしょう。RT @kaztsuda: 15分の測定で測定限界50Bq/kgとのメーカーの回答でしたが、素のスペクトルで分析する‥

2011-11-07 21:39:40
Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI 8) 分解能が悪い問題は目的ピークに被るものがあると顕著だ。例えばBi214の609keV(45%)はCs134の604と区別不可。この場合は794keV側だけ使い604keVは137の661と分離する為だけに使う手がある。 http://t.co/4krkNAnn

2011-11-07 22:10:06
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Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI 9)Fitしないでバックを引く方法にバックを作っている優勢なγ線ピーク計数から寄与を計算して引くスピルオーバ法がある。しかしCs134のように多数のγ線を同時に出す核種では和の信号(ピーク同士に限らずコンプトンとの和)がバックをつくるので適用困難。

2011-11-08 09:40:25
Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI 10) とりわけ高効率検出器でCs134を測る場合、604keVと796keVのピークの和がK40の1460keVと被るので、K40起因のバックを勘定することができないため、益々難しくしている。

2011-11-08 09:42:52
Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI11)番外編。オートγカウンタ(旧型)で試料の交換の様子を、カバーを外して撮影しました。ここでは5本しかありませんが100個でも可。放っておけば黙って繰り返し測る。 http://t.co/NniQmCou

2011-11-16 13:04:07
Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI 12) コベル法。γ線ピーク計数を関数フィットによらず直線でバックを引いて求める方法も互いに被らない単独のピークの場合によく使われる。教科書に書いてあるが式の意味を解りやすく説明してみた。 http://t.co/dP4FEWVv

2011-11-20 22:54:47
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Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI13) 文科省の放射能測定法シリーズNo6「NaI(Tl)スペクトロメータ機器分析法」に書いてある単独ピーク計数法を使って統計が低いデータを解析している例が多いようだ。バックの引き方とその統計に誤りやすいと思う。 http://t.co/rInJi3bK

2012-01-05 16:59:40
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Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI14) 統計が低い場合でも誤回答し難いコベル法で実際にCs134,137の混合試料から定量する例。同じ設定でブランク試料でも正しい答えを出している。Fit法に比べてよりFoolsafeであり実用的だ。 http://t.co/fD47rP73

2012-01-05 17:05:39
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Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI15)検索して変な議論に驚いた。コベル法は環境γ線分析等で今も主力に使われている。データの統計が悪い場合や逆に統計が高すぎる場合「下手に」fitするより余程正しい結果を示します。これは実際に一度やれば直に解ること。後者の理由は今度試験問題に出そうかな。

2012-01-05 18:58:47
Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI16) Cs134とCs137の混合スペクトルからそれぞれの強度と誤差を求める方法。Cs134の600keV付近のピーク群とCs137の662keVが重なるので工夫が必要。600keV付近には環境γもあることに注意。 http://t.co/cNvfdM2I

2012-01-13 18:12:53
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Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI17) Cs134とCs137は空間線量への影響も摂取後の実効線量も異なるのであまり意味が無いがよく使われるので合計放射能を求めてみる。さらに強度が弱い場合にCs134だけ求めてCs137はその存在比から勘定する方法も検討した。 http://t.co/5h56oKxi

2012-01-15 07:06:11
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Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI18) バックグランドとブランク。γ線スペクトル解析でちゃんとピーク面積を勘定する場合、ブランク試料の測定はあまり重要ではない。一方検出器の汚染などでブランクに微小ピークがある場合には極めて重要。 http://t.co/wACSFvhB

2012-01-16 01:09:49
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Michiharu Wada @mw_mw_mw

NaI19) 先週某所での説明会スライド。NaIスペクトロメータでCsの定量の入門。http://t.co/qlEBOcTE

2012-07-13 09:50:23