【GENSHIN】朱鷺町物語より【講談完結】

二次創作、茶博士劉蘇が旅人から貰った本からテイワットの物語を話す次回が聴ける講談です。
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次回お楽しみに @cha_boshi

狸とは一体何であろうか。野生動物?かわいいマスコット?その私の認識を覆したのが稲妻の歴史家狸氏の書いたという書物だ。 どうやら狸とはただの獣ではなく、非常に歴史の古い長命の妖怪に分類されるようだ。狸氏の話を読む限りでは稲妻の起こりと共に存在していたと言っても過言ではない。

2023-04-27 20:57:51
次回お楽しみに @cha_boshi

私も狸に化かされているのでなければ。と、但し書きが付いてしまうが。皆さんにも狸氏のお話を紹介させていただこう。 なんとも衝撃的な事実であるので、先に結論から申し上げてしまおう。稲妻に於いて現れた始めの凡人達は、己が何者であったのかを忘れてしまった狐狸や妖怪であったと言うのだ。

2023-04-27 20:59:48
次回お楽しみに @cha_boshi

その歴史とはこうだ。 航海術が発見されるよりずっと以前、くだんの島々は狸の国であった。

2023-04-27 21:00:38
次回お楽しみに @cha_boshi

狸と云う種族はものぐさで気まぐれ。悩みは一晩寝れば忘れ、明日を憂うこともないとは狸氏の書中にもあるが、大変に大らかな生活を送っていたであろう事は想像に難くない。真実、年嵩の狸達に言わせれば毎日がお祭り騒ぎであったというのだからね。

2023-04-27 21:01:59
次回お楽しみに @cha_boshi

ところがある時、狐達が海を渡ってきた。 狐が元々何処に居て、何故稲妻へわざわざ海を越えてやってきたのか。私としては、この辺りは非常に気になる所ではあるのだが、これは狸の歴史なので此方に記録がないのだろう。 そして狸と狐は同じ土地で暮らし始め、争うことになったという。

2023-04-27 21:04:18
次回お楽しみに @cha_boshi

そこからどうしてその様な事態に至ったのか。その話はまた次回にお話をしようお楽しみに。

2023-04-27 21:06:53
次回お楽しみに @cha_boshi

さて、昨夜は狸が元々暮らしていた土地に、狐が海を渡ってやってきて争う事になった所までお話したね。 生息域や獲物等生活環境が似通った動物が二種類になると言う事は、自然界においては折り合いの付く状態になるまで争うことになるのはいわば宿命と言えるであろう。

2023-04-28 20:57:58
次回お楽しみに @cha_boshi

狐狸の戦は八百年、また八百年と続いたとあるので単純計算でも千六百年は争っている事になる。一世紀半以上を争い双方ともに甚大な被害を出した。 そして遂に、両者は和平交渉を行う運びとなった。未だに狸は戦に負けていないと言い張ってはいるものの、雷櫻の巨木を狐の一族に明け渡す事になった。

2023-04-28 20:59:02
次回お楽しみに @cha_boshi

この案外に熾烈なもふもふ達の戦いの影響は現代でも発見できる。 鳴'神の大社の主や雷櫻の管理に関わる人々等おそらく、現在の狐一族の携わる状況を作った切っ掛けの出来事であるだろう。 雷櫻そのものが戦の原因だったのか、はたまた狸からぶんどってやるに相応しい力ある存在を欲しただけなのか…

2023-04-28 21:00:21
次回お楽しみに @cha_boshi

話を戻そう。狸は人を化かし、人をおちょくったりする描写の多い生き物だが、狸氏曰く、狐も悪賢く、変化(へんげ)を好むものである。だが八百年、また八百年と延々と化かし合いを続けていた争いの中でその変化による弊害が出てしまったというのだ。

2023-04-28 21:01:48
次回お楽しみに @cha_boshi

要するに、変化により目まぐるしく変化する環境に己が何者であったかを見失ってしまったのだと言う。そんな呆けた妖怪から生まれたのが凡人であると狸氏は本著で記している。 これは大変な驚きではないかな。姿は全く我々と変わらない島の人々が、遺伝学的に異なる流れを汲む可能性も出てくるからね。

2023-04-28 21:03:26
次回お楽しみに @cha_boshi

まあ、その話題にしたって狸氏も、もっと歳が上であろうお喋りな天狗から聴いた話であるからして、天狗のふかし話と云う可能性も捨て切れないがね。狸氏口伝の歴史話はこれにて。 次はこの天狗の話をするとしようか。それでは次回を楽しみに。

