テイワットでの出会い

旅人がであった印象に残った人々や出来事について。時系列はバラバラです。
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次回お楽しみに @cha_boshi

これは我々破門された元門下生の仁義である。仇よ。旅人よ。お前のことは聞いている。流派の汚名は剣士の血でのみ雪がれるのだ。岩蔵流免許皆伝の腕を受けよ。 柳葉嵐士と岡崎虎衛門の両名との決闘は旅人が紺田村から城下町へ向かう丁度その時に起こったのだ。 pic.twitter.com/BtQl8mu9Qx

2023-06-20 21:52:20
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岩蔵流、この剣術は初代当主岩蔵道胤の長年の心身と技の鍛錬から生まれた。以来この流派では技を継ぐ時、「胤」の名も当主が継ぎ伝えてきた。 その技とは、すなわち岩蔵流秘剣「天狗抄」である。天高く舞い上がり翼を翻し風を切るが如く飛ぶ天狗を切り落とす。神速の剣である。

2023-06-20 21:53:18
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歴代の「胤」を持つ者、当主達には神の目を持つものが現れたことはなかった。この秘剣はただひたすらに磨き上げた、研ぎ澄まされた剣の冴えによって繰り出されるものである。 初代道胤が「天狗抄」の技を完成させた時、その威力はあまりにも大きかった。

2023-06-20 21:53:38
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何か妖魔の類いと戦っていたのか、はたまた誰も居ない静かな場所で修行をしていたのか、秘剣が完成したのは詣でる者の居なくなったうらぶれた社の中であった。 だが、秘剣が繰り出された瞬間に社は木っ端の如く壊し尽くされ、道胤が持つ刀も真っ二つに折れてしまったのだ。

2023-06-20 21:53:54
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この後に道胤は岩蔵流を名乗り、九条家の剣術指南役となったのだ。そして、その当時の天目の刀匠に依頼して作られたのが名刀「薄縁満光天目」である。岩蔵流の当主は「胤」と共にこの剣も受け継いだ。 さて、この名刀には銘を彫られずにあった片割れがあったのだ。このお話は次回お楽しみに。

2023-06-20 21:54:10
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刀鍛冶が依頼を受けて刀を鍛える時、鍛冶師はその時の全力で最高の一振を出せるようにする。 刀という物の性格上、仕上がった刀が何処へ行くのか。神社への奉納であったり、殿様への献上品であったり、剣の道を往く者つまり命のやり取りをする者の手に渡るのだ。

2023-06-21 21:31:31
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己の作った物に神への敬虔の念も、権力の威光も剣の道を往く者の命もかかってくるとは刀鍛冶とは全くもって手の抜けぬものである。 故に、最高の一振の為に依頼に対して刀は複数打たれ、一番出来の良い物に銘を刻み、真打ちとする。これが依頼人の手に渡る刀である。

2023-06-21 21:31:42
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対して、真打ちに選ばれなかった刀は銘が入れられる事無く、通常は鍛冶師の手元に残る。これを影打ちと言った。 薄縁満光天目が作られて、岩蔵道胤はこの影打ちの方も所持していた様だ。道胤は晩年九条家の御指南役を退き紺田村へ隠居したが、世話になった礼として柴門家の者へ下されている。

2023-06-21 21:32:10
次回お楽しみに @cha_boshi

この影打ちが数奇な運命を経て今は旅人の手にある。岩蔵流の流れを汲む者達と尽く出会わせられたのは最早偶然ではないだろう。 名も無き剣が時を同じくして生まれた剣を呼ぶが如く門下生、またある時は師範代と仕合い、旅人は岩蔵流の門派その尽くを下してきた。

2023-06-21 21:32:34
次回お楽しみに @cha_boshi

その先に有るのが岩蔵流師範との決闘だったとしてもそれは運命である。だがこの岩蔵流継承者、「胤」を持つこの男も哀しき運命の下にあるものだったのだ。このお話の続きは、また次回のお楽しみに!

2023-06-21 21:32:53
次回お楽しみに @cha_boshi

処は神無塚、抵抗軍と事を構える九条政仁率いる幕府軍の大本営での事である。 旅人は出会ってしまった。 その男は小高い岩場の上から陣営を見下ろしていた。名を岩蔵光造と名乗った。世が世であれば光胤の名を継いだ九条家剣術指南の男である。

2023-06-22 22:13:22
次回お楽しみに @cha_boshi

「目狩り令に際し、神の目を将軍様へお返ししたが、門人の中には納得出来ぬ者が出てしまい破門する事に相成った。道場も閉め軍属の身の上である。 しかし今や秘剣の心得すら忘れた身なれど、我が流派が落ちぶれたとは言え門人が師を持たぬ我流の者に下されたとあっては看過出来ぬ。」

