ビースト・オブ・マッポーカリプス 後編 #9

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((オヌシは星の海の只中に落ちようとしている。空気は果て、万物が凍りつく。対処せねばならぬ)))喉の傷が極度の熱で溶け、かりそめに溶接された。その熱もしかし、霜に覆われてゆく。極限状況下、かつてのニンジャスレイヤーの記憶がフラッシュバックし……ナラクの黒炎が……宇宙服を生成した。 42

2023-05-27 16:54:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

赤黒く燃えるその姿は、たとえばこの時代にKOLの軌道エージェントあたりが用いる宇宙装備とは到底比較にならぬ、鈍重なシルエットの宇宙服であった。しかし真空状態から命を守るには充分な防備であった。「……」無音空間と化した大樹頂上のすり鉢を、ニンジャスレイヤーは跳ねるように動いた。 43

2023-05-27 17:03:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一方のアヴァリス。おそらく真空の作用によって全身を沸騰させながら、いまだ彼は環境に適応しきれずにいた。(((フーリンカザンはこちらにあるぞ、マスラダ。奴が動けぬうちに決着をつけよ!)))「…!」黒炎宇宙服のニンジャスレイヤーは腕を突き出し、フックロープを投じた。燃える縄が敵を捉える。44

2023-05-27 17:07:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……!」「……!」アヴァリスは手を翳した。ニンジャスレイヤーはフックロープを巻き上げながらアヴァリスに接近し、蹴りを繰り出した。「……!」「……!」蹴りがアヴァリスの脇腹に入った。反動で弾かれるも、フックロープによってすぐさま飛び戻る。「……!」「……!」拳を叩き込む。 45

2023-05-27 17:10:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……!」「……!」もはやニンジャスレイヤーはアヴァリスにラッシュ攻撃を繰り出しにかかっていた。「……!」「……!」「……!」「……!」二打、三打……四打目の拳を振り上げた時、ニンジャスレイヤーは、アヴァリスの足元に咲き乱れる異色の花に気づいた。アヴァリスが笑みを深めた。 46

2023-05-27 17:13:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドクン。ドクン。鼓動音が徐々に大きくなる。アヴァリスの心臓の音が。即ち、空気が戻ってきている。花々は今やアヴァリスの黒緑の肉体にも拡がり、この世ならぬ花弁を広げている。「……イヤーッ!」「イヤーッ!」アヴァリスはニンジャスレイヤーの打撃を止めた。植物の天蓋が完成していた。 47

2023-05-27 17:17:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なんと素早い適応だ、獣よ!俺を上回るとは」アヴァリスは感嘆してみせた。「……だが、こうなれば、もはや鈍重だな、それでは。イヤーッ!」「グワーッ!」ワン・インチ・パンチを受け、ニンジャスレイヤーは吹き飛ばされた。転がり、起き上がる。ミシミシと音が鳴り、鈍重宇宙服が軋む。 48

2023-05-27 17:20:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

歩を進め間合いを詰めるアヴァリスの身体から、異色の花々の花弁がボロボロと溢れる。今や彼らのバトルフィールドには花々が咲き誇っていた。(((この大樹だ。此奴は大樹から必要に応じ力を引き出すか。大樹はスゴイタカイビルに根を下ろし……)))「スゴイタカイビル」マスラダは繰り返した。 49

2023-05-27 17:25:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」アヴァリスは黒いスリケンを立て続けに投じた。「GRRRR!」スリケンは次々にクロヤギと化し、ニンジャスレイヤーに襲いかかった。ニンジャスレイヤーは右手を高く振り上げ……「イヤーッ!」足元に振り下ろした。「GRRRRRR!」「GRRRRR!」クロヤギの群れが容赦なくのしかかる! 50

2023-05-27 17:28:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドクン!ドクン!今度はニンジャスレイヤーの鼓動が空間を鳴動させた。アヴァリスはクロヤギによる蹂躙を前に、だが次なる攻撃準備のために腰を落とし、必殺のカラテ姿勢をとった。ニンジャスレイヤーは植物の根に深く突き刺した手を、握り込んだ。ドクン。ドクン。鼓動音は彼一人のものにあらず。 51

2023-05-27 17:31:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスラダは、高く高く伸びた大樹、巨大蔦の集合に意識を伸ばした。その根が地下深くに侵食し、ビルの下、地下空洞を取り囲んでいるさまを、その目で見るように感じ取った。有線LAN直結めいて、彼は大樹を伝い、地下空洞に祀られた鈍色のオブジェクトを……ギンカク・テンプルを感じ取った。 52

2023-05-27 17:36:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

僅かな時間、彼は大樹そのものとなったかのように、その内に囚われたビルの中で蠢く存在を感じ取った。ティアマト。ティアマトと必死で戦うニンジャ。そしてコトブキ。「……」マスラダは深く、深く潜った。ギンカク・テンプル。混濁したモータルの意識の波が、彼の自我に押し寄せた。 53

2023-05-27 17:40:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

地上から遥か遠く離れたこの場所は、とても静かで、澄んでいる。マスラダはギンカクに接続し……そして……引きずり上げた……「イヤーッ!」……現実時間の経過はごく僅か。クロヤギの群れが食らいつき、押し潰す、軋み、壊れる宇宙服が……マスラダの身体に……瞬時に圧着され、融解した。 54

2023-05-27 17:44:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」内なる熱によって融解した黒炎は、たちまち燃える布じみて織り上げられ、ニンジャスレイヤーの赤黒の装束を生成していた。彼はカラテを爆発させた。極限まで高まった彼のニューロン主観時間下、クロヤギ達は宙に跳ね上げられて静止していた。そしてアヴァリスが迫り来ている。 55

2023-05-27 17:49:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは……跳んだ。頭上に散ったクロヤギを蹴り、破壊しながらトライアングル・リープし、次のクロヤギを蹴り壊して再度跳んだ。稲妻じみた反射軌跡を焼き焦がし、ニンジャスレイヤーはアヴァリスを空中から迎え撃った。最終ラウンドのゴングが……「「イヤーッ!」」鳴った! 56

2023-05-27 17:53:53