稲川淳二の『つぶやき怪談』(2023.04.27)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、この坂道を降りたところに、 昔は某洋酒メーカーの建物がありました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

今は、あるテレビ局の敷地の一部になっていますがね。 そこにはね、池があるんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ほら、昔のサンマちゃんの番組で、 “ドッポンドッポン”落ちてるでしょ、その池。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

あそこはねえ、 乃木大将生誕の地でありまして、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その前をたどれば、 忠臣蔵の四十七士のうち、ふたりがね、 切腹前に預けられた場所でもあるんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

まあ、曰く因縁のあるところって言っていいでしょうね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

倉庫が建つそこにね、 その洋酒会社が、トンネルを掘っていたんですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

中にですねえ、お酒を貯めていたんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

戦時中には防空壕にも使われたって言うんですが、 まあ、要するにここも倉庫、蔵になっていたわけですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

トンネルの横からは、 道路につながっていました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

今はつながりましたけど、 当時はまだ、途中で止まった道路でしたね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その蔵なんかを使って、お店（バー）をやってるっていうんで、 取材に行ったことがあるんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

これは文化放送の仕事でしてねえ。 作家と、ディレクターと私とででかけましてねえ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

前から知ってはおりましたけどねえ、 蔦が絡んだ、すごい古い建物ですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

お店でね、飲んで、騒いで、しゃべって、 それで入り口まで降りてきたんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうしたら、 送ってくれたそこのマスターが言ったんですよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「でもここ、不思議なとこですよねえ･･･トンネルとかやっぱり、 恐い感じ、しますよねえ｣って。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

実はね、トンネルの中にも、 カウンターがあるんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それは昔、戦時中に防空壕になった場所だからなんでしょうね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

でまあ、取材が終わりましたんでね、 タクシーを拾って、 次の取材場所である上野に向かおうとしたんですねえ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうしたら、 「ハァハァァ〜」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

っていう、 唄うとも悲鳴ともつかない女の声がしたんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

一番最初に気が付いたの、私でしたよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「今、女の子がなんか悲鳴みたいの上げなかったか？」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って言ったら、ふたりが、 「えっ」て言ったんですよ。