テイワットでの出会い

旅人がであった印象に残った人々や出来事について。時系列はバラバラです。
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次回お楽しみに @cha_boshi

風の国の教会。その裏手には豊かな水を湛える湖を眺む小さな墓地がある。 月が昇る頃、行けば夜風に乗って歌が聞こえてくる。 夕焼けよ もう少しだけ 傍にいて 墓前に童謡を歌い供える吟遊詩人は言う。昔に幼い娘を病気で亡くしてしまったと。あの頃の自分は仕事に夢中だった。

2023-06-04 22:25:28
次回お楽しみに @cha_boshi

隣国へ仕事へ行っている間に娘は亡くなって、最後まで会えなかった。 仕事から帰る度に歌って欲しいとせがまれて、こんな簡単な事なのにあの時はなぜ出来なかったのか。 彼の話から過去の後悔や哀しみを感じた。きっと、彼の歌う沈み行く太陽は娘の事なのだろう。

2023-06-04 22:25:57
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父さんはずっとそばにいるよ 優しく声を掛け、墓前で詩を歌う彼の顔は穏やかだ。 湖を渡る風にもこの国の神の加護が宿り、彼の心を癒しているのだろうか。そうだと良い。献身的とも言える彼の姿勢に旅人はそう思った。 彼の祈りを邪魔しない様に静かに下がり、詩に耳を傾ける。

2023-06-04 22:26:12
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日が暮れ、残照が尽き 夜の帳が下がり、寒い風が吹く 長い夜を怖がらないで 私はそばにいて、夜が明けるまで 私は風となり 暗い雲を吹き飛ばし 明るい月はその笑顔を照らしてくれる 夜が明けて教会の朝を告げる鐘が鳴る前に、彼はショーを終えた詩人の様に一礼して帰っていった。

2023-06-04 22:26:29
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楓葉荻花秋瑟瑟たり。 雄大なる大河と共に南へ旅し、広大な水辺の景色に目を楽しませる。望.舒.旅.館.で足を休め、帰.離.原.へ入れば商業の都、璃.月.港.まで後ひと山だ。 国の主要都市に各地から集まってくる人々を受け入れるというのは治安を維持する上で重要なこと。ここには関所が有る。

2023-06-05 22:04:33
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関所には若き兵士が二人槍を持って立っている。ここを通らねば港へは行けないのだ。石段を上がりながら、旅人はこんにちはと声をかける。 途中で出会った千岩兵士も気の良い人であったから、またここでも面白い事が聞けると思ったのだ。思った通り彼等は親切にも返事を返してくれた。

2023-06-05 22:06:06
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こんにちは旅人、どうしたかな? 左側に立つ兵士が尋ねてくれるが、しかし怒った顔をしていた。そして右側の兵士が同じ言葉を繰り返す。 おや?と旅人が思う間にも旅人を挟んだ左と右で、真似するな、真似するなと応酬がある。何がどうなっているのか。

2023-06-05 22:07:41
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左側の彼が言う事には、彼がエ.コ.ウと呼ぶ右の男は始めどもりだったようだ。数年前にア.リ.スと名乗る旅人から薬を渡され飲んでみたところどもりは見事治った。しかし、スラスラと紡ぐ言葉は全て誰かのオウム返しになってしまったとの事だ。

2023-06-05 22:10:31
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なんなの?そう旅人が尋ねれば、 なんなの?と、エ.コ.ウが返す。 その顔を見つめてみても何を考えているのか分からない。 ふと、彼の本名はエ.コ.ウではないのではないだろうかと考えがよぎる。オウム返しに話す嫌われ者故に、自分の名前を名乗れないまま山びこと呼ばれてしまった。そうだとしたら…

2023-06-05 22:13:46
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エ.コ.ウの意思が消えてしまったのかどうかまで考えて旅人はぞっとしてしまった。そして堪らず足早に通り過ぎてしまう事にした。 …さようなら。 そう言って背を向けた後ろから返事が返る。…さようなら、と。

2023-06-05 22:16:31
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風の囁きは聴こえる? しーっ…今バ.ル.バ.ト.ス様の神意を感じてるの。 そう話す彼女はとても勤勉で敬虔なモ.ン.ド人だ。もしかしたらモ.ン.ド一かもしれない。彼女の一族は風の国で風車を管理する職務に代々就いてきた。 pic.twitter.com/605Ffjo2Mq

2023-06-06 21:18:29
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晴れた陽射しの中で彼女はいつも風車を見上げている。管理を全うする事に苦痛は無い。寧ろ楽しいとまで語る姿は眩しく輝いている。 城内で暮らす全ての人々が使う水はこの風車が引いた水だ。水無くして人は生きられない。目立つ事は無いが城内でも最重要職のひとつと言えるだろう。