2023-04-28 21:05:18
次回お楽しみに @cha_boshi

さて、学術的なお話等は昨日までで終わろう。話の舞台は花見坂だ。その片隅に人間の知らない世界が有る。そこは朱鷺町と言った。妖怪の暮らす小さな路地裏でのお話だ。

2023-04-29 20:56:49
次回お楽しみに @cha_boshi

狸氏曰く、大天狗なるものはうぬぼれ屋で乱暴者。酒が入った後は特に最悪、らしい。だが、昨日言った歴史を語ったお喋りな天狗と恐らく同一人物である。大変興味深い人物のお話だ。 天狗は与一と名乗っていた。妖怪には変化の手段が有り、性別に意味などないのかもしれない。天狗は“彼女”であった。

2023-04-29 20:58:05
次回お楽しみに @cha_boshi

この与一は朱鷺町に店を構え酒を売ってはいるものの好き勝手放題に暮らしていた。 この妖怪も酒好きの例に漏れず、酒に強くはあったが酒癖がいかんせん、かなりの悪さだ。友達で居るのは楽しそうだが、一緒に飲みに行くと酔う前から此方の顔が青くなりそうな逸話しかない。

2023-04-29 20:59:08
次回お楽しみに @cha_boshi

狸氏曰く、酔って妖怪の集まりに乗り込み喧嘩を売る。凡人の少年少女を連れ込んで一緒に夜通し遊び騒ぐ。飛び入りで演劇の舞台に上がり込んで即興で天狗役をして主役をコテンパンにするなど、破天荒な話題に事欠かない。

2023-04-29 21:01:38
次回お楽しみに @cha_boshi

人間との交友関係も広く、妖怪としての位も高くなければとっくに退治されているとまで言われる。与一とはそう云うやりたい放題ができた天狗であった。 だがしかし、不思議と憎めなくて人も妖怪も一目置くそんな人物である。

2023-04-29 21:03:26
次回お楽しみに @cha_boshi

そしてそんな生活でありながら物には執着が無いのだと言う。この興味深い人物の紹介はどうやら一晩ばかしでは足りない様だ。大天狗与一の話は始まったばかり、次回をお楽しみに。

2023-04-29 21:08:35
次回お楽しみに @cha_boshi

与一は自堕落なうぬぼれ屋であるが、大妖怪を自称しており物への執着がない。今夜はそのお話から始めよう。狸氏曰く、あいつの部屋はなにもない。なるほど、残したいものとっておきたい物、惜しむべき家財がないのだ。

2023-04-30 23:11:27
次回お楽しみに @cha_boshi

金が入れば酒を買うか、八重堂で小説を適当に買って斜め読みして捨てる。豪放磊落と表現すれば聞こえが良いが、如何にも極端に感じる。 そんな与一が唯一手元に置く例外は腰に差している金の扇である。

2023-04-30 23:11:51
次回お楽しみに @cha_boshi

私の様な凡人からはどういう事か想像もできないのだが、大天狗とは幾多の世界を股にかける妖怪なのであるそうだ。 なので、その金の扇もまた与一のこの世界の外での戦利品なのだと言う。残念ながら、その謂れを狸氏に語ってくれたとき既に与一は着物がはだける程酔っていたけれど。

2023-04-30 23:12:19
次回お楽しみに @cha_boshi

とある世界の一つに与一が訪れた時のこと。彼女…いやここでは彼と言っておこう。 与一は不遜な若武者であった。弓手として傲慢な大将に仕えて戦に出た。与一の放つ矢はありとあらゆる敵を射抜いた。 凡人の侍も、狸が化けた忍びも、大柄な人喰い鬼も全てを射落としたのだ。

2023-04-30 23:13:17
次回お楽しみに @cha_boshi

あんまりにも痛快なので、大将も直接お声を掛けて褒めてやろうという気になって与一を呼んだ。 ハハハハ、名手なり、名手なり! 汝の雷光の如き眼差しはさながら大天狗のようじゃな!ハハハハ! 大将が高笑いしたそうだが、何とも可笑しい話である。

2023-04-30 23:14:36
次回お楽しみに @cha_boshi

そんな与一が一番に名を馳せたのはその戦において最後の合戦場での出来事であった。それは盛者必衰と詠われる戦いであるかもしれない。このお話の続きは次回をお楽しみに。

2023-04-30 23:15:11
次回お楽しみに @cha_boshi

赫赫たる戦果を語るのは華々しき戦さ話の常だ。ただどこまでが真実であるかと言うのは中々に判断の難しい問題だ。特に酒宴の席ではね。 この話に出てくる数字は、狸氏が計算して出した物だが、数字を出した本人は窓辺にもたれて吐きながらだったとくれば何とも。兎も角今日も続きをお話ししよう。

2023-05-01 21:48:52
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