稲川淳二の『つぶやき怪談』(2023.01.31)

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稲川淳二 @Junji_Inagawa

「明日のこの刻限にまた来るから、 今度は何を食ったろかいなあ」

2023-01-31 20:36:15
稲川淳二 @Junji_Inagawa

って言って帰っていったって。

2023-01-31 20:36:26
稲川淳二 @Junji_Inagawa

翌日------。 普通だったら逃げるでしょう?

2023-01-31 20:36:43
稲川淳二 @Junji_Inagawa

かみさん、鬼婆に会いたくないから逃げる。 でも、だいたい、民話は逃げないんですよ。

2023-01-31 20:37:03
稲川淳二 @Junji_Inagawa

それでどうしたかっていうと、 そのおかみさんがね、 普通、戸締まりくらいするでしょう?

2023-01-31 20:37:21
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そろそろ鬼婆が来るなっていう時刻になるとね、 なぜかカヤの実を持って、 つづらに逃げるんですよ。

2023-01-31 20:37:59
稲川淳二 @Junji_Inagawa

自分の家のつづらの中に。

2023-01-31 20:38:11
稲川淳二 @Junji_Inagawa

昔話にはつづらがよく登場するんですね。 わかりますかね、着物などを入れるやつ。

2023-01-31 20:38:34
稲川淳二 @Junji_Inagawa

つづら。 そこに隠れて蓋を、ふっ、と閉めた。

2023-01-31 20:38:49
稲川淳二 @Junji_Inagawa

ガタガタ、ガタガタッ、 戸が開く音がして、鬼婆がやって来た。

2023-01-31 20:39:10
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「うーん?」 女房がいないから、 おかしいなあと探し始めるわけだ。

2023-01-31 20:39:37
稲川淳二 @Junji_Inagawa

と、その女房がなぜか知らないけど、 つづらの中でもってカヤの実を、 カチッと音立てて食うんですよ。

2023-01-31 20:40:04
稲川淳二 @Junji_Inagawa

その音を聞いて鬼婆がえっ! と驚くわけだ。

2023-01-31 20:40:18
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「ああ、カヤの実でもって何かするんだなあ」 と思ったら何にもしない。

2023-01-31 20:40:39
稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、「おめえ、ここにいたな」 って言って、つづらをガッ! と開けると、中で女房が小さくなってる。

2023-01-31 20:41:18
稲川淳二 @Junji_Inagawa

鬼婆、それをむんずとつかんで外へ出しちゃった。

2023-01-31 20:41:29
稲川淳二 @Junji_Inagawa

出して 「いやあ、今日はおめえを食ってやろう」

2023-01-31 20:41:51
稲川淳二 @Junji_Inagawa

って言ってねえ、 そのおかみさんを足から食い始める。

2023-01-31 20:42:03
稲川淳二 @Junji_Inagawa

バリバリ、バリバリ、バリバリ----

2023-01-31 20:42:14
稲川淳二 @Junji_Inagawa

さんざん食ってから、 首のところまで来ると

2023-01-31 20:42:27
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「うー、腹いっぱいだ。頭は明日にしよう」 てんで戸棚をつっ、と開けた。

2023-01-31 20:42:45
稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、戸棚の段に女房の生首をぽんと置いてね、 「明日また来るからな」 って言ってぺたっと閉めちゃった。

2023-01-31 20:43:09
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