【原神】神霄折戟録より【講談完結】

二次創作茶博士劉蘇の続きが聴ける講談です。
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次回お楽しみに @cha_boshi

弥耳はなんやかんや言ったところで結局の処は彼女が心配だったのだ。 「お前を未央と呼ぼう。その体を使うならばそれが一番面倒が少ない筈だ。朝廷の牒文を持っているから国中旅するにも問題ない。」弥耳は未央と共に旅に出た。 二人は妖魔と戦い五振りの邪剣を手中に収めた旅は順調に見えたが…

2023-05-27 22:32:28
次回お楽しみに @cha_boshi

往々にして旅の困難とは後半に訪れるものである。今日も続きをお話しよう。 「俺がしてやれる事はこれ位しかない」 弥耳は出来上がった料理を机に置くと未央の向かいへ座った。先程の死闘で右腕を折ったのである。包帯が巻かれた腕は使い物にならない。

2023-05-27 22:32:36
次回お楽しみに @cha_boshi

未央は反対の手で頬杖をつき黙って、少々の期待を視線に混ぜながら弥耳を見ていたが、期待通りとはならず左で箸を持ち始めた。未央は試しに羹に入った肉団子を掴もうとするが、肉団子が逃げていきパチリ、パチリと箸と箸がぶつかる微かな音だけが妙に良く聴こえる。

2023-05-27 22:32:44
次回お楽しみに @cha_boshi

「貸してみろ」 弥耳はため息を吐くと未央の箸を奪い取り、そして手際良く料理食べ易い大きさにして未央の口元へ差し出す。 「貴方が私に出来る事はもっと在るわよ」 何口か料理を頬張った後、未央は突如言った。いつも通り、弥耳には未央の表情からその感情が読み取れなかった。しかし…

2023-05-27 22:32:53
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「光禄寺の主はお前達の様な神々への奉納や祭事を任されている。つまり、お前の世話をするのが俺の本職だ。」神々が争いを始めたら俺達人間は眺める事しか出来ない。後ろ半分は内心に秘める。口にする必要などない。

2023-05-27 22:33:00
次回お楽しみに @cha_boshi

「お前は矛とか剣を浮かせて操って闘っていたじゃないか。それで箸を使えよ。」 さて、物語は後半へ続く。彼女の能力とは、次回をお楽しみに。

2023-05-27 22:33:07
次回お楽しみに @cha_boshi

世話してやるのが我が本職よと、言ってはみたものの、弥耳は未央が武器を自在に操り宙に浮かせるのを見ている。 それならわざわざこんな事をしてやらなくてもよかったではないか。弥耳はそう思った。 故に箸にも使ってみろと言ってしまったのだ。今日も続きをお話しよう。

2023-05-28 22:15:55
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「あれは、お父様から授かった技よ。わたくしにのみ扱えるもの。断罪の宣言と律令を下す為にある、易く……易く用いるべきじゃないわ」 未央は言葉の最後の方で声が明らかに震えていたのだ。 故に、弥耳は話題を変える事にした。 「あいつが死ぬ前に、うちのじじいの事言ってたのも胡散臭かったな。」

2023-05-28 22:16:25
次回お楽しみに @cha_boshi

弥耳は指を擦り合わせて思案する。 「米光禄寺の身は潔白でも冤罪でも無いって、一体どういう意味だ?」 弥耳は少々疑心暗鬼に陥っていた。もしだ。もし、朝廷に神矛を復活させる意図が無かった場合。未央に憑依しているこの皇女の側にいると、朝廷へ仇なす事になりうる。

2023-05-28 22:17:42
次回お楽しみに @cha_boshi

そんな弥耳の思考を見抜いたのか、蝋燭に照らされた顔が暗くなる。 「わたくしの手助けをする必要はないわ。ただの人間が朝廷を敵に回すのは得策ではないもの。」 要らぬと言われてすごすごと引き下がれるものではない。迷いが出てしまっただけだ。 「黙れ。先にじじいを探して話を聞くぞ。」

2023-05-28 22:20:20
次回お楽しみに @cha_boshi

「あら、南方にいる御父上を訪ねるの? なら明日はまず、着物と口紅を新調するわ」弥耳は嫌そうな顔をして鼻に皺を寄せる。 「くそじじいの顔を見に行くだけだ。必要ない。」しかし、未央も珍しく頑固だった。 「貴方の責務なのでしょう」 このお話の続きは次回をお楽しみに。

2023-05-28 22:20:54
次回お楽しみに @cha_boshi

オドロキの超展開! 「息子よ。よく聞け、私はそなたの本当の父親ではない。」戦いに敗れ今際の際に米光禄寺卿は弥耳に伝えたのであった。 光禄寺卿とは世を忍仮の姿。かつて米光禄寺は阿修羅であった。冤罪による都落ちすらもが芝居である。全てはこの天帝の娘を守る為であったのだ。

2023-05-29 22:03:55
次回お楽しみに @cha_boshi

「生前の神霄天帝は我が友であった。しかし、それもかつての話。今や万物の敵に堕ちた。殿下がそなたに守られているならば我も安心して逝ける。」父はそう言い残した。 そんな二人の前に立ちはだかるは邪剣に魅入られず剣術を使い熟す武人である。今夜も続きをお話しよう。

