何十何百という人々の前で、アタシは大きく息を吸った。大丈夫、きっと...ううん、絶対成功させてみせる。だってこのアタシが、
2022-02-01 17:36:293年生になって始めて主役をつとめる、春公演のことだった。演劇部に入って、きっとあれが一番幸せな時間だったのだろう。 ...だからなのだろうか。 今でもあの時が、あのスポットライトに照らされる瞬間が、ずっと忘れられない。
2022-02-01 17:41:08「...まったく、部室で寝るだなんて部長として不覚ね。気をつけないと。」 そう呟いて目を擦った。少しズレていた眼鏡をくいっとあげて、大きく背をのばす。早い時間だからまだきっと誰も来ていないだろうし、今のうちに発声でもして...
2022-02-01 17:42:26小さく柔らかい声で後ろから声をかけられる。 「め、めぐ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
2022-02-01 17:43:36思わず声をもらすと、めぐはビクッとした後「あっ、もしかして起こしちゃいましたか?すいません...」と困り眉のまま微笑んだ。
2022-02-01 17:44:18「今丁度起きたところよ!!そういえば...今日はひとりなのかしら?部活には萌と来ているって聞いたのだけれど...」
2022-02-01 17:44:48「あら、そうだったのね。ちなみに他のみんなは来ていないのかしら?」 「ええ、まだ…あっでも、そろそろ来るんじゃないかなって思います。今日はオーディションですし」
2022-02-01 17:46:25彼女は「...やっと着い、ッたぁ...、」と小さく零すと、そのまま椅子にもたれかかって汗を拭った。 「あら、おはようるあ!…もしかしなくてもだけど、...走ってきたの?」
2022-02-01 17:48:04「え、ええっ!?こんな暑い中をですか...?」 「?ええ、勿論そうだけど...それにしても、なんだか全然いない気がする…待ち合わせは8時って聞いたのに…今って8時半だよね?私、30分も遅刻したのに…......ぁ、もしかして、もう終わっちゃった...?」
2022-02-01 17:49:09…なるほど、そういうことか。 「ねぇ、...るあ?走ってきたとこ申し訳ないんだけれど…ミーティング開始時間は9時からよ」
2022-02-01 17:49:58