- tiltintninontun
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もう一つ、社会のムードとしても、文学などをなりわいとするのはヤクザなことであり、真面目な人間が手に染めることではない、という風潮がありました。
2023-06-11 06:17:25それが戦後になり、少しは自由になったかな、と思っていると、今度はそれまで弾圧されていた左翼陣営の方から、同じような規制、すなわち小説を道徳律で律するべきだ、という考え方が出されました。
2023-06-11 06:17:42一九四七年頃、ある文学雑誌に、もう亡くなられた豊島与志雄さんと、左翼の文芸理論家である除村吉太郎さんの対談が載っていました。その中で除村さんは、文学などというものは全て、政治的アジテーションと政治的パンフレットを書くためにのみ存在を許される、と述べたのです。
2023-06-11 06:17:56豊島さんはびっくりして、革命が成功し、コミュニズムのいう理想の社会が来たら、そのときでもなお政治的パンフレットでなければならないのか、つまり、不正を暴露し、矛盾を発見し、大衆を一つの政治行動に立ち上がらせるためにのみ文学は存在を許されるものなのか、
2023-06-11 06:18:08理想社会が実現したあとでも文学とはそんなものなんですか、と尋ねた。そうしたら除村さんは、そのときは、まあ、そのとき考えると答えていました。ーー私はこの対談を読んで、身体が震えだすほどのショックを受けたのを覚えています。 小松左京「小松左京のSFセミナー」集英社文庫昭和57年。
2023-06-11 06:29:11ちなみにこの小松左京の記憶は1947年とのこと、後にクラシックオーケストラ指揮者岩城宏之が書いた「森のうた」で、ソヴィエト共産党が提唱したらしい「社会主義リアリズム」という言葉が書かれていて、これがどういうことかが解らなかった、
2023-06-11 06:18:25なので大学のソヴィエト文化の教授にどういう意味かを聞いたら、「社会主義が達成されると、こんな素晴らしい社会になる、そういうことを書け、という意味でいいかな」と教えてもらえました。
2023-06-11 06:18:33