【原神】神霄折戟録より【講談完結】

二次創作茶博士劉蘇の続きが聴ける講談です。
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次回お楽しみに @cha_boshi

昔々、崑崙が開かれ九つの大地がまだひとつだった頃の話。人々が暮らす地を「中洲」、神々の暮らす天の地を「神霄」と呼んでいた。ひとつ前の劫の終わりの時…つまり、ひとつ世界が終焉を迎える時、神魔の戦争が起き、神王が戦に敗れた。九つの地は業火に呑まれ、生き物の全てが灰燼に帰したのだ。 pic.twitter.com/gQqaFYgLpj

2023-05-23 21:28:20
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新たに世界が誕生し、生命は再び栄える。しかし、崑崙の道は固く閉ざされ大地は分かたれた。神王と邪険を巡る旅が今ここに始まる! 否、この物語は厠より始まるのだ。

2023-05-23 21:29:12
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「私は朝廷勅使、金紫光禄将軍の未央である。そこを開けよ!」 「金紫光禄は文官職だろ?」降って湧いた事態に弥耳は考える前に口に出していた。相手は顔を赤くして「辺境の下々に何が分かる!」と叫ぶが、弥耳は飄々と「ここ数年で官制が変わったのか?」と動じる気配がない。

2023-05-23 21:30:07
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すると、それを見ていたらしい佩刀した二人の武人が笑い出した。 「はははは! 都を発つ時の城塞の関所も突破できたというのに、こんな所で足止めされるなんてな!」どうやら武人の二人とこの眼前の顔を赤くした御仁は仲間の様だ。

2023-05-23 21:30:47
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酒屋の給仕の男は赤面する人物をじっと見つめてから合点がいったのか急にポン、と手を叩いた。「こちらの方は男装してるが女官様じゃないのかい!」 「おっ、兄ちゃん、鋭いねぇ」と武人が言う。

2023-05-23 21:31:40
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もう一人も口を開く。「彼女の官位は尚儀彤史。我々は金吾と羽林から選ばれた武官だ。金紫光禄大夫の命を受け、邪剣を探しに参った」 宮廷に仕える尚儀局の女官と辺境の地で出逢った弥耳。邪剣とは一体なんなのか。 このお話の続きは次回をお楽しみに!

2023-05-23 21:32:50
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さて今夜も続きをお話しよう。 一行は朝廷の遣いであった。 「金紫光禄…しょ、将軍はまあ嘘だが。朝廷勅使なのは本当さ」そう含み笑いが漏れだしている若い方の武人がそういって口元を歪ませる。世を欺く為の仮の身分というやつであろう。密命を受けて行動しているのだ。

2023-05-24 22:29:38
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弥耳は彼らの言うことを耳で捉えながらも、思考の海に沈む。 邪剣の事は耳にしたことがある。噂によれば五十六年前、空から鉄が降ってきた。神々の住まう天より来たからにはこの鉄も天に属するものである。

2023-05-24 22:30:11
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斯様な貴重な品は本来なら帝へ謹んで献上致さねばならぬ物であった。にも関わらず、この隕鉄を手に入れた刀鍛冶の風爺さんはこれを用いて剣を打ってしまった。それがくだんの九振りの邪剣である。また、この邪剣は人の心を操るのだと言われていた。

2023-05-24 22:31:17
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「そういう事か」弥耳は独りごちて厠の戸を閉めた。 これに慌てたのが男装を見破られてしまった未央である。厠の戸を叩いて、大きな声で、「なんでもいいから!さっさと出て頂戴!」と叫ぶのを、武人も実に紳士的に、つまりぼかして助太刀に入った。

2023-05-24 22:31:29
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「未央はおなごの身ゆえ、我々の様に草むらへ案内する訳にはいかぬ。すまんが早くしてやってくれ」 用を済ませた弥耳は、二人の武人と同じ席に着いた。羽林の武人は弥耳に興味津々である。しげしげと眺め、「こんな田舎の酒屋で朝廷官制に詳しい奴に会うなんてな」「兄ちゃん何もんだ?」

2023-05-24 22:31:52
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そう問われて弥耳は話す。 「父、米 聴仁は元、光禄寺卿だ。横領の罪により官位を剥奪された」 そして、ポリポリと顎を掻いてこうも付け加えた。「じじいと違って俺は朝廷へ戻り、米家の雪辱を注ぐ事を諦めていない」 さてこのお話の続きは次回のお楽しみに。

2023-05-24 22:32:13
次回お楽しみに @cha_boshi

場面は変わる。 縁あって一行と共に九振りの邪剣征刀の旅に出た弥耳であったが、間も無く空前絶後の危機に直面する。金吾と羽林の精鋭は賊人の持つ邪剣によって倒れたのだ。 この生命の瀬戸際に、弥耳はかつて父から伝えられた光禄寺の密呪を思い出した。