2023-06-22 22:14:29
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「不器用ながら師として門下生の仇を討つ情は残しているつもりだ。お主の腕の程、存分に見せて貰うとしよう。 ここは狭い。着いて参れ。」 旅人は言うや背を向けて歩く男を追いかけながら、さてどうしたものかと思案した。

2023-06-22 22:15:22
次回お楽しみに @cha_boshi

恐らくだが、将軍様の忠臣である九条家の家臣、剣術指南役の門派から破門弟子が出たつまり、幕府への造反者を出してしまった事で責任を負う形でこの男は道場を閉める事になったのでは無かろうか。 しかも、師範にも関わらず秘剣の心得を忘れたと言った。

2023-06-22 22:15:43
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きっと神の目を失った影響が出ているのだろう。以前も神の目を失い、願いを見失ってしまった者を見てきた。この男はその有様を自虐の様に自らをものにならぬ人と言いながらも、指南役が務まるのだから実力も相当な者だ。油断は出来ない。かつて戦った者達は…

2023-06-22 22:17:29
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仕合いに名を付ける男、兄の名を呼び絶命した男、刀に吸わす血を求める男、幕府の追ってから逃れようとする男、門下生、師範代…旅人が下してきた者達とは成り行きであった。そして、旅人の剣は生き残る為の剣である。時に元素、時に卑怯な手段も使う。だが、この男と仕合うには剣のみが相応しい。

2023-06-22 22:17:56
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「いざ、参る!」 岩蔵光造が構えた刃に旅人が映る。仕合うふたりの他に野原に居るものはなし。生温く何処か雷を含んだようなピリピリとした風が吹き抜けていった。 この決闘の続きはそれはそれは次回のお楽しみに。

2023-06-22 22:18:34
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「刮目せよ!」 岩蔵光造が自然体に立つ。相手はまだ剣を抜いていない。旅人はこの男が達人であることの確信を深めた。 抜刀の術というのは構えがない。これがもし剣を抜き上段にでも構えていたら一目で初手は振り下ろして来ると相手に悟られてしまう。

2023-06-24 23:09:01
次回お楽しみに @cha_boshi

剣を抜き、構えると云うこの隙すらも無くしたのが抜刀術であるが、構えないことで狙いが分かりにくくなる効果もある。光造の研鑽はここに集約されていたのだろう。兜で視線が伺えない所も中々に読みにくい。 相手の実力に不足なし。 「いざ!」

2023-06-24 23:09:39
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光造が抜刀し迫る!これを旅人はすんでのところで躱し、すかさず一刀浴びせにかかる。 抜刀術の使い手に出会った時は、二撃目に注意した立ち回りが必要なのである。一撃目は斬りかかり相手を止めたり、相手の剣戟を弾くもの。返す刀で二撃目を放ち、命を刈り取りに来る。こちらが本命である。

2023-06-24 23:09:55
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二撃目を防ぐべく剣を振った旅人だが、光造の剣が速い!両者の剣は火花を散らしかち合った。そのまま拮抗し、剣を合わせる事一合、二合。原には打ち合うキンキンとした音が響く。 三合目で鍔迫り合いになり旅人は光造と睨み合い、力任せに弾いてから飛び退り距離を取った。

2023-06-24 23:10:52
次回お楽しみに @cha_boshi

恐るべき抜刀術を防いだが、未だ決着はつかず。油断は禁物だ。九条家剣術指南役はこれだけで手に出来る程安物では無い。そう旅人が考えたその時、岩蔵光造は構えた。 旅人はその構えにかつて初代道胤が古い社を壊したと云う逸話の鱗片を見た。この決闘の続きは次回をお楽しみに。

2023-06-24 23:11:14
次回お楽しみに @cha_boshi

これは我々破門された元門下生の仁義である。仇よ。旅人よ。お前のことは聞いている。流派の汚名は剣士の血でのみ雪がれるのだ。岩蔵流免許皆伝の腕を受けよ。 柳葉嵐士と岡崎虎衛門の両名との決闘は旅人が紺田村から城下町へ向かう道すがら唐突に訪れた。

2023-07-05 23:34:49
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今まさに、原に夕日が落ちて大地を赤く燃やさんとするその時の事であった。 旅人は余りに唐突だった為、初めは辻斬りかと思った。だが二人の男の双子剣は流派の看板を地に落とした仇を求めていたのだ。何とも身に覚えのある話である。

2023-07-05 23:34:58
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男達は目狩り令の際に将軍様へ神の目を返上する事を良しとせずに出奔し、道場は破門となった無頼者共である。だが、破門弟子と言えど免許皆伝まで所属した古巣を荒らされるのは良しとしない。これが彼らの情であり仁義である。 血の穢れは血によって清められる。これが彼らの仁義である。

2023-07-05 23:35:05