ビースト・オブ・マッポーカリプス 後編 #9

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆◆◆ 17

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キンカク・テンプルは頭上で冷たく自転を続け、近づこうとする蔦を受け入れようとはしない。それでも蔦は昇り続ける。カリュドーンの獣と狩人を伴って。青い色彩が下方にあり、グラデーションとともに黒色に変わる。音は遠くなってゆくが、笛の音と、土の、花のにおいが絶えることはない。　18

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蔦と地衣類と花々が織り合わさって、鉢めいた足場が形成されていた。そのあちこちで、クロヤギめいた蠢きは、キンカク・テンプルを求めるように姿を成しては、維持かなわず消えてゆく。「焦ることはない」アヴァリスはニンジャスレイヤーを見据えたまま、クロヤギに語りかけた。「あれは俺のものだ」19

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「コフッ、コッ」ニンジャスレイヤーは呼吸を試み、首を振り、胸を殴りつける。砕けた喉から血が滴り、弱々しく燃える。アヴァリスは彼の反撃を試すように歩を進める。「お前の力の源は途絶えたか？だいぶ痛かった筈だな」「……」ニンジャスレイヤーは喉を押さえ、うずくまるように前傾した。　20

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「随分遠いところまで来た」アヴァリスは前傾するニンジャスレイヤーから目を離さず、カラテ姿勢を維持した。攻撃の兆しがあれば即座に対応する為に。「何処にオクダスカヤーノフがあるのか、もはや見えもしない。だが匂いはあるな。お前が居るからだ」答えるように、嘶きめいた風が吹いた。　21

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「獣は贄であり、獣の討伐は俺のイサオシだ。カリュドーンのイサオシを以てすれば、キンカクに届く」アヴァリスの全身が微かに震動している。奪った力が彼の巨躯の中で黒く混ぜ合わさり、カラテを生み出す。ニンジャスレイヤーは不意に顔を上げた。左手鉤爪で根を深く掴み、右手で己の胸を殴った。　22

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ドシッ。……ドシッ。胸を殴るドラミングじみた音が、花々を、苔を震わせる。殴るたび、ニンジャスレイヤーの背中に黒炎がのたうつ。ニンジャスレイヤーはアヴァリスを睨み、固く握った拳の力を強めた。拳の骨が軋むほどに。アヴァリスは動いた。彼は地を蹴り、上から襲いかかった！「イヤーッ！」　23

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アヴァリスは落下しながら腕を振り下ろす！ニンジャスレイヤーの頭を掴み、捻り潰す為に！「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは全身全霊じみて、振り上げた拳を、己の胸に叩きつけた！黒炎は全身の傷口を破って噴き出しかかる！ニンジャスレイヤーは力を込めて押し留め、さらに胸を殴った！　24

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KRAAAACK！アヴァリスはニンジャスレイヤーを掴んで叩き潰した。否、爆ぜ砕ける硬質植物の嵐の中から飛び出したのは赤黒の風だった。ニンジャスレイヤーは身を翻し、再び地面を鉤手で掴んで前傾した。彼は燃える血の帯を喉元から迸らせていた。血は黒炎と化し、周囲を漂い、背中の傷に吸い込まれる。25

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傷口から噴き出す血、その血流が体内のカラテの流れを生み出していた。燃えながらカラテと共に吐き出された血は、黒い火の粉となって、再び体内に吸い込まれ、戻っていった。奇妙な循環が作り出された。僅かな時間の内に、ニンジャスレイヤーの装束は黒炎そのものに置き換わっていた。　26

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「ナラク。聞こえるか」マスラダは呟いた。ニューロンの中で、邪悪なニンジャソウルが木霊を返した。マスラダは頷いた。アヴァリスが振り返った。「イヤーッ！」そして黒いスリケンを投げた。スリケンは空中で突進するクロヤギとなり、マスラダを襲った。「イヤーッ！」マスラダは急加速した！　27

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「「イヤーッ！」」拳同士が衝突した。二者は衝撃によってタタミ３枚距離を離れた。アヴァリスは沸騰する肉体に力漲らせ、黒炎を身にまとうニンジャスレイヤーを見た。両腕を振り上げ、叩きつけた！「イヤーッ！」「イヤーッ！」KRAAASH！ニンジャスレイヤーは両拳で殴り返していた！　28

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二者の間合いは再び離れた。アヴァリスは左手、右手とすくい上げた。二枚のスリケンが二体のクロヤギとなってニンジャスレイヤーに突進する！「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは足元を爪で刳りながら身体を回転させ、腕を引き抜き、イアイじみて薙ぎ払った！「AAAARGH！」クロヤギが断裂！　29

