稲川淳二の『つぶやき怪談』(2023.04.27)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、黙って聞いてたら、 確かに聞こえるんですよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「ああ、聞こえる聞こえる」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

でも、回り見たら、 女の子なんて、いないんですよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

どう考えても、 今ボクたちがいた、そのお店ね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その建物の上から、蔦が絡んだ、 その建物の中から聞こえてくる･･･そんな感じがしたんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

気持ち悪かったんですけど、 まあ、次の取材がありますから、 タクシーを拾って、乗ったんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

私たちのタクシーの後にも、 もう一つ、空のタクシーが来てました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

私たちのタクシーが、 信号で止まったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうしたら、 その空のタクシーも横に止まったんですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その瞬間、 僕らは「フッ」と横見たんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうしたら、空のタクシーの後部座席の窓の、 せいぜい二十センチか三十センチの車の屋根とつながった部分に、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

“ヒョコッ” と女の顔が出たんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（ウッ）と思って横を見たら、 ディレクターが私の顔を見て、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「えっ」って顔すんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

確かに、そのタクシー誰も乗ってなかったんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

僕ら一緒にきて、信号に止まったんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その前に、客が乗った様子はないんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

赤いレインコートを着た女でしたよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

気にはなっていたんですが、 そのまま私らは、ロケにいきました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

取材が終わって、上野の不忍池の、 その店から出てきたんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうしたら、ディレクターが、 「稲川さん、あの人ってもう、ついてきてませんよね」 って、言ったんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

彼の後ろに電信柱があって、 その電信柱の横で雨傘さしてる、 赤いレインコートが見えてましたよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

彼もきっと見たんでしょうねえ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

私が、「ああ、もう来てないと思うけど」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って言った時に、電信柱の横に “ヒョコッ”って顔が出たんですよ。