2023-06-06 21:19:08
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彼女の一族がモ.ン.ド城の人々の生活を支えてきた。しかし、彼女は驕る事はない。きっとはるか昔の先祖の代からずっとそうしてきたのだろう。 しー…風の囁きは聴こえる? そう言う彼女の顔はさながら教会のシスターのようだ。

2023-06-06 21:19:59
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悩みがあったら風に向いてバルバトス様に聞いてもらうといい。でも、助けを期待するだけでは返答はもらえないよ。自分の悩みは自分しか解決できない、そうだろう? 彼女は何処まで行っても真面目なのだ。だから今も風車に生えたマッシュルームを採った後どうするかをすぐに解決してしまった。

2023-06-06 21:20:52
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怪しげな奴が遺跡に出没するらしい。そう聞いたのはこの国に滞在するようになってしばらく経った頃であった。 旅人が調査に赴いた現地で、遺跡調査に来ているという学者の女と護衛の男から話を聞く事ができた。しかし、まるで収穫が無く早くも旅人は帰りたい気持ちになっていた。 pic.twitter.com/IbHlGJPx4L

2023-06-07 21:03:04
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だが、仕方がないでは無いか。学者は危険が排除できていないと云う理由で護衛から遺跡内への立ち居入り調査を禁止されている。彼女も新しい事は調べられない。そしてダサい服を着たくないから登録してないと宣うロマン派の未登録冒険者の護衛は危険だとしか言わず、話す合間に学者を口説く。

2023-06-07 21:03:47
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自分の服装を棚に上げモグリめ、と旅人は心の中で毒づいた。何も分からないままではないかと思いながらコロッセオの様なすり鉢状の遺跡の底をひょいと覗きこむ。 ──!! 急に意識が切り替わる感覚を憶えて一歩下がる。すると先程まで立っていた遺跡の縁にドドーンと衝撃が有り目の前で砲撃が弾けた。

2023-06-07 21:04:16
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あ、無理。 旅人は心の中でそう呟いて。さっさとケツを捲る事にした。チキンと罵るなかれ、三十六計逃げるに如かず。彼我の戦力差を冷静に判断して体勢を立て直す為に撤退を選択したのだと言って頂こう。 旅人は話の通じそうもない彼奴との再戦を誓った。この話は続くのかもしれない。

2023-06-07 21:05:31
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瑶.光.の浜から明.蘊.町へ向かう依頼の最中、集中しているはずの旅人の首はくるりと右へ向いてしまう。それからようやく認識して、あれは誰がいるんだろうとなる。余所見をするつもりは無かったのにどうしてかその存在に目が吸い寄せられる。不思議な事だ。 pic.twitter.com/MhcAoOO2LE

2023-06-08 21:15:10
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実は旅人は未だにこのうずくまる男の名前を知らない。名乗らないから何処の誰かも分からない。しかも話してみても掴みどころが無い。 前にここに住んでいた鉱夫だと言うが、村人はもう居ないと言う言い方が元の住人の様に感じられないし、服装も鉱夫には見えない。荷物の分け前をくれと言う。

2023-06-08 21:15:43
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人目を避けている様盗っ人にも見えるが、そもそもこの男は皆にも見える存在なのだろうか? 男が傍にいる時に魔物に襲われるのは旅人だけで、男は見向きもされない。男も動じることなく何かの探し物を止める事が無かった。怪異か、それとも妖怪の類なのだろうか。世界は謎だらけだ。

2023-06-08 21:16:20
次回お楽しみに @cha_boshi

今でもあの日は楽しかったなと懐かしむ事がある。 彼女と初めて出掛けた日の事を、彼女は「面倒な仕事で人生を無駄にするため、初めて可愛い子ちゃんとお出かけした記念日」と言ってくれて、事のほか喜んでくれたのを覚えている。 pic.twitter.com/8pBXQuEU4X

2023-06-09 21:03:03
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旅人も顔には出さなかったが、お姉さんとのお出かけに結構浮かれていた。 だからか、最初の記念すべき記念品をよく分からない気分の盛り上がりのままに選んでしまった。旅人が彼女にプレゼントしたのは、なんと!かぼちゃパンツだった。

2023-06-09 21:04:02
次回お楽しみに @cha_boshi

こういうのがあなたの趣味なのかしら?そう言って、胡乱な目で旅人を見てきたのに最終的には、でも、あなたからのプレゼントならパジャマとして使ってもいいかも。と許してくれた。 今となっては少々恥ずかしくもある思い出である。 これからもよろしく。 お誕生日おめでとう。

2023-06-09 21:05:13

↓岩蔵武芸帳