2023-05-25 21:39:48
次回お楽しみに @cha_boshi

言伝えによると、神霄におわす天帝には娘がひとりいる。その名は未だ明かされていないのだ。 弥耳の頭に父との記憶が過ぎったその時、彼女は未央の体を依代に顕現した。悪鬼と成り果てた賊人と邪剣、鶏しか殺せぬ弥耳この勝負の行方はいかに! という訳で、本日から神霄折戟録の第二巻に入る。

2023-05-25 21:40:28
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神降ろしをし体を彼女に乗っ取られた未央は随分と穏やかになった。しかし、同時に冷たくもなった。弥耳は心穏やかではない。 「うん、美味。」 そう言って彼女は弥耳の作った餡入りの餅をちまちまと食べ始めた。餅が熱かったのかぺろっと舌を突き出して口の中を冷ましている。

2023-05-25 21:40:51
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「すぐにはこの事実を受け入れられないな」弥耳はこの神降ろしを維持する為に片目を代償として差し出すこととなった。にわかには信じがたい彼女の話を聞きながら、自分も餅に手を伸ばす。 「お前が言うには…天から降った隕鉄は神の矛で、人間が折り九振りの邪剣を打った…」

2023-05-25 21:41:49
次回お楽しみに @cha_boshi

「で、こいつがその一振りである霧海剣である、と。それに加えて奴は既に剣を二振り手に入れている、と。」 「それで、お前は?」 弥耳の視線の先の彼女は答える。 「わたくしは、かつての天帝の娘。名は忘れたわ。審判と断罪を司る者。あなた方の言葉で言うなら刑律と言うのかしら」

2023-05-25 21:43:17
次回お楽しみに @cha_boshi

弥耳は全て承知で彼女の設定を受け入れる事にした。断罪の彼女は何を成し遂げようとしているのか、巻き込まれた弥耳の運命は?このお話の続きは次回お楽しみに。

2023-05-25 21:43:45
次回お楽しみに @cha_boshi

さて今日も続きをお話しよう。 光禄寺は祭司や儀典を取り仕切っている。弥耳も光禄寺に勤めた父から耳にタコが出来るほど聞かされ、祝詞を諳んじる事が出来る位の心得があった。 無論、怪力乱心についてもだ。神は真名を知られてしまうと人に使役されてしまうのだ 。

2023-05-26 21:27:59
次回お楽しみに @cha_boshi

恐らくこの目の前にいる人物も名を忘れた訳では無い。「そういう事」なのだろう。よって、弥耳はその設定をそのまま受け入れた。しかし、相手が誰であれ情報はしっかりと集める必要があるのだ。 「つまり、朝廷は神の矛を復活させようと言う訳か?」弥耳は彼女に尋ねた。

2023-05-26 21:29:29
次回お楽しみに @cha_boshi

「分からないわ。この体の持ち主は何も知らされていなかった。この者はただ…すごく怒っているわ。」彼女はそっと胸に手を当てた。 「なら、次は何をすればいい。神送りの儀式でもしてお前を帰したらいいのか?」弥耳は顔半分を覆う包帯に手をやる。しかし、代償にした目はもうそこにはない。

2023-05-26 21:29:57
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「そうしたら、俺の目は戻ってくるのか?」弥耳の声は陰鬱な響きを孕んでいた。今後の弥耳の計画が大いに狂う可能性があったからである。しかし、非情にも彼女はまるで弥耳の話など聞いていなかったかの様に、弥耳の顔を覗き込んで言うのである。 「ねえ、わたくしに名を付けて」

2023-05-26 21:30:57
次回お楽しみに @cha_boshi

先程まで食べていた餅のカスを口元に付けた彼女の顔が腹立たしい。米家再興の為にも弥耳は朝廷へ返り咲いてやるつもりなのだ。狭き門を潜るにはひとつだって瑕疵が有ってはならない。 「ふざけるな。文官殿試は帝が直々に審査するんだぞ。一つ目でどうやって光禄寺卿になるんだ!」

2023-05-26 21:31:49
次回お楽しみに @cha_boshi

「わたくしも、 絶対に神矛の九つの欠片を全て集めなければならないの。」彼女は言った。 「でなければ、いずれ世界は業火に燃やし尽くされてしまうわ。」弥耳は何も答えず、彼女を見ていた。

2023-05-26 21:32:56
次回お楽しみに @cha_boshi

そんな弥耳に彼女は言った。 「命の危険があるから着いてこなくて結構よ。でも…貴方の目はしばらく借りておくわ」 さてさて、このお話の続きは次回をお楽しみに。

2023-05-26 21:33:19