講座「感染症と文学」

コーディネーターである遠藤不比人先生による各回のまとめ。
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Fuhito Endo @melaniejiwoo

今日から始まった吉祥寺での公開講義「感染症と文学」の講師は小川君代先生。パンデミックは社会におけるケアの欠如を残酷なまでに露出するが、その中で文学がケアの意義を希望として描き出すという視点に感銘。このテーマはネガティヴなだけでないと得心。横臥者と直立者の視線の差も印象的だった。

2022-09-29 19:00:27
Fuhito Endo @melaniejiwoo

今日の「感染症と文学」のオムニバス講義でソンタグに準拠し「隠喩としての病」について話すのだがその関連で柄谷の「病という意味」も参照したがそのソンタグ批判は正しいのだけどなんだか個人的な感情が行間に読めるなあ。来日した際に話したが態度が甚だ悪かったとご本人から聞いたことがある。

2022-10-06 16:16:18
Fuhito Endo @melaniejiwoo

昨日の「感染症と文学」連続講義3回目の学部同僚による菊池寛「マスク」読解は面白かった。スペイン風邪流行の中でマスクを着用するか否かが「強者/弱者」という問いに繋がり語り手は弱者として強者を「憎悪」するのだがその弱者性に居直らない。その意味でこの短編は反=私小説となっていないか。

2022-10-14 11:09:30
Fuhito Endo @melaniejiwoo

今日の「感染症と文学」は中世日本文学がテーマで当然のように「無常」という話になりその脈絡で思いついたのだが「拘らない」という表現がこの思想に連なるとすればこの否定的用法が肯定化されて「拘る」という表現が積極的な意味を帯びるようになった現代的用法は無常感の喪失の反映かもしれない。

2022-10-20 18:58:50
Fuhito Endo @melaniejiwoo

吉祥寺の寄付講座「感染症と文学」の今週の河野真太郎さんの講義はウルフにおける個=病とある種の集合性が連帯する可能性を提示し『ダロウェイ夫人』『波』をR・ウィリアムズ『文化と社会』で再解釈する可能性を示唆。パンデミックの集合的罹患は分断でなく新たな集合性を生産する可能性も連想した。

2022-11-12 14:11:02
Fuhito Endo @melaniejiwoo

昨日の感染症と文学連続講義の鈴木晃仁先生は治験という論点からグローバリゼーションにおける搾取に医学史的に介入しつつHistory of Medicineのmedicineには医学のみならず医療の意味もあることを解説。このテーマに不可欠な議論で多謝です。

2022-11-18 11:17:32
Fuhito Endo @melaniejiwoo

今日の吉祥寺のリレー講義「感染症と文学」は同僚の塚田雄一先生。シェイクスピアにおいてペストが直接死因にならなぬが隔離という制度が生と死を分つ境界として機能する次第を『ロミオとジュリエット』に読みつつ個なる概念が未成熟な初期近代における共同体からの隔離の意味を思考させる刺激的視点。

2022-11-24 21:04:47
Fuhito Endo @melaniejiwoo

昨日の「感染症と文学」講義の巽孝之先生は初期近代の医師のマスクに由来する文学的系譜を環大西洋的に追いPoeにおけるマスクの背後の空無に注目し顔の記号論的恣意性に着目することで言語=隠喩のそれへと議論を接続し隠喩の濫用に見る感染力が歴史を生産する次第をド・マン的に喝破した圧巻の読解。

2022-12-09 11:09:17
Fuhito Endo @melaniejiwoo

本日の「感染症と文学」講義の柿並良佑先生は日本語の「コロナ」の記号論的曖昧性を指摘しその記号が事態を非/分節化する日本固有の問題を示唆しつつかかる哲学的介入が日本的平和(不/健康)に対する毒となるか薬となるかの決定不能性をデリダのプラトン読解に遡って思考する刺激的議論を展開した。

2022-12-15 23:18:47
Fuhito Endo @melaniejiwoo

本日の吉祥寺の「感染症と文学」の武田将明先生は『ペストの記憶』の多声的な語りの非一貫性にパンデミックという人知を超えた災厄を表象する言語の倫理性を読み無慈悲な匿名性において埋葬されながらもテクストに刻印される語り手の名の頭文字に歴史が抹消し切れぬ語りの意義を喝破する感動的講義。

2022-12-22 21:27:02
Fuhito Endo @melaniejiwoo

昨日の吉祥寺の「感染症と文学」講義では石塚久郎先生がヘミングウェイをめぐり例の「氷山理論」を援用しつつテクストがスペイン風邪を消去しつつ喚起する次第と詳細を精読するスリリングな読解を示された。ちなみにPalgraveから出版された単著が先方の編集者からの依頼だったと伺いさすがと感服した。

2023-01-13 18:11:19
Fuhito Endo @melaniejiwoo

吉祥寺の「感染症と文学」講義の最終回で阿部公彦先生は志賀直哉、C・ロセッティ、ディケンズにおける感染症の意味を意表をつく形で読みつつ志賀における男/女の語り、ロセッティにおける口唇的エロス、ディケンズにおける微細なものへの注視など阿部先生以外ではあり得ぬ読解を見事に披露した。

2023-01-19 22:35:49