2023-05-29 22:04:21
次回お楽しみに @cha_boshi

こんな状況は、恐らく法術の達人であったも打開できないであろう。 「この炎邪剣『白牛火宅諭品村正』は神の火である陀羅尼の欠片から錬成されたのだ」そう話す武人は邪剣を握って今も尚理性を保っている。常ならば、邪剣に魅せられた者は皆心を奪われ、己の事も学んだ武芸も忘れてしまう。

2023-05-29 22:04:45
次回お楽しみに @cha_boshi

この武人はいかにして神の力に匹敵するものを使っているのであろうか。 未央は斬られた肘を抑え、燃え続ける灼熱の空気を吸い込んだ。呼吸を整え形勢を立て直すのだ。しかし未央の呼吸は荒くなるばかりである。いつもなら直ぐに傷が治せるのだが、邪剣の尽きぬ炎が傷口を焼き続けている。

2023-05-29 22:05:15
次回お楽しみに @cha_boshi

血を流しすぎたせいで未央の視界がかすみ始める。倒れるわけには… その時、未央を庇う様にして弥耳が前に立った。 「色々聞きたいという顔をしているな。 死ぬ前に教えてやろう。俺がお前の父親を殺したのは、奴が神王の復活を邪魔立てするからだ。」このお話の続きは次回をお楽しみに。

2023-05-29 22:05:38
次回お楽しみに @cha_boshi

世界を燃やし尽くした炎が再び燃え上がり、世界を覆うかと思われた。しかし、弥耳と未央の二人は見事邪剣を集め神矛を復活させた。今ここに世界の平和が齎されたのである。 だが、平和というものはなんとも儚い。世界を守る為の戦いが終われば、次は人間が敵になる。今日も続きをお話しよう。

2023-05-31 22:20:16
次回お楽しみに @cha_boshi

武官の中には崑崙を開きたいと思う者が数多く存在する。世界が再び混沌に堕ちれば武人は必要とされるからだ。伝説の阿修羅戦争の再来か!?文官と武官の思惑と古の神々の計画、再びの世界の危機に弥耳は朝廷へ舞い戻った。 弥耳はお褒めの言葉を下さろうとする太子と謁見する運びとなったのだ。

2023-05-31 22:21:01
次回お楽しみに @cha_boshi

「大義である。」 「そなたの働きにより民が救われた。」 太子は手を背に回して、跪く弥耳の周りをゆっくりと歩いて、ちらりと弥耳へ視線をやる。太子の直接のお言葉ではあるが、弥耳はその言葉に何の感慨も浮かばなかった。 「神矛を差し出せば、三十日後には光禄寺卿の座はそなたのものだ。」

2023-05-31 22:21:17
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「望むのならば、内閣筆頭の首輔の位も十年以内に用意しよう。」太子は椅子に腰掛けて鷹揚に言った。「どうだ?」 弥耳は意地悪くともすれば無礼と咎められそうな言葉で返す。 「私めは殿下より『直答を許す』とは言って頂いておりませぬ。お言葉を返すのは恐れ多き事であります。」

2023-05-31 22:22:03
次回お楽しみに @cha_boshi

「そなたは私に『直答を許す』と言えと命令しているのか。ならぬ!将来この国を統べる──」 「ごちゃごちゃうるせえ、茶番は終わりだ。」太子の言葉を遮る弥耳は、御前で許可無く格好を崩した。 文官になりたかったはずの弥耳。太子への無礼は許されるのか。このお話の続きは次回をお楽しみに。

2023-05-31 22:23:14
次回お楽しみに @cha_boshi

今日も続きをお話しよう。 「未央は?」弥耳はさり気ない風を装って太子へ尋ねた。 「見事な働きだったからな、女官の位を尚儀へ昇格させた。あの者は父親の金紫光禄大夫の陰謀とも無関係であった。悪いようにはせん。」未央が邪剣を得る為に旅に出たのも、彼女の父親の命によるものであった。

2023-06-02 21:57:40
次回お楽しみに @cha_boshi

弥耳はとても変な感じがしていた。 本当に知りたいのは『彼女』の事だったから。これでいい……自分に納得させようとする。しかし、目が返ってきたのにまだどこか体の一部が足りない様な気がしてならない。 しかして、この後は急転直下の展開となる。

2023-06-02 21:57:59
次回お楽しみに @cha_boshi

ー私が全てを託した娘よ。そなたを創り出したのは、私にその矛を突き立てる為ではないかー 蘇りを果たした神王は空高く浮かび雷鳴が轟き、竜巻の吹き荒れる。世界の王の復活を祝福していた。 だが、彼女はもう恐れはしない。幾千万年をかけて創られたのは正にこの時の為であったから。

2023-06-02 21:58:22
次回お楽しみに @cha_boshi

否──弥耳と過ごした時が、彼女に勇気を与えていた。 神王は己の死後に起こるであろう混乱に備えて、最後の聖なる矛「断罪の皇女」を創り出したのだ。 九つの世界を繋げ、崑崙を貫いた最初の矛「エルミン」の無数の複製品が空を埋め尽くしている。 今ここに、彼女は完全体となったのだ!

2023-06-02 21:58:36