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「イヤーッ！」突進したアヴァリスがニンジャスレイヤーの顔面を蹴り上げる！ニンジャスレイヤーは蹴りを顔面で受けながら、その勢いをも取り込んで、極度高速回転！「イイイイヤアアーッ！」メイアルーアジコンパッソから、飛び回し蹴りアルマーダマルテーロを繰り出す！黒炎の竜巻！　30

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「イヤーッ！」アヴァリスは腕をかざし、蹴りを受けた。硬質の弾力がダメージを殺し、彼は無傷のまま後ろへ滑った。ワザを繰り出し終えたニンジャスレイヤーは余波で更に回転した。全身をカラテと化し、循環を生み出し、生命力を強引に駆動させる。赤黒のスリケンが無数に飛び出す！「イヤーッ！」31

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「イヤーッ！」アヴァリスが薙ぎ払うと、クロヤギ達が瞬時に育ちながら群れ走り、赤黒のスリケンに砕かれた。相殺！アヴァリスは突進し、丸太めいた蹴りをニンジャスレイヤーに叩き込む！「イヤーッ！」「イヤーッ！」KRAAASH！腕を翳し蹴りを受け弾かれたニンジャスレイヤーは勢いのままに旋回！　32

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「イヤーッ！」すり鉢状の植物を駆け、赤黒の炎は別確度からアヴァリスを強襲した。「イヤーッ！イヤーッ！イヤーッ！イヤーッ！」短打！右左右左！「ハハハハハハ！」アヴァリスはショートフックを受けながら笑い出す。邪悪な弾力が衝撃を殺し吸収してしまう！「イヤーッ！」大剣めいたチョップ！　33

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「グワーッ！」袈裟懸けのチョップを受け、ニンジャスレイヤーは赤黒の炎となってアヴァリスの足元に撒き散らされた。そして炎溜まりから噴き上がった！「イヤーッ！」無論、それは錯覚めいた動きだ。打撃を受けながら地を這うように身を沈め、ウケミめいて地面に衝撃を散らし、跳び上がったのだ！　34

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「イイイイヤアアアアーッ！」一打！二打！三打！飛び上がりながら、ニンジャスレイヤーは回転飛び肘打ち、飛び回し蹴り、飛び回し二段蹴りを叩きつけた！さながらそれはジゴクの黒い風が有角の半神を咎め挑みかかるが如し！アヴァリスは打撃に耐え、頭を掴み……投げ飛ばした！「イヤーッ！」　35

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KRAAASH！すり鉢の一角が吹き飛び、植物が黒く燃えた。炎の中でニンジャスレイヤーが身じろぎした。「イヤーッ！」アヴァリスは己の脇腹の肉を刳り、スリケンじみて投げつけた。肉はクロヤギの姿をとってニンジャスレイヤーに突進し、直前でアヴァリスそのものと化して、殴りつけた。「イヤーッ！」 36

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「イヤーッ！」殴られながら、ニンジャスレイヤーはクロヤギ・ブンシンの胴体を貫き、裂き広げた。裂き広げた先にアヴァリスがいた。アヴァリスは頭上に組んだ手をハンマーめいて振り下ろす！「イヤーッ！」「イヤーッ！」KRAAAASH！炎が爆発し、火の粉がニンジャスレイヤーとなって跳び上がった！　37

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「イヤーッ！」アヴァリスはニンジャスレイヤーの回避地点を読んでいた。叩きつけられた蹴りを受け、ニンジャスレイヤーは吹き飛んだ。そして……「イヤーッ！」すり鉢の端を刳り、炎を切りつけ、燃やしながら、ルーレットのボールじみて旋回し……トビゲリで戻る！「イヤーッ！」　38

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「ヌウーッ！」アヴァリスはカラテを漲らせ、トビゲリを受けた。時間が凝縮し、ゆっくりとアヴァリスの胸筋が波打った。肉体にいまだ残る赤黒の亀裂が光った。ニンジャスレイヤーは目を見開いた……「イヤーッ！」「グワーッ！」ニンジャスレイヤーは弾き飛ばされ、すり鉢で跳ねた。　39

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ナムサン！そのまま樹の外の宇宙空間へ零れ落ちてしまうかと思われたとき、かろうじて彼は手を突き刺し、勢いを殺して留まった。……宇宙空間？然り。伸び続ける蔦群は成層圏を超えつつあった。音が極めて遠くなり、ニンジャスレイヤーの身体が霜に覆われ始めた。　40

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アヴァリスも同様だ。彼は己の身体を見下ろし、微笑んだ。(((……マスラダ)))睨むマスラダのニューロンに、ナラクの声が響いた。（戻ってきたか。ナラク）(((如何にして凌ぎきった？)))（おれ自身をカラテにした）(((……愚かな……否……まずは良しとするか。ここは極限の地)))ナラクは唸った。　41