未完成の理想郷9.5話「オラクル」

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未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

火山エリアの中でも一番高い山。 その山頂に2つの人影があった。 「え、サラマンダちゃん倒しちゃったの!?」 「……。」 薄い金髪、純白の衣装を纏った少女、そして、ガラスのような水色の透き通った肌をしている女型の魔物。

2023-03-31 21:30:00
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そう、自称“のんたん”と、転生者も遭遇したことがあるクイーンふあんふあんが、転生者たちとドラゴンの戦いを見守っていたのである。 「純粋な戦闘力だけならボスの中でも2番目なんだけどなぁ、サラマンダちゃん。それだけあのゴミくずの子たちも成長してるってことだよねぇ。」

2023-03-31 21:31:00
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およよと、泣き真似を数秒した後、のんたんは目を細めて特に何の変哲もない岩に向けて放つ。 「で、君たちは何しに来たの?」

2023-03-31 21:32:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「やはり気づいていたか。」 「……絶対的存在……パッチと同等レベルね…。」 岩陰から現れたのは、ミシュカトルとマーテル。 得意な隠密行動が全く通用しなくても驚きはない。自分たちとは異なるその圧倒的な存在感に触れた時から常識は通じるわけがないと割り切っている。

2023-03-31 21:33:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「えー、あんなのと同レベルとか言わないでよ~。」 「質問がある。」 軽々しいのんたんの様子とは逆に、剣呑な雰囲気を放つミシュカトル。 つまらなそうに溜息をつき、次の瞬間

2023-03-31 21:34:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「クインちゃん。」 「ふあ!」 クイーンふあんふあんに攻撃を命じる。 瞬間、自身の持つ大鏡から2つの光線が放出されるが、 「この程度。」 「…稚拙。」 それをミシュカトルは鎌を、マーテルが羽を使って防ぐ。 「お、武器の使い方も上手くなってるね。神力がちゃんと武器に通ってる。」

2023-03-31 21:35:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「流石に力の使い方も慣れてきたさ。」 武器を使用する時に使う力、神力。 転生者の身体を授かってから扱うことができるようになった力である。 ほとんどの転生者は無意識的に力を使っているため、その力の存在に気付いている転生者は少ない。 ミシュカトル、マーテルに、★兎、そして…

2023-03-31 21:36:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「ふーん、なかなか面白いね。じゃあ、その成長に免じて1つだけ質問答えたげる。」 退屈そうな顔から一転、楽しそうに笑いながらのんたんは質問を促す。 一緒に来ていた転生者たちがドラゴンと熾烈な戦いを繰り広げていたのは気配でわかっていた。

2023-03-31 21:37:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

だが、★兎たちが救援に動いていたことも同時に気付いていた。それならば自分たちの役割は増援に動くことではない。この人物と対話できる、こんなチャンス掴まないなんて嘘だろう。

2023-03-31 21:38:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「われらは生きるので精一杯だ。だから、これだけは聞いておきたい。」 「貴方に…聞いておきたいの。のんたん、いえ。」 本当の名は―

2023-03-31 21:39:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「へぇ」 のんたんの声が一段階低くなる。ただそれだけでかなりのプレッシャーが降りかかる。 「よく調べたね。そう、ボクこそNONAME、その化身だ。」 のんたんの正体が「NONAME」の化身だと気づいたのは単純にパッチとの戦闘を目にしていたこと、それと世界の仕組みを少しだけ知っていたからだ。

2023-03-31 21:41:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「で?質問って?」 「貴方の…目的は…文明?」 「質問ってより確認だね。」 わかってんじゃん、と少し関心したような様子ののんたん。 「……洞窟エリアで出会った……プロトタイプは姿を変えていた。…あれは、貴方の求めるものの成果?」

2023-03-31 21:42:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「そうだよ。プロトタイプ、ボクの一番最初の成功作だ。まだあの子には敵わないけどね。」 のんたんの目的は文明を作ること。プロトタイプは知能を持つ魔物。 つまり、プロトタイプは「NONAME」が自分の力だけで文明を築こうとしていた、まさしく実験体である。

2023-03-31 21:43:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「当たり前だ。星だけの力で文明を築けるなど…世界とは星と神、どちらが欠けても成り立ちはしない。」 神は文明を管理し、星は環境を管理する。

2023-03-31 21:44:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

本来、星が誕生した時に天界より適した神が派遣される。そこから神と星同士が結託して文明を築いていくのである。 しかし、現在「NONAME」に神は存在しない。 なぜならば

2023-03-31 21:45:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「神の派遣、ボク断ったからね~。」 「な…。」 「いや、だって、なんか他のポッと出のやつに自分が作り出した世界仕切られるの嫌じゃん。」 そんな感情論で…と唖然とするミシュカトルとマーテル。 そして、隣にいるクイーンふあんふあんを見て納得する。

2023-03-31 21:46:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「なるほど、神を追い払うために対神力としてそいつを作ったのか。」 「うん、ボクが直接作成した魔物は5体。君達がボスと呼んでる存在だね。その5体にはそれぞれ役割があるんだ。実験、対神力、統治、ボクの仕事の軽減、そして…」 「文明か。」 「まあ、それだけじゃないんだけど。」

2023-03-31 21:47:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

統治とは、今他の転生者たちが討伐したドラゴンのことだと推測できる。 のんたんと話してみて、魔物は全てのんたん、つまり星が生み出しているわけではないことがわかった。別の存在が魔物を生み出している、となれば、全ての魔物を管理することはできていないということ。

2023-03-31 21:48:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

あのドラゴンの間合いには他の魔物が一匹もいなかった。その圧倒的なオーラと力を見て弱い魔物が寄り付くはずもない。 その力を利用してのんたんが魔物を管理していたとうことは、岩陰に隠れていたときののんたんのセリフから検討がつく。

2023-03-31 21:49:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

他の存在についてもある程度理解はできる…と思ったが、まだ思考が足りていなかったようだ。 「それだけじゃない……まさか!」 何かに気付いた様子のミシュカトルだが、それを遮るように、 「はい、たいむあっぷ~。」 そう言い放つと今までとは桁が違うのんたんの威圧感が2人を襲う。

2023-03-31 21:50:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「……なっ!?」 「サービスし過ぎちゃったね。その分は申し訳ないけど取り立てさせてもらうよ。」 「われらは争いに来たわけでは…!」 「大丈夫、ボクは何もしないよ。それは流石にルール違反が過ぎる。でも、この子にその縛りはない。」 「ふあふあ~」

2023-03-31 21:51:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

ミシュカトルの言い分などお構いなしに、クイーンふあんふあんが大鏡を構えると、そこに光が収束していく。 明らかに今までと光の量が違う。 不味い…!そう思った時にはもう遅い。 「さて、君たちの絆、試させてもらうよ。ちゃんと糧になってね。」 「ふぁふぁふぁふぁふぁふぁ。」

2023-03-31 21:52:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「「………っ!?」 不気味な声とともに光が弾ける。 あまりの眩しさに最早目を開けているのかつぶっているのかすらわからない。 2人はその膨大な光の波に飲み込まれ、そして……。

2023-03-31 21